鉄道カメラマンが観た『僕達急行』

「鉄<テツ>」を極めた最高峰(?)ともいえる、“鉄道カメラマン”という職業。
彼らが見た、映画『僕達急行 A列車で行こう』の魅力とは……。

おそらく最初の「鉄チャン映画」ではなかろうか

南 正時 MASATOKI MINAMI

写真

A列車な1枚

食パン電車
これが419系「食パン電車」。583系特急電車を普通電車に改造、北陸本線で使用されていたが2011年3月で引退した。(湯尾―今庄間で撮影)
※写真をクリックすると、大きい画像で見ることが出来ます。

 これまで鉄道をテーマにした映画といえば、鉄道員のドラマ仕立てによるものがほとんどだったが、この『僕達急行 A列車で行こう』は、いわゆる「鉄チャン」の側から見た映画。世は鉄道ブームといわれるが、私の知る限りおそらく最初の「鉄チャン映画」ではなかろうか。森田芳光監督も熱心な“鉄チャン”と聞くが、さすがに今風の「鉄道ファン」の心情を心憎いまでに描き、鉄チャン歴50年近い私もしてやったりと見終わって拍手をしたものである。

 それは登場人物の名前がすべて列車名にちなむもので「天城」「筑後」など、私の年代の「鉄」には懐かしい列車名の人物設定も、ほぼ同年代の森田監督の鉄道こだわりが感じられて嬉しくなる。さらに、笹野高史と、伊東ゆかりとの「小指の思い出」の初恋シーンは、今の若い「鉄」には判るまい。判る人だけが判る「大人の恋」である。

 映画の冒頭、相馬あずさ(貫地谷しほり)がバーで鯖江のめがね会社に出張した、と小町圭(松山ケンイチ)に話す場面で、小町がすかさず「食パン電車が走る」と反応する。マニア必見の数多い車両が登場する中で「食パン電車」をぜひ見てみたい気持ちになる。ということでこれが映画では登場しなかった「食パン電車」である。ジャーン!!

プロフィール

南 正時 MASATOKI MINAMI
1946年福井県武生市生まれ。鉄道写真家、旅エッセイスト。鉄道写真を撮り、旅を続けて40年以上。『JR全路線』『昭和の鉄道風景』『寅さんが愛した鉄道』など鉄道書のほかに、全国の名水を訪ねた『ご利益のある名水』など著書多数。ラジオ、テレビの旅番組、コメンテーターとして出演も多い。日本旅行記者クラブ会員。
オフィシャルサイト「南正時のRailways
『トレたび』のコンテンツでは、「鉄道写真家・南正時が案内する ローカル線de昭和レトロ旅」。

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