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『途中下車! 青春18きっぷの旅 ~格安のワンダフル☆トリップ~』JR全線の快速&普通列車が普通車自由席に乗り放題の「青春18きっぷ」。ローカル線のワンダフル・トリップに、さあ、出かけましょう!

『絶景列車で山陰温泉紀行』「青春18きっぷ」は、温泉ハシゴ旅にはぴったりのきっぷだ。今回の行き先は山陰・中国地方。沿線にはたくさんの温泉、絶景、魅力的な町並みが待っている。温泉地での悦楽、風景の堪能を求めて、さあ、出発進行!

大阪発着の鈍行列車ぐるり旅で温泉と絶景を味わい尽くす

 高台の端まで行くと、海からの上昇気流がわっと体を押した。翼があれば空へ舞い上がれそうだ。約50m下、急な山の斜面を下った先には、新緑の山が囲む小さな入江と鄙びた港が見える。素晴らしい景勝地。しかもここが駅の構内というのがまた面白い。その鎧(よろい)駅で途中下車した私は、「城崎のかにずし」をほおばり、日本海の風に吹かれながら、次の列車が来るまでの約1時間半を心地よく過ごした。

 大阪駅を基点に、鈍行列車で山陰、美作(みまさか)、備前路を巡るのが今回のプラン。630kmに、1泊2日を費やし、「風景」に出会ってきた。

 山陰本線の竹野~餘部(あまるべ)駅間では、リアス式の海が、フラッシュバックのように目に飛び込んできた。余部鉄橋のあたりは高度感抜群で、海と山、両方の景観が次々と車窓を流れていく。

 因美線での中国山地越えでは、森に分け入るようにディーゼル列車は走り、ちょっとした冒険気分を味わった。乗り継ぎ待ちの津山では「城東町並み保存地区」を散策。タイヤ屋など「今」の商売をする古い商家がいくつもあり、「生きた」町並みを感じさせた。

 日本にはまだ見ぬ風景がたくさんある。それを再認識できたのは、鈍行列車旅のおかげに違いなかった。

車窓の向こうには絶景。途中下車すれば名湯の列車旅。

 さて、この鉄路の沿線には、有名無名合わせて10以上の温泉がある。途中下車しながら、今回は城崎(きのさき)、東郷、吉岡、八幡の各温泉を訪ねた。結論から言えば、鈍行列車旅と温泉地探訪は、なかなかの組み合わせであった。

 乗り換え時間を利用して、まずは城崎温泉へ。7つある外湯の一つ、「御所の湯」を堪能した後、表に出ると土産物屋に「城崎ビール」の字が。湯上がりの地ビールは喉に染み入った。車を運転しての旅にはない悦楽。

 湖畔の東郷温泉で宿泊し、翌朝は吉岡温泉へ。ここの町営吉岡温泉館の湯はとても熱かった。だから長湯できず、診療所のような小さな待合室で時間をつぶすことに。次のバスは1時間後である。自家用車の旅のほうが効率いいのかなあ、などと思っていると、おばあさんが浴場から出てきた。地元の人だという。彼女から、「この湯の熱さが、地元では普通」「湯上がりは足が軽くなる温泉」などと教えられ、話が弾んだ。そして別れ際には私のポケットに500円玉をねじ込んだ。「鳥取駅でコーヒーでもお飲み。これも縁だからね」。時間に無駄のあるほうが、旅は面白くなるらしい。

 「あとは列車に乗るだけ、湯あたりしても構わない」とばかり長湯をした八幡温泉を後にして、鉄路は岡山へ。早瀬きらめく旭川が、連れ添うように隣を流れている。岡山から大阪へは山陽本線なので旅はスムーズ。しかし私は、乗り継ぎの悪さと遅さを早くも懐かしんでいた。いや、それより、さらに旅を続けたいのかもしれなかった。

旅のスケジュール

  駅名 時間 旅のひとことアドバイス
1日目 大阪発 7:13 早朝から山陰の旅へ出発(平日は7:14発)
福知山着 9:31 途中下車して、明智光秀の足跡をめぐるのもオススメ
福知山発 10:01  
城崎温泉着 11:28 温泉街散策、御所の湯へ。城崎ビールで喉を潤す
城崎温泉発 13:11 名物駅弁「城崎のかにずし」を購入
鎧着 13:58 余部鉄橋を渡る手前の駅で途中下車。海を望むベンチで駅弁を食べる
鎧発 15:37 鎧~餘部駅間の余部鉄橋上の車窓は必見
浜坂着 15:55 カニの看板が印象的。鳥取行きに乗換え
浜坂発 16:19  
鳥取着 17:10 都会の雰囲気にときめく。米子行きに乗換え
鳥取発 18:03  
松崎着 18:59 東郷温泉で宿泊。露天風呂から夕日を眺める
2日目 松崎発 8:03 通学の高校生と共に出発
鳥取着 8:48 バスで約25分の吉岡温泉へ。熱い温泉に浸かり、鄙びた温泉街を散策
鳥取発 12:03 因美線の普通列車に乗車
智頭着 12:48 流し雛の町。津山行きに乗換え
智頭発 12:51 中国山地越えの車窓を望む
津山着 14:02 津山の古い城下町を散策。津山線に乗車して備前路へ
津山発 15:16  
福渡着 15:54 八幡温泉「建部町温泉会館」で上がり湯
福渡発 18:13  
岡山着 18:59 名物駅弁「桃太郎の祭ずし」を購入し、一路大阪へ
岡山発 19:16  
姫路着 20:41 長浜行きの新快速列車でスピーディに移動
姫路発 20:57  
大阪着 21:58  
青春18きっぷでめぐった名湯・秘湯
城崎温泉駅:城崎温泉
7つの外湯をめぐりながら
歴史ある温泉街をそぞろ歩き
城崎温泉の魅力は7つの外湯めぐり。それぞれに逸話や歴史、雰囲気などが異なり、楽しい。営業時間は7:00~23:00(鴻の湯、御所の湯、一の湯、地蔵湯)と13:00~21:00(さとの湯)、15:00~23:00(まんだら湯、柳湯)。●山陰本線城崎温泉駅下車
松崎駅:東郷温泉
淡水魚豊かな湖の底から
高温の湯が豊富に湧く
山陰八景に数えられる名勝地・東郷湖。この汽水湖の中から、約90度の温泉が湧出している。東郷温泉を代表する宿の一つが水明荘。浴場からの東郷湖の眺めは素晴らしい。温泉は源泉かけ流し。「水明荘」●TEL.0858-32-0411。山陰本線松崎駅から徒歩3分
鳥取駅:吉岡温泉
美しい里山に囲まれた
閑静な隠れ名湯
里山に囲まれた静かな温泉地で、旧街道に沿って旅館が10数軒並ぶ。吉岡温泉館は町営共同湯。弱アルカリ性低張性高温泉の湯は、無色透明でさらりとしている。「吉岡温泉館」●TEL.0857-57-0555。山陰本線鳥取駅から吉岡温泉行きバス24分の終点下車、徒歩5分
福渡駅:八幡温泉
体が生き返るラドン含有量
旅の疲れをここでリセット
清流旭川の河畔に湧く温泉で湧出量は岡山県随一。泉質はアルカリ性単純温泉だから、素肌美人になれるかも。ラドン含有量が高濃度で、適応症は細胞の活性化、新陳代謝の向上など。「建部町温泉会館」●TEL.0867-22-2500。津山線福渡駅から徒歩15分


城崎温泉といえば7つの外湯めぐり。写真は「一の湯」で、桃山様式の建物は城崎温泉の象徴


城崎温泉駅前の共同湯「さとの湯」には足湯もある。カエルの口からお湯が出ていてユニーク


青春18きっぷのポスターにも登場した鎧駅で途中下車したのは一人だけ。次の列車は約1時間半後だ


海を望む鎧駅ホームそばのベンチにて駅弁ランチ。山陰の海と港は、旅情をかきたてる


山陰名物のカニをちらし、押し、巻きと3種の寿司で楽しめる城崎温泉駅名物「城崎のかにずし」


東郷温泉を代表する宿「水明荘」の露天風呂からは東郷湖の絶景が楽しめる。松崎駅から徒歩3分


町営の共同湯「吉岡温泉館」は実に素朴な施設。地元御用達の隠れた名湯でかなり熱い


鳥取駅から因美線の普通列車に乗車。中国山地を越えて城下町津山の玄関口・津山駅に到着


乗換え時間を利用して、城下町津山の町並みを散策。駅前には旧津山扇形機関車庫など鉄道遺産も


津山線福渡駅で下車し、旅の疲れを癒しに八幡温泉へ。泉質は肌がつるりとなるアルカリ性単純温泉

旅のMEMO
観光の問合せ
城崎温泉観光協会●TEL.0796-32-3663
香住観光協会●TEL.0796-36-1234
倉吉市観光協会●TEL.0858-22-8158
吉岡温泉旅館組合●TEL.0857-57-0800

取材・撮影:大村嘉正 TOP写真:マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ
※掲載されているデータは平成21年7月現在のものです。
※余部鉄橋は架け替え工事中ですが、平成22年秋までは現在の鉄橋を列車が走行する予定です。

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