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各方面に向かう列車が頻繁に発車する岡山駅。2番線ホームで新幹線「のぞみ」からの乗継ぎ客を待っているのは、出雲市駅行きの特急「やくも」。伯備線の車窓の旅も、この列車に乗って進めていきたい。
岡山駅を発車した特急「やくも」は、まずは山陽本線のレールを走り、倉敷駅までの約16kmを、わずか11分で駆け抜ける。倉敷駅からは伯備線に入り、吉備(きび)路の玄関口・総社駅を過ぎてまもなく車窓左には、雪舟ゆかりの井山宝福寺(いやまほうふくじ)。秋葉山トンネルを抜けて豪渓駅を通過すると、車窓左に高梁(たかはし)川が近づいてくる。この高梁川は、国道180号とともに、新見駅まで車窓の友となる。
美袋駅、備中広瀬駅と高梁川を眺めながら走り、やがて前方に山城の備中松山城が見えると備中高梁駅に到着する。備中高梁駅を発車し、紺屋(こうや)川を渡ると車窓右に「石火矢(いしびや)町ふるさと村」の武家屋敷も見える。備中川面駅、方谷駅と進むと左右の山が迫り、高梁川も屈曲が激しくなる。井倉駅の手前では、車窓の右に井倉峡。秋が深まる頃には、石灰岩の絶壁とカエデの紅葉が、絶妙のコントラストで旅人を迎えてくれるはずだ。石蟹駅を通過し、高梁川沿いに水田が開け、車窓右に姫新(きしん)線が合流すれば、新見駅に到着する。
新見駅を発車した列車は、苦ヶ坂トンネルを抜けて布原駅を通過。SL時代には、D51三重連でファンの耳目を集めた地だ。備中神代駅で芸備(げいび)線が分かれ、西川に沿って急勾配、急カーブが連続する区間を進む。新郷駅を通過して岡山・鳥取県境の谷田峠トンネルを越えれば、生山駅まで一気に下っていく。上菅駅、黒坂駅、根雨駅と、日野川に沿って走り、伯耆溝口駅付近まで進めば、車窓右に雄大な大山の姿が見え隠れするようになる。岸本駅を通過するあたりから、米子平野の水田地帯となり、左に急カーブして山陰本線に合流。伯耆大山駅を通過すれば、米子駅は指呼の間だ。
山々が色づき始めるなか、高梁川の流れとともに快走する特急「やくも」。方谷駅~井倉駅
昭和57年の登場以来、「やくも」で活躍する381系電車。これまで、さまざまなリニューアルが施され、外観・内装とも大きく変わっている。写真は普通車だけの短い3両編成の「やくも」で、現在は4両編成が最短。
車窓からも望める備中松山城。標高430mの臥牛山(がぎゅうさん)山上に建つ天守は、国の重要文化財で、現在、天守を持つ城としてはもっとも高い所にある
平成19年4月から全面リニューアルした「ゆったりやくも」(愛称)。出雲市から岡山駅間を、普通車・グリーン車ともにゆったりした新しいシートを装備し快適に走る
新見駅
山陽本線の倉敷駅と山陰本線の伯耆大山駅を結ぶ、営業キロ138.4kmの電化路線。倉敷駅~備中高梁駅・井倉駅~石蟹駅間が複線で、あとは単線。大正8年(1919)8月に伯耆大山駅~伯耆溝口駅間が開業してから徐々に開通区間を増やし、昭和3年(1928)10月、最後に残った備中川面駅~足立駅間が開業して全通した。電化は昭和57年7月。
現在は、特急「やくも」一日15往復に加え、東京駅と出雲市駅を結ぶ寝台特急「サンライズ出雲」が運転されている。普通列車は、岡山駅方面から山陽本線を経由して備中高梁駅または新見駅まで直通する列車と、米子駅方面から山陰本線を経由して生山駅または新見駅まで直通する列車に二分される。全線を走破する普通列車は、上下合わせて計4本しかない。213系または115系電車の2~7両編成が中心だが、キハ121形気動車で運転される列車が米子~生山間に2往復ある。本書でも、実際の運転系統に合わせ、岡山駅~米子駅間の車窓の旅を紹介した。
座り心地の良いシートと、次々にリニューアルする車両で人気の「ゆったりやくも」編成。とくにパノラマグリーン車のパノラマ展望は壮大。
※掲載されているデータは平成22年2月現在のものです。詳しい運転時刻については『JR時刻表』をご確認ください。
次回は、「牟岐線」(予定)です。