『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
下呂駅を発車した特急「ひだ」は、温泉街を車窓右に見ながら益田川を渡る。山間にわずかに開けた盆地を進むと、ほどなくして車窓右に禅昌寺の伽藍が望める。禅昌寺駅、飛騨萩原駅、上呂駅と過ぎれば、再び谷が狭くなり、上り勾配もきつくなる。飛騨宮田駅を通過して、車窓右に杉や檜の貯木場が見えてくると、飛騨小坂駅。林業の町・下呂市小坂町の玄関口だが、霊峰・御嶽山の飛騨側登山口や秘湯・濁河温泉、巌立峡などへの下車駅でもある。飛騨萩原駅やこの先の久々野駅とともに、この駅にも一部の特急「ひだ」が停車する。
車窓から望む山や谷がますます深くなると、益田川の流れも車窓右、左と頻繁に変わる。渚駅、久々野駅と20パーミルの勾配が連続する。久々野駅の先にある、宮峠を抜ける宮トンネルが高山本線の分水嶺。川の流れも、ここを境に変わる。先ほどまでの益田川は、木曽川に合流して伊勢湾に注ぐが、ここからは宮川が車窓の友。宮川は北流して神通川になり、富山湾に注ぐ。列車は宮トンネルを抜けると、宮の町並みを一望しながら大きく右にカーブして築堤を駆け下りる。車窓右に見える木立が飛騨一ノ宮、水無神社だ。飛騨一ノ宮駅を通過し、心地よいエンジン音を響かせて高山盆地を走れば、列車は飛騨高山の玄関口・高山駅に到着する。
高山駅を発車して、上枝駅、飛騨国府駅と宮川沿いにわずかに開けた水田地帯を進めば、列車はやがて、飛騨古川駅に到着する。
飛騨路の峡谷を貫いて進む特急「ひだ」。先頭車のキロ85形は絶好の展望席だ。飛騨小坂駅~渚駅
貯木場を車窓に見て飛騨小坂駅に進入する特急「ひだ」
紅葉に染まる渓谷を走る普通列車。写真の車両は、JR東海のキハ48形。飛騨小坂駅~渚駅
雪に覆われた飛騨路の車窓の旅。季節を変えて何度も乗ってみたい路線だ。
上呂駅~飛騨宮田駅
東海道本線岐阜駅と北陸本線富山駅を結ぶ、営業キロ225.8kmの単線・非電化の路線。高山線として、大正9年(1920)11月に岐阜駅~各務ケ原駅間が開業。翌10年11月には美濃太田駅、昭和5年(1930)11月には下呂駅まで達した。一方、富山駅側からは飛越線として、昭和2年9月に富山駅~越中八尾駅間が開業。昭和9年10月の飛騨小坂駅~坂上駅間の開業によって全通した。
特急「ひだ」で活躍するキハ85系ディーゼルカー。上呂駅~飛騨宮田駅
昭和33年3月、高山本線初の優等列車となる準急「ひだ」が運転を開始。昭和43年10月には、キハ80系による特急「ひだ」が運転を開始し、平成元年2月には新型気動車キハ85系が投入され、現在に至っている。なお、高山本線は岐阜駅~猪谷駅間がJR東海、猪谷駅~富山駅間がJR西日本のエリアになっており、富山駅発着で運転されている3往復の特急「ひだ」を除き、運転系統が猪谷駅で二分されている。今回の車窓の旅では、特急「ひだ」に乗っての岐阜駅~飛騨古川駅間を紹介した。
掲載されているデータは平成20年10月現在のものです。詳しい運転時刻については「JR時刻表」をご確認ください。
次回は、オホーツクを目指す雪見列車の旅「石北本線」です。