『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
熊野古道中辺路のハイライトは、見晴台下付近に石畳の道が残る発心門王子〜本宮大社だが、昔の古道の雰囲気を醸す「とがの木茶屋」(写真)など、継桜王子(つぎざくらおうじ)付近もおすすめだ。
熊野古道と熊野三山、温泉と南紀の魅力がぎっしり詰まった旅へ。始まりは中辺路(なかへち)への起点となるJR紀勢本線の紀伊田辺駅から。駅からすぐの湊地区・中屋敷町は木造民家や昭和風情の商店街が残り、散策が楽しい。
町歩きの後は龍神バスや明光バスで熊野三山のひとつ、熊野本宮大社方面へ。本宮を過ぎた後のバス停「発心門王子(ほっしんもんおうじ)」などで降りれば、杉やヒノキが背を伸ばし、ときに石畳に影を落とす古道歩きを満喫できる。発心門王子から本宮までは、比較的平坦なので歩きやすい道なのだ。
本宮へ到着し、老杉に包まれた石段を上ると、屋根の曲線が美しい熊野権現造りの社殿が参拝者を出迎えてくれる。いにしえの熊野詣は、三社のうち、まずこの本宮大社を参拝したという。本宮大社を辞したら、同神社の旧社地である大斎原(おおゆのはら)へ向かおう。日本一の高さを誇る約34mの大鳥居には圧倒されるばかり。そこから1.5kmほど西には、日本最古の湯とされる湯の峰温泉が。つぼ湯は同温泉のシンボルで、天然岩をくりぬいた湯船は世界遺産にも登録されている。本宮温泉郷には湯の峰温泉ほか、12月には川沿いに登場する広大な仙人風呂が有名な川湯温泉、アウトドア施設が充実の渡瀬(わたぜ)温泉の三湯が揃う。お気入りの湯で、古道散策の汗を流して。
ちなみに、わかやまDC期間は高野山の「奥の院前」と熊野の「本宮大社前」「発心門王子」のバス停を結ぶ「高野・熊野アクセスバス」が土・日曜・祝日を中心に運転。世界遺産をはしごしたい人は利用すべし!
新宮市熊野川町から熊野速玉大社付近の権現川原までを結ぶ熊野川川舟センターの舟下り。約90分の舟旅で「川の古道」と言われた雰囲気を堪能したい。要予約。日足のバス停からは送迎あり。乗船料3900円。
翌日は、三重との県境に接する新宮市に鎮座する熊野速玉(はやたま)大社が最初の目的地。本宮温泉郷からバスが便利だが、そこに風情をプラスしたいのなら熊野交通バス川丈線の日足(ひたり)で下車し、そこから熊野川を舟下りと洒落こむのもいい。
三山のひとつ、速玉大社は本宮大社の雰囲気とはまた違い、鮮やかな朱塗りの社殿が秋の青空にカーンと映える。境内には神宝館やご神木であるナギの大樹がそびえ、ナギは波風立たない「凪」に通じることから、その葉が家内安全のお守りとされている。
速玉大社から20分ほど歩き、新宮駅でJR紀勢本線に乗車。那智勝浦駅で下車したら、バスと徒歩で熊野三山の熊野那智大社へ向かう。バス停は那智山が一番近いけれど、おすすめなのが大門坂駐車場前で降りて、古道を歩いてからの参拝コース。杉木立ちの中の石畳の道と、473段の石段を上った先には、那智大社境内からの絶景がお待ちかね!
熊野三山で最も熊野権現造りの様式を残す朱塗りの社殿を参拝したら、一段の滝としては日本最大の落差133mを誇る那智の滝へ。途中、那智山青岸渡寺境内から望む三重の塔と巨瀑の競演もお見逃しくなく。
夕方には那智勝浦駅方面に戻り、勝浦温泉で一泊。源泉数150を越えるという同温泉は宿も多く、泊まり先の選択肢も広い。
朝7時から行なわれる勝浦漁港のセリ。第1売場見学デッキや第2売場見学フロアからであれば自由に見学できる。土曜・祝日の前日、水揚げのない日などは休みなのでご注意を。
朝、早起きしてでも見学したいのが勝浦漁協魚市場のセリ風景だ。勝浦漁港は「はえ縄漁法」で漁獲する生マグロの水揚げ量が日本トップランク。12〜5月の本マグロをはじめメバチやキハダといったマグロの巨体が、だだっ広い市場に遠くまでずらーっと並ぶさまは壮観! もっとセリ市を楽しみたい人は、前日17時までに宿泊先のフロントに予約し、勝浦漁協のスタッフによる案内を聞きながら回りたい。
朝食後は、イルカと遊べる日本初の施設「ドルフィン・ベェイス」へGO! 一緒に泳ぎいでくれたり、胸ビレやお腹を触らしてくれるイルカのかわいさは、目尻が下がるほど胸キュン! 記念撮影でキスしたら、完全にイルカに恋してしまう。
その後、JR紀勢本線串本駅までの移動は、こちらも胸がキュンとなるかわいさの快速「ハローキティ 和歌山号」で。串本駅からバスでおよそ17分の潮岬観光タワーでは、展望台から太平洋と緩やかに弧を描く水平線を一望できる。絶景を堪能後、串本沖での養殖に成功したと話題の近大マグロを日本で唯一味わえる併設レストランへ。贅沢な赤身の味わいは、この旅のシメにふさわしい旨さなのだ。
潮岬観光タワーから太平洋を一望できるレストランでは、写真の近大本まぐろ丼(1600円)や、串本マグロしゃぶしゃぶ御膳(2800円)、くじら焼肉丼(1550円)などご当地の味がずらり。無休。
わかやまDCの目玉イベントのひとつが、快速「ハローキティ 和歌山号」だ。車両の内外にはJR紀勢本線の名所を紹介するハローキティのイラストがたっぷりと。海側の窓を向いた2人掛けのベンチシートは、美しい海岸線を望む特等席だ。そんな素晴らしい自然環境に負荷をかけない、自己充電型バッテリーで走行するというのも見逃せない。
「ハローキティ 和歌山号」で串本駅を降りたら、橋杭岩(はしぐいいわ)の観賞がおすすめ。本州から沖合の大島まで連なる大小約40の岩柱が青い海辺に、雄々しく立ち並ぶ。
※快速「ハローキティ 和歌山号」にはキティちゃんは乗車していません。
↑12月14日までの土・日曜・祝日に1日2往復運転する快速「ハローキティ 和歌山号」。2両編成の全車指定席。乗車券のほか、別途座席指定券が必要。
→約850mに渡って連なる奇岩群は橋桁を渡せば橋になりそうだ。
田辺の町の散策で小腹がすいたら、なんば焼とごぼう巻を。田辺の名産である蒲鉾・なんば焼は、プリプリとした焼き蒲鉾の食感が魅力。軟らかく茹でたゴボウを魚のすり身でまとめ、エソやグチの魚皮を手作業で巻き付けたごぼう巻は、ゴボウの土の風味と香ばしさ、甘辛いタレの三重奏がやみつきに!
そして新宮や那智勝浦で必ず味わいたいのが、サンマ寿司。頭をつけたままサンマを開き、ダイダイ酢でしめ、酢飯を抱かせた姿寿司は、新宮市出身の作家・佐藤春夫が「ふるさとで一番美味しい物は一にめはり、二にさんま」と謳ったほど絶品。
プリプリ食感が舌を喜ばせるなんば焼(手前)と、最後に各店秘伝のタレにつけ込まれて完成するごぼう巻(奥)。
秋から冬、熊野灘に南下したサンマは脂肪が抜けてさっぱりとした味になり、サンマ寿司としてより旨くなるという。
大斎原に建つ高さ34m、幅42mを誇る大鳥居がライトアップ。普段は年末のみだが、わかやまDC期間は特別に毎週金・土曜や3連休中の日曜に行なわれる。
日没から21時までライトアップ。暗闇の中に巨大な鳥居が青く浮かび上がるさまは幻想的だ。
●本宮温泉郷
バス(熊野川川舟センターから「舟下り」での移動も楽しい)
●熊野速玉大社
バス
●新宮駅
JR紀勢本線
●紀伊勝浦駅
バス
●熊野那智大社、那智の滝
バス
●紀伊勝浦駅
勝浦温泉で一泊
文・構成=鈴木健太
写真協力=JR西日本、和歌山県
※掲載されているデータは2014年11月現在のものです。