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鉄道カメラマン太鼓判!ローカル線でぶらり紅葉狩り vol.3 山田線&岩泉線 車窓を流れる色づいた景色、のんびり走る列車。ご紹介する“紅葉列車”は鉄道カメラマン太鼓判!の路線ばかり。今年の秋は、ローカル線で紅葉狩りを楽しみませんか。

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絶景ローカル鉄道と“口福”の海の幸探訪 山田線&岩泉線|盛岡~釜石、茂市~岩泉 紅葉の見頃:10月上旬~11月中旬 (例年) 北上山地から三陸海岸、そして山間の秘境へ。1日3~4本という究極ローカル線の旅に出た。唸るディーゼルエンジン、車窓には見渡す限り錦の山々、そして豊饒なる海の幸……。急がず、あわてず、の~んびりの2泊3日。

高原を抜け、のどかな山海風景が車窓に映る山田線に乗って釜石へ

 「釜石まで行くのなら、花巻経由の釜石線が早いですよ」。新幹線から在来線に乗り換える盛岡駅の連絡改札で、時刻を尋ねた僕に駅員さんが丁寧に教えてくれた。「いえ、山田線に乗ってのんびり行きたいんですよ」「………」

 ちょっと不思議そうな表情の駅員さんをあとに、3番線ホームから11時4分発の快速「リアス」宮古行き2両編成に乗り込んだ。ディーゼル特有の低く重い振動がひときわ強くなったかと思うと、車体を軋(きし)ませながら列車はゆっくりホームを出て行った。

 左後方に岩手最高峰の岩手山(2040.5m)がゆっくり遠ざかっていく。上盛岡、山岸と住宅街の駅を過ぎ、右手から米内(よない)川が近づいてくると、車窓は緑一色だ。次第に上り勾配がきつくなり、トンネルの連続。カーブを曲がるたびに鳴らす「プォー!」という警笛が、列車の喘ぎ声にも聞こえてくる。なにしろ大志田~区界(くざかい)間は、1000分の25(1000mで25m上がる)の急勾配。昭和57年まではスイッチバック方式を採用していた区間である。

 やがて左手にとんがり頭の兜明神岳(1005m)が見えてくると区界駅に到着。なだらかな高原風景は、この区間最大の絶景ポイントだ。

 区界からは下る一方。再び山が迫り、閉伊(へい)川の急流が岩を噛む。岩泉(いわいずみ)線と分かれる茂市(もいち)、蟇目(ひきめ)とひなびた風情の駅を通り、13時3分宮古駅に到着した。ここで3分の待ち合わせで釜石行きに乗り換える。

 宮古までとうって変わり、宮古~釜石間は海岸線を行く。特に陸中山田を過ぎ、織笠から浪板(なみいた)海岸、吉里吉里(きりきり)の間は船越湾が車窓いっぱい、スクリーンのように広がる。ホタテを養殖する筏が旅情たっぷりだ。やがて製鉄所が見えてくると、釜石駅に到着した。

 釜石駅前の橋上市場サン・フィッシュ釜石へ。ウニや鮭など海産物の店がズラリと並んで、すごい活気!

 「お兄ちゃん、どっから?」「横浜からです」「あれ、まぁ。そっだら遠いどこから。これ食べてみなせ」

 今年80歳というおばあちゃんの笑顔に魅かれ、思わずホタテ10個を実家に送ってしまった。

 場内の「まんぷく食堂」で遅めの食事をし、釜石駅から15時39分の山田線に再び揺られ、宮古へ。駅前からバスで25分、今日の宿泊先である「休暇村陸中宮古」へは18時30分に着いた。

サン・フィッシュ釜石内「まんぷく食堂」の「5きげん政宗お宝丼」
紺碧の海に整列する白い岩塊がまさに極楽浄土を思わせる浄土ヶ浜

鮮やかな錦の山峡をひた走る孤高のローカル鉄道・岩泉線

 2日目は茂市(もいち)から岩泉(いわいずみ)へ、山峡をひた走る岩泉線の旅。といってもそこは究極のローカル線なので、宮古発6時35分・15時2分・18時11分の1日3本だけだ。15時2分まで浄土ヶ浜、魚彩市場と、宮古観光を楽しんで過ごした。あくまで、のんびり旅である。

 ほぼ定刻に宮古駅を発車。茂市まで山田線を戻り、ここで盛岡から来た快速列車と待ち合わせをした後、いよいよ岩泉線へ。山間部を縫うように奥へ分け入っていく。ひなびた無人駅の岩手刈屋、中里を過ぎ、岩手和井内(わいない)駅までは国道が並行し、鮎やヤマメの宝庫である刈屋川に沿って走る。

 岩手和井内から押角(おしかど)までの5.8kmは区間最大の上り勾配。車内まで響くエンジン音が、いかにも苦しそうだ。車窓に広がる景色はまさに秘境。周囲の山々が錦に染まる秋は、実にスケールの大きな紅葉が楽しめる。その頃には、落ち葉で車輪が滑ることがしばしばあり、レール洗浄列車なるものが出動することもあるそうだ。

 山中にホームだけがぽつんとある押角駅で列車もやっと一息。ここからは下りだが、トンネルが連続する狭隘(きょうあい)な山間部には変わらない。二升石(にしょういし)駅を過ぎるとようやく平坦になり、16時33分に終点岩泉駅に到着した。

 だが、ここで落ち着いてもいられない。龍泉洞の見学は17時受付終了なのだ。予約時に連絡しておいたので、駅前には宿泊する「ホテル龍泉洞愛山」のスタッフさんが車で待っていてくれた。

 無事に龍泉洞を見終えて、ホテルへ。遠赤外線効果の高い木炭の湯で汗を流す。なにしろ翌朝8時1分に岩泉駅を発車する始発までなにもやることはないのだ。山の濃厚な空気がなんとも清々しい山里の宿で、更けゆく夜をの~んびり楽しんだ。

大きな空が印象的な岩手刈屋駅。映画のセットではありません
山の中にぽつんとある押角駅。宮沢賢治の童話の世界を思い出した

必食!!宮古駅の絶品「いちご弁当」

売り切れ御免の人気駅弁。
前日に予約すれば取っておいてくれる

 新鮮イチゴとミルクがセットになったお弁当……ではなく、この地方に伝わる郷土料理「いちご煮」をご飯の上にのせたお弁当。

 いちご煮とはウニとアワビを煮た磯汁のことで、汁の中に浮くウニが野イチゴのように見えたことからこの名が付いた。磯の香りがする炊き込みご飯にたっぷり敷き詰められたウニそぼろ、驚くほど軟らかいアワビが絶品。全国の駅弁コンテストでも必ず上位に来る人気駅弁だ。JR宮古駅の売店で1個1200円。


区界駅を過ぎると閉伊川渓谷が右に左につかず離れず見える


浄土ヶ浜めぐりの観光船陸中丸。ウミネコと目が合った!?


製鉄と魚の町・釜石に到着。釜石線と三陸鉄道にも乗り入れている


宮古駅から徒歩7分の魚菜市場。海の幸はもちろん、野菜や惣菜も山積み


日本三大鍾乳洞のひとつ「龍泉洞」の地底湖は神秘的な一語


ホテル龍泉洞愛山の木炭を使用した大浴場

路線データ

JR山田線
盛岡~釜石157.5km/駅数30/普通運賃=盛岡~釜石2,940円
東北本線の盛岡駅から北上山地、港町・宮古を経て、三陸海岸を釜石駅に至る単線・非電化のローカル線。昭和14年9月17日全線開通。沿線の吉里吉里駅は、井上ひさしの小説『吉里吉里人』で全国的に名が売れた。

JR岩泉線
茂市~岩泉38.4km/駅数9/普通運賃=茂市~岩泉740円
昭和17年に小本線として茂市~岩手和井内が開通、昭和32年に浅内まで、昭和47年2月6日に浅内~岩泉が開通した単線・非電化のローカル線。岩手和井内~押角~岩手大川は秘境中の秘境で最大の難所。秋は全山紅葉に覆われる。

注意!
山田線は盛岡~宮古間1日5本、宮古~釜石間1日10本、岩泉線(茂市~岩泉)は1日3本と本数が少ないので、旅のプランニングには注意が必要です。

TOP写真=マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ(山田線 平津戸~川内駅間)
取材・撮影=五十嵐英之
※掲載されているデータは、平成21年10月現在のものです。
※月刊『旅の手帖』2008年10月号より転載。

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