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JRでおトクに行く 決定版! 湯ったり満足温泉旅【前編】

  • 幾重にも連なる山並みの麓 文学の香り漂う素朴ないで湯『天城温泉郷』
  • 手つかずの自然が残る山の中で 湧き出たままの湯に浸る『奥鬼怒温泉郷』

手つかずの自然が残る山の中で 湧き出たままの湯に浸る『奥鬼怒温泉郷』[栃木県日光市]

湯の湧く崖で暖をとるカモシカが見られるかも~八丁湯~

 朝、鳥の声で目が覚める。外をのぞくとあたりはまだ薄暮の中。朝日を待ちながら露天風呂に浸かろうと部屋を出ると、廊下を歩く足音があちらこちらから聞こえてくる。やはり、鳥の声に起こされた客たちだろう。

 「おはようございます」。気軽に声を掛け合いながら、露天風呂に浸かる。運が良ければ、目の前の崖を散歩するカモシカに出会えるかもしれない。派手なところなど何もない山の中の一軒宿。だからこそ、自然を身体いっぱいに感じられる。それが奥鬼怒温泉郷である。

 八丁湯は、奥鬼怒温泉郷の入口である女夫渕温泉郷に最も近く位置している。点在する4ヵ所の一軒宿の中で、最初に造られた宿である。昭和4年のこと。それ以前は、鬼怒川の中に湧き出す湯の周囲を囲って湯船を造っただけの野湯で、山で木挽き作業をする人々が仕事帰りに入浴していたという。川底の源泉は台風による川の氾濫によって土砂に埋まってしまったが、代わりに、宿の前の崖から湧き出すようになった、現在は、8ヵ所から湧き出す源泉が6つの湯船にかけ流され、泉質の異なる湯を楽しむことができる。内湯の男性浴室は、創業当時そのままの姿で残っている。

 「当時は、山道を歩いて建設資材を運んだそうです。内湯はコンクリート製の素っ気ないものですが、祖父が苦労して手造りしたものだと思うと、作り直す気になれなくて……」

 事情を知る常連客にも愛され続けている内湯である。

 その代わりに、露天風呂は、4つの湯船が目の前の滝を眺められるように配されている。それぞれに湯温が違っているので、温い湯にゆったり浸かり、最後に集めのお湯で仕上げをと、自分のペースで使い分けることができる。春は新緑、夏は濃い緑、秋は紅葉。そして、冬の楽しみは何と言っても雪見風呂だ。

 奥鬼怒温泉郷の各宿に電気が引かれたのは昭和63年のこと。それ以前は夜にはランプが灯っていた。設備や交通はかなり便利になったけれど、ランプの宿の雰囲気はしっかりと残っている。それが八丁湯の大きな魅力だ。


滝のすぐ脇の崖に設けられた石楠花の湯。湯は温め


創業当時からある雪見の湯は熱めなので、上がり湯にぴったり


山の風景に溶け込むような離れ家風のログハウスが人気。室内は畳敷き。トイレ・洗面・ベランダ付き


食卓に上る「カモ肉うどん」は、身体が温まって最高

弱酸性の硫黄泉は、美肌の湯で女性にも人気 ~加仁湯~

 青みがかった白い湯。硫黄泉独特のたまご臭。初めて奥鬼怒温泉郷を訪れ、大自然の中で真っ白な湯に出会ったとき、誰もが感動するだろう。加仁湯の源泉は5本、全て泉質が異なり、真っ白から透明に近いものまで湯の色も様々だ。

 隣の八丁湯とはわずか約500mしか離れていないのに、加仁湯は弱酸性の硫黄泉で白濁、八丁湯は弱アルカリの単純温泉で無色透明と全く違っている。同じ奥鬼怒温泉郷の日光沢温泉も基本的には弱酸性の硫黄泉なので、ここでは白いにごり湯が多い。ただし、手白澤温泉と日光沢温泉は送迎をしていないので、泊まるには、鬼怒川沿いの遊歩道を自力で歩いて行くしかない(手白澤温泉の場合、鬼怒川温泉駅から契約タクシーの利用が可能)。ちなみに、手白澤温泉は看板犬のクロが女夫渕温泉のバス停まで迎えにきてくれて、宿までガイドしてくれる。しかし、外来入浴は不可である。日光沢温泉は、外来入浴も可能だが、奥鬼怒温泉郷では唯一残る山小屋。つまり、体力に自身がない人でも手軽に泊まれて、白いにごり湯を満喫できるのは加仁湯しかないのだ。

 

 加仁湯に泊まって目に付くのは、女性客が多いということ。男女別の内湯のほかに、露天風呂が4ヵ所あるが、女性専用は1つだけ、3ヵ所は混浴で、別の3つは貸切風呂だ。混浴が多いのは山の湯の醍醐味。女性が多数派なら混浴でも怖いものなし。入浴後は、山菜たっぷりの料理に舌鼓を打てる。

 創業は昭和初期で、「昔は、食料なども丸沼温泉から祖父が担いで、山越えをして運んだそうです」という山の宿である。現在は若旦那が采配しているが、地元の民話を語ってくれる語り部や、トレッキングガイドがいて、山とともに生きる楽しさを客に伝えている。


玄関に下げられた提灯が山の宿の風情を盛り上げる


青みを帯びた白い湯をたたえる第3露天風呂


建物の最奥にある第1露天だけは女性専用

旅のDATA

■八丁湯
栃木県日光市川俣876
TEL.0288-96-0306
1泊2食9800円~
日帰り入浴9:00~15:00、大人500円、入浴パック(送迎、昼食付き)3500円
東武鉄道鬼怒川温泉駅から女夫渕温泉行きバスで1時間40分の終点下車、送迎車で30分(宿泊者と入浴パック利用者のみ)、もしくは徒歩1時間10分(ハイキングコース)
詳細はこちら
■加仁湯
栃木県日光市川俣871
TEL.0288-96-0311
1泊2食1万2750円~ 日帰り入浴9:00~15:00、大人500円
鬼怒川温泉駅から女夫渕温泉行きバスで1時間40分の終点下車、送迎車で約25分(宿泊者のみ)、もしくは徒歩1時間20分(遊歩道ハイキング)
詳細はこちら

JR東武 日光・鬼怒川観光フリーきっぷでおトクにアクセス!

☆POINT☆

 通常、東京都区内から鬼怒川温泉往復の乗車券&指定券で合計7800円。こちらのきっぷを使えば、同じ値段でさらにフリーエリア乗り降り自由かつタクシー・バスクーポン券が付いてきます!

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この列車で行こう! きぬがわ/スペーシアきぬがわ/日光/スペーシア日光/はちおうじ日光

JR東日本と東武鉄道が共同運行。新宿~鬼怒川温泉駅間は所要時間約2時間。
「きぬがわ」(新宿~鬼怒川温泉)が1日1往復、「スペーシアきぬがわ」(新宿~鬼怒川温泉)が1日2往復、「日光」(新宿~東武日光)が1日1往復。繁忙期には臨時列車が増発。
停車駅は、池袋・大宮・栃木・新鹿沼・下今市・東武日光

旅のMEMO

観光の問合せ
湯西川・川俣・奥鬼怒温泉郷観光協会 TEL.0288-97-1126

※掲載されているデータは平成22年5月現在のものです。
※月刊『旅の手帖』2009年1月号より転載・再構成。



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