『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
明治25年(1892)創業の小さな宿「栖原(すはら)温泉」は、自家源泉の温泉と地元の幸ふんだんの料理が自慢。地元産柑橘の三宝柑を使った茶碗蒸しや、天然本クエづくしコースでご当地の恵みを堪能あれ。
寒さ深まる季節でも、比較的日差し穏やかな紀中と白浜温泉をめぐる旅、最初に降り立つ紀伊宮原(きいみやはら)駅では、その温暖な陽光で育った有田(ありだ)みかんを味わいたい。約400年の歴史を誇る有田みかんは、紀州藩の委託を受けた伊藤孫右衛門(まごえもん)が栽培を始めたのが、そもそものルーツ。旬を迎えた甘~いみかんを、ともに駅から徒歩10分の早和果樹園や伊藤農園で買ってそのまま楽しむもよし、加工品をみやげに買うもまたよしなのだ。
JR紀勢本線で2駅南下し湯浅駅で下車したら、旧市街地の北西にある重要伝統的建造物群保存地区をお散歩。16世紀末頃に開発されたという醤油醸造が最も盛んだったこの一帯は、今も醸造業に関する町家や土蔵など古い建物が残り、ぶらり歩きが楽しい。
北町通りの北側にある角長(かどちょう)本店で醤油を購入し、職人蔵や醤油資料館で醤油造りを学んだら、湯浅駅からタクシーでおよそ8分の「栖原温泉」に向かおう(要予約で送迎あり)。全5室の小さな隠れ家のような宿は、美肌効果を期待できるメタケイ酸豊富な湯。さらに、この時期一番のお目当てはクエ料理。旬の冬、脂の乗ったプリプリの白身は、熱燗とご一緒に。
約170年の歴史を誇る醤油屋「角長」(写真)などの白漆喰と黒板壁に加え、出格子や虫籠(むしこ)窓など懐かしい町並みが続く、湯浅の重要伝統的建造物群保存地区。
万葉の昔から語り継がれる「湯崎七湯」で唯一現存する「崎の湯」は、太平洋を見渡す露天風呂が名物(入浴料420円)。白浜温泉には海を眺めながら楽しめる外湯や足湯が多数ある。
旅の2日目はJR紀勢本線でさらに南下し、道成寺(どうじょうじ)駅で降車。駅名にもなっている道成寺は、大宝元年(701)創建とされ、県内最古のお寺。和歌山DC期間に合わせ、今年は本堂の秋の無料公開を12月13日まで延長しているので、ぜひこの機会に拝観したい。また、宝仏殿では国宝の千手観音菩薩像などを展示するほか、縁起堂では日本で唯一絵巻の写本を使う「絵とき説法」を拝聴できる(宝仏殿・縁起堂拝観、絵とき説法は計600円)。
次に南部(みなべ)駅から徒歩20分ほどの「紀州梅干館」で、マイ梅干し作りに挑戦! 約40分で昔ながらの酸っぱい味から甘めの味わいまで、自分好みの梅干しが作れるうえ、300gの南高梅を持ち帰りできるのだ。
同駅から徒歩約10分の「ほんまもんふるさと産地直売所」で地元野菜などを購入したら、駅からタクシーで約10分の千里の浜へ。ここは、熊野古道内で唯一浜を歩く場所。白砂青松の浜には、いにしえの熊野詣の人々が感じた潮風が、今も吹いている。
今宵の宿は、紀南まで下り、日本三古湯の白浜温泉で。歴代天皇や紀州藩主も愛した温泉地には、大型ホテルから老舗旅館、民宿までが建ち並び、予算に合わせてチョイス可能。外湯や足湯も点在するので、湯めぐりを存分に満喫したい。
5頭のパンダが暮らす「アドベンチャーワールド」。ほかにもペンギン王国のあるマリンワールド、大観覧車など20種以上の乗り物が揃うプレイゾーンがあり、1日では遊びきれないほど施設が充実。
旅の最終日となる3日目、午前中は白浜の外湯めぐりを楽しむか、「アドベンチャーワールド」で動物たちとふれあうか、頭を悩ますところ。約80万㎡の敷地に動物園や水族館、遊園地などが広がる「アドベンチャーワールド」で随一の人気を誇るのが、同園で暮らす5頭のパンダ! 3頭の兄妹が暮らす「パンダラブ」などで、彼らの愛らしい仕草にずっと釘付け……となりたいところだが、園内にはゾウやラクダへの餌やり体験や、汽車風のバス「ケニア号」でめぐるサファリワールド、イルカとクジラのショーが見もののマリンライブなど、見どころ満載なので、スケジュールをきちんと立てておこう。
ランチは、白浜町内にある「フィッシャーマンズワーフ白浜」か「とれとれ市場南紀白浜」がおすすめ。前者はイタリアンや和食などで近海の幸を味わえる4つの食事処に加え、1階市場で買った新鮮魚介をすぐに味わえる屋上BBQガーデンも用意! 堅田漁協直営の後者はマグロコーナーや塩干コーナーなどで、近海の様々な魚介を販売。食事は「とれとれ横丁」で寿司や丼ものを楽しんで。
まだまだ紀州に後ろ髪を引かれる方は、南部駅まで戻り、「鶴の湯温泉」で旅の仕上げの湯を。黄褐色のかけ流し湯と露天から望む山谷の風景は、シメを飾るにふさわしい贅沢さだ。
江戸時代から湯治場として近郷の人々に愛されてきた「鶴の湯温泉」は、南部駅からタクシーで約20分。和歌山では珍しい黄褐色の湯を贅沢にかけ流し。日帰り入浴600円。
わかやまDC特別企画の「和みわかやま まるごとスタンプラリー」が2015年2月1日まで開催中! 県内主要駅や高速道路SA、スタンプ設置施設などで台紙をGETし、主要な鉄道駅、道の駅、観光施設など県内約300カ所のスタンプ設置場所でスタンプを集めよう。スタンプの数に応じ、現金10万円や和歌山県産品などの豪華賞品が計100名に! クイズに正解すれば計100名に「わかぱんグッズ」も当たる。
醤油のほかに、湯浅でおすすめのおみやげが金山寺味噌。湯浅での醸造の歴史が約750年を誇る金山寺味噌はご飯や酒のおともにぴったり! 垣内みそ店や丸新本家などで購入できる。
紀中にも参加施設が多数ある
「和みわかやま まるごとスタンプラリー」。
金山寺味噌は、醸造の際に出る上澄みなどの
液汁が湯浅醤油の起源とも。
温泉好きなら、南部駅で立ち寄りたいのが、みなべ温泉。計4軒の宿があり、「国民宿舎 紀州路みなべ」は日帰り入浴もOKだ。神経痛や筋肉痛、切り傷などに効くという湯を、広がる太平洋の大海原とともに堪能したい。
きのくに線(JR紀勢本線新宮~和歌山間)での移動中、注目したいのが和歌山DCとともに開催された「紀の国トレイナート2014」の作品群。メインイベント自体は10月に終了したが、20人ほどの作家が手掛けた壁画などは今も一部の駅に残り、列車旅の人々の目を和ませてくれる。気になる作品があったら、ぜひ途中下車してみて。
露天風呂も大浴場もオーシャンビューの
「国民宿舎 紀州路みなべ」。日帰り入浴600円。
「紀の国トレイナート2014」では、きのくに線新宮~南部間の20駅で作品を展開。写真は紀伊新庄駅の「駅舎伝言板プロジェクト 新庄」。
夕方まで白浜にいられる人にすすめたい寄り道スポットが、円月島(えんげつとう)。白浜北部にある臨海浦の南側に浮かぶ南北130m、東西35mの小島で、島の中央に円月型の穴(海蝕洞)が空いていることが名の由来となった。日によっては夕陽がちょうど穴の位置に沈むことも!
もうひとつおすすめの寄り道スポットは、白浜の沖合100mの位置にある「白浜海中展望塔コーラルプリンセス」(入場料800円)。長さ100mの海上歩道橋を渡り、螺旋階段を下りて水深8mに設けられた12の海中観察窓を覗けば、そこは目鼻先にチヌなど約30種の魚が泳ぐ天然の水族館だ。
白浜の冬季のサンセットの
時間帯は16:30頃。
白浜海中展望塔の上から望む360度のオーシャンビュー。
●栖原温泉
送迎バスなど
●湯浅駅
JR紀勢本線
●道成寺駅
和歌山県最古の寺・道成寺を拝観
JR紀勢本線
●南部駅
紀州梅干館で梅干し作り
ほんまもんふるさと産地直売所でおみやげ購入
JR紀勢本線
●白浜駅
タクシーなど
千里の浜で熊野古道唯一の砂浜歩き
タクシーなど
●白浜駅
白浜温泉で1泊
文・構成=鈴木健太
写真協力=JR西日本、和歌山県、栖原温泉、フィッシャーマンズワーフ白浜、ホテルシーモア
※掲載されているデータは2014年12月現在のものです。