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『途中下車! 青春18きっぷの旅 ~格安のワンダフル☆トリップ~』JR全線の快速&普通列車が普通車自由席に乗り放題の「青春18きっぷ」。ローカル線のワンダフル・トリップに、さあ、出かけましょう!

『常磐路 清流と温泉めぐり』上野からいわきへ、さらに郡山、水戸を経て上野に戻る……。新緑まぶしい季節、“9”の字を逆になぞる形で常磐線から磐越東線、水郡線へと各駅停車の列車に乗った。「青春18きっぷ」に似合いの渓流と滝といで湯めぐりの1泊2日の旅だ。

夏井川渓谷を行く磐越東線であぶくま洞から小町温泉へ

 水戸で乗り継いだ常磐線の普通列車は大津港、勿来(なこそ)あたりでようやく太平洋と出合う。その先で下車した湯本は、駅名のとおり歴史を誇る湯の町。古くは湯治場や温泉宿場町として栄え、現在も20数軒の宿を数える沿線きっての温泉郷だ。炭鉱から温泉郷に大変身したスパリゾートハワイアンズの玄関口でもある。

 次の列車までの時間、駅や駅前、街角の足湯に浸かり、腰痛や肩凝りにも効くという天然温泉100%の共同浴場「さはこの湯」でひと風呂浴びた。

 いわき駅で郡山行きの磐越東線に乗り換える。太平洋側の“浜通り”と中央部の“中通り”を結ぶ、福島県民には重要な生活路線だ。

 ボックスとロングシートの列車には、新緑の山や田植え間近の水田がひらけ、小川郷、江田から川前にかけて阿武隈山地を縫う短いトンネルが連続する。その合間、車窓の左右に何度も入れ替わる夏井川の渓谷美に、僕は何度も心を躍らせた。

 神俣(かんまた)で途中下車して、タクシーであぶくま洞へ。削り採られた石灰岩の無残な山の下に全長600mの鍾乳洞が延びる。鍾乳石や石筍が織りなす空間は妖しくて幻想的で、通年14度という冷気も心地よかった。

 泊まりの小町温泉は平安時代の絶世の美女・小野小町の故郷に1200年前に発見されたと伝わる古湯である。美肌づくりのアルカリ性単純泉が小町伝説と結びついたのだろう。

 翌朝、郡山へは今様小町の女子高校生たちであふれる各駅停車。車窓には田畑や杉林、集落が流れ、滝桜で知られる旧城下町の三春(みはる)を過ぎて、やがて阿武隈川を越すと、ビルを交えた県南きっての都会、郡山の街が現れた。

阿武隈川から久慈川への水郡線 大子と袋田の湯と滝に癒されて

 郡山で乗り継いだ水郡線は水戸~安積永盛(あさかながもり)駅間を3時間余で結ぶ長いローカル線。プラットホームには赤、青、黄などカラフルなキハE130系車両が待っていた。

 郡山市街を抜けて安積永盛の先で東北本線と別れ、阿武隈川を渡る。なだらかな山や広い田畑、こんもりとした森、広壮な農家の集落など、郷愁をそそる懐かしい風景が快走する車窓に続く。

 磐城塙(いわきはなわ)、矢祭山(やまつりやま)あたりから久慈川の流れが寄り添うが、眺めのハイライトは常陸大子(ひたちだいご)から袋田にかけて。ゆったりした流れが鉄橋の下を何度かくぐり、車窓の左右に何度か連れ添う。

 常陸大子で下車し、日帰り温泉で人気の「森林(もり)の温泉(いでゆ)」へタクシーを向ける。自然林に囲まれたガラス張りの大浴場や広々とした大露天風呂にあふれるナトリウム-硫酸塩泉の湯が心地よかった。

 袋田駅からバスで10分の袋田の滝では、絶え間なく落ちる水量と轟音と水しぶきに内なる力が鼓舞され、その滝水流れる川岸の袋田温泉の渓流露天風呂では、湯と水の精気に心癒された。

 再び水郡線の列車に揺られて、終点の水戸に着く頃には、野や山や街はすでに黄昏(たそがれ)ていた。

 緑と水の清々しさに満たされた常磐路の旅の終わり。おおらかに裾野を引いて美しくそびえる、紫色に染まる筑波山に見惚れた。

旅のスケジュール

  駅名 時間 旅のひとことアドバイス
1日目 上野発 7:37  
水戸着 9:36 いわき行きの普通列車に乗換え
水戸発 10:03 大津港、勿来あたりで太平洋を車窓に眺める
湯本着 11:36 駅前の足湯や温泉街をぶらぶら。共同浴場「さはこの湯」入浴
湯本発 12:55 普通列車でいわき駅へ
いわき着 13:05  
いわき発 13:13 磐越東線に乗換え。「いわきカニピラフ弁当」を購入。駅弁を食べつつ、夏井川渓谷を左右の車窓に望む
神俣着 14:03 タクシー10分であぶくま洞へ
神俣発 15:53 いわき行きの列車で一駅戻る
小野新町着 15:58 小町温泉に宿泊。食事前に周辺を散策
2日目 小野新町発 8:02 郡山行き列車に乗車。車内は通学の高校生でいっぱい
郡山着 8:59 水郡線に乗換え。カラフルな車両が快適
郡山発 9:18 水田と花と山並みが広がる車窓に心和む
常陸大子着 11:17 バス10分の「森林の温泉」でひと風呂。駅前の玉屋旅館で「奥久慈しゃも弁当」を購入し、駅のベンチで食べる
常陸大子発 13:51 車窓に久慈川の流れがたっぷり続く
袋田着 13:55 バス10分の袋田の滝へ。水しぶきと轟音に感動! 帰りに袋田温泉の渓流露天風呂を堪能
袋田発 16:46  
水戸着 18:01 お土産の水戸納豆を購入して、上野を目指す
水戸発 18:20 明るさが残る黄昏の常磐路を眺めつつ乗車
上野着 20:31  
青春18きっぷでめぐった名湯・秘湯
湯本駅:いわき湯本温泉
歴史と湯量を誇る
浜街道唯一の温泉宿場
道後、有馬と並ぶ日本三古泉のひとつ。皮膚病や婦人病、切り傷、糖尿病などに効果が期待できる湯量豊富な温泉。20数軒の宿をはじめ、「さはこの湯」などの共同浴場や足湯も目をひく。●常磐線湯本駅から徒歩3~10分(「さはこの湯」は徒歩約10分)
小野新町駅:小町温泉
小町伝説のあるのどかな村里
駅近くに湧く美人の湯
夏井川が流れる磐越東線沿いの田園地帯に湧く古湯。肌にやわらかな美肌づくりのアルカリ性単純温泉で知られ、小野小町生誕地との伝説にちなみ、約50年前に「小町温泉」と改称している。適応症(効能)は神経痛や皮膚病など。●磐越東線小野新町駅から徒歩5分
常陸大子駅:大子温泉
久慈川畔や森林に包まれた
人気の「森林の温泉」
常陸大子駅周辺と久慈川沿いに、数軒の宿が散在。25度の無色透明のナトリウム-硫酸塩泉を加熱した温泉は神経痛など効くという。日帰り温泉「森林(もり)の温泉(いでゆ)」は、湯量豊富な風呂が自慢。「森林の温泉」●TEL.0295-72-3200。水郡線常陸大子駅からバス10分
袋田駅:袋田温泉
滝川と新緑の中で憩う
風雅な部屋といで湯の安らぎ
袋田の滝入口の滝川沿いにある温泉。川風や川音も涼しげで爽やかな中に、源泉かけ流しの渓流露天風呂などがあり、立ち寄り入浴もできる。泉質は単純温泉とナトリウム-硫酸塩・塩化物泉。「思い出浪漫館」●TEL.0295-72-3111。水郡線袋田駅からタクシー5分


いわき湯本温泉の共同湯「さはこの湯」(改修工事のため平成21年8月1日~10月上旬まで休館)


小野新町駅の朝のプラットホームは通学の高校生たちであふれ返る。小町温泉へは駅から徒歩約5分


小町温泉「瀇太屋」にはアルカリ性単純泉の「こまち湯」と鉄泉の「しぶ湯」の2つの湯船がある


乗換駅の郡山は鉄道の要衝。各地への列車が発着して退屈知らず。写真は東北本線のE721系電車


水郡線沿線、常陸大子から袋田にかけての車窓に滔々(とうとう)たる久慈川の流れが広がる


広々としたスペースに3つの湯船をもつ「森林の温泉」の露天風呂。適応症は神経痛や筋肉痛など


常陸大子駅の名物駅弁「奥久慈しゃも弁当」。駅前の玉屋旅館が製造販売。950円


袋田の滝や袋田温泉の下車駅・袋田駅は山小屋風の木造りの駅舎


高さ120m、幅73m。岩壁を4段に落下する豪壮な袋田の滝は日本三名瀑のひとつ


清々しい袋田温泉「思い出浪漫館」の渓流露天風呂。源泉かけ流しで立ち寄り入浴もできる

旅のMEMO
観光の問合せ
いわき湯本温泉観光協会●TEL.0246-42-4322
小野町観光協会●TEL.0247-72-2111
大子町観光協会●TEL.0295-72-0285

取材・文:中尾隆之 撮影:浅水浩二 TOP写真:マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ
※掲載されているデータは平成21年7月現在のものです。

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