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非電化区間の急行列車で活躍した「キハ28・58系急行形気動車」北海道から九州までの幅広いエリアにおいて、幹線やローカル線の急行列車として活躍したキハ28・58系急行形気動車の足跡を紹介します。
(文=結解喜幸 写真=結解学)

What’s 急行形気動車?

 行き先の異なる愛称付きの3列車以上が併結して走る場合、併結区間では3列車以上の愛称を名乗る「多層建て列車」となります。かつては幹線からローカル線の目的地に向けて運転される気動車急行が多層建て列車の代表で、幹線区間では3列車以上の愛称を持つ長い編成の列車となりました。ローカル線の接続する途中駅では分割作業が行なわれたほか、新たな列車を併結して走るなど、今では考えられない運用が組まれていました。

 また、特急列車では行き先の異なる2列車が併結して走る場合、列車の愛称は同一(昭和36年10月に登場した大阪〜青森間の特急「白鳥」は、大阪〜直江津間で上野発着の列車を併結)となっていました。その後は急行列車の特急化が推進されるとともに、行き先の異なる列車が同じ愛称を名乗るのは誤乗につながる恐れがあったため、特急列車でも2つの愛称を名乗るようになりました。

 昭和51年7月1日、長崎・佐世保線の電化に合わせて博多〜長崎・佐世保間の気動車急行「出島」「弓張」(博多〜肥前山口間で併結)の一部列車が485系特急「かもめ」「みどり」となり、特急列車の2列車併結が実施されるようになりました。

 平成4年3月25日、長崎県佐世保市に新たにオープンしたテーマパーク「ハウステンボス」への旅客輸送のため、博多〜ハウステンボス間に特急「ハウステンボス」が登場しました。また、博多〜早岐(はいき)間では佐世保線の特急「みどり」と併結するダイヤとなり、さらに博多〜肥前山口間では特急「かもめ」も連結され、特急列車として初の3列車併結という多層建て列車になりました。現在も唯一の3列車併結の多層建て列車で、1〜5号車は「かもめ」、7〜10号車は「ハウステンボス」、11〜14号車は「みどり」の13両編成になっています。

特急「かもめ」を先頭に「ハウステンボス」や「みどり」を連結した13両編成の多層建て列車

2〜4両単位の列車を連結した多層建て列車として運転された東北本線のキハ58系気動車急行

鹿児島本線のエース特急として登場特急「有明」Limited-Express“ARIAKE

  昭和63年3月13日、JRグループで初となる新製特急用車両として登場したのが、ステンレス車体にJR九州のコーポレートカラーである赤い帯を巻いた783系交流特急形電車です。国鉄時代は485系特急形電車が全国各地で運用されていましたが、JRグループ初となる特急形電車では新しいスタイルを導入。各車両の中央部に出入口ドアとデッキを設置し、1両の客室をA室(下り方)とB室の2つに区分して使用できる特徴を備えています。これは短編成でもグリーン車と普通車、指定席と自由席、禁煙席と喫煙席を自由に配分できるもので、半室をグリーン車にしたクロハ782形も導入されました。

 また、従来の485系と比べると客室窓が大きくなり、車窓の風景がよりワイドに楽しめるようになっています。さらに先頭車両は客室内から前面展望が見やすいものとなり、独特なデザインと合わせて人気の的となりました。

 この改正では、鹿児島本線博多〜熊本・西鹿児島間の485系特急「有明」28往復中19往復が「ハイパーサルーン」の車両愛称が付けられた783系での運転となり、特に博多〜西鹿児島間を約4時間5分で結ぶ最速の1往復には「スーパー有明41・14号」の愛称が付けられました。

JR九州のコーポレートカラーを輝かせて鹿児島本線を快走する783系特急「有明」

昭和63年3月改正から豊肥本線水前寺駅まで延長運転。DE10形ディーゼル機関車が牽引した

平成元年3月からハイパーサルーン投入 特急「かもめ」Limited-Express“KAMOME”

 鹿児島本線の特急「有明」で鮮烈なデビューを飾った783系「ハイパーサルーン」は好評を博し、平成元年3月改正では長崎本線博多〜長崎間の特急「かもめ」18往復中2往復に783系が投入されました。特急「有明」用と区別するため、先頭車両の前面から続く帯の半分が青色になっています。

 783系使用の最速列車は2時間の壁を破って所要1時間58分となり、列車のスピードアップと快適さの向上に伴う利用客増加が見込めることから、平成2年3月改正では車両を増備して5往復が783系運用となりました。

 この改正から485系と区別するために783系の列車は愛称が「ハイパーかもめ」になりましたが、鹿児島本線の特急「有明」も「ハイパー有明」を名乗るようになり、九州内の特急列車では「ハイパー」が速くて快適な列車の代名詞として定着しました。

 なお、「ハイパー有明」の愛称は787系特急「つばめ」が登場した平成4年7月改正、「ハイパーかもめ」の愛称は787系が「かもめ」にも運用開始した平成6年3月で消滅しています。

先頭車両の帯半分が青色となった「かもめ」用の783系を先頭に走る特急「ハイパーかもめ」

車両愛称が「ハイパーサルーン」であることから特急「ハイパー有明」として運転された783系

787系の登場で車両をリニューアル 特急「有明」「かもめ」「にちりん」 Limited-Express“ARIAKE”“KAMOME”“NICHIRIN”

 平成4年7月15日改正では、鹿児島本線に斬新なデザインと充実したサービス設備を備えた787系交流特急形電車が登場。これに伴い、783系および787系で運転される西鹿児島発着の特急「有明」14往復は特急「つばめ」を名乗るようになり、サービス設備面で優れた787系が人気の的になりました。

 さらに、平成6年3月から787系が特急「かもめ」5往復にも投入され、約2年間は「かもめ」としても運転されました。787系の登場により783系の客室サービス設備などが見劣りするようになったため、平成6年から8年にかけてリニューアル工事が行なわれ、787系と同様の快適な車内空間となりました。

 また、平成2年3月改正から日豊本線博多〜大分間の特急「にちりん」3往復が783系となり、愛称は「ハイパーにちりん」となりました。平成6年7月には「ハイパーにちりん」が6往復となって好評を博しましたが、平成7年4月改正では883系振り子式特急形電車が「ソニックにちりん」としてデビューしたため、783系は485系とともに「にちりん」の愛称で活躍するようになっています。

新時代のエースとして平成4年7月改正から鹿児島本線に登場した787系特急「つばめ」

平成7年4月改正から日豊本線に登場した883系振り子式車両の特急「ソニックにちりん」

485系から783系へバトンタッチ 特急「かもめ」「みどり」「ハウステンボス」Limited-Express“KAMOME”“MIDORI”“HUIS TEN BOSCH”

 鹿児島本線の787系特急「つばめ」や日豊本線の883系特急「ソニックにちりん」に続き、平成12年3月改正では長崎本線の885系特急「かもめ」が登場。JR九州の電車特急用の新型車両が勢揃いしたのに伴い、これまで485系で運転されていた佐世保線の特急「みどり」「ハウステンボス」を783系化することになりました。

  博多〜早岐間を併結する「みどり」と「ハウステンボス」では車両間の往来も必要とされ、新たに貫通式の先頭車両が必要となりました。そこで、中間車のサハ783形に運転台を設置した連結時の貫通専用車両が誕生し、「みどり」の11号車はクロハ782形100番台、「ハウステンボス」の10号車はクハ783形100番台となっています。

  平成22年2月1日現在、783系は全車両がJR九州の南福岡電車区に所属し、特急「かもめ」(885系「白いかもめ」以外の列車)「みどり29・4号」用の5両編成、特急「にちりん」「にちりんシーガイア」「ドリームにちりん」「ひゅうが5・2・4号」用の5両編成、みどり専用塗色の特急「みどり」「きらめき1・8号」用の4両編成(「みどり29・4号」を除く)、ハウステンボス専用塗色の特急「ハウステンボス」「きらめき1・8号」用の4両編成があります。

  このうち、特急「みどり」用は先頭車両の前面が緑色で、車内側面には緑色のブロックと愛称ロゴをデザイン、特急「ハウステンボス」用は7号車の先頭車両前面が赤色、特急「みどり」と併結する貫通路がある10号車の先頭車両前面は黄色で、各車両の側面は赤・黄・青色のブロックと愛称ロゴをデザインしています。

  このほかの車両はステンレスの車体にカラフルな色の小さなブロックをデザインしていますが、特急「かもめ」「みどり」「ハウステンボス」の3列車併結では、それぞれの個性を発揮した色と車体デザインの違いを感じることができます。

「ハウステンボス」用の非貫通スタイルの先頭車両は運転台部分が赤色と目立つデザイン

「みどり」との連結面の10号車は貫通スタイルの先頭部分が黄色となっている

「ハウステンボス」との連結面の11号車は貫通スタイルの先頭部分が緑色となっている

パステル系

レインボー系

青磁色系

コバルトブルー系

ブラック系

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