『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。あれこれ考えない“野武士的な“食べ方にあこがれる筆者のひとりメシエッセイ、『野武士のグルメ』(普遊社)が、土山しげる作画によるマンガ版で幻冬舎より発売。

岳南電車 がくなんでんしゃ

富士山麓の工場地帯を走る、ローカルな私鉄。吉原から岳南江尾(いずれも富士市)までの10駅。9.2km。工場内を走る一風変わった路線だ。土・日曜・祝日に使える1日乗車券は大人410円とかなりお得。

 

 やはり工場が多い。水源豊かな富士市は製紙工場が目につく。前にトイレットペーパーの包み紙を収集していた時期があって、多くは富士市製造のものだった。オレンジと白の縞模様の煙突が白い煙を吐いているのが風情ある。煙は青空に上ることもなく棚引くこともなく消えるが、あれは水蒸気なのか。


車両検量所。大型トラックやダンプのヘルスメーター

 大型トラックやタンクローリーも多い道を歩いていたら「第一検量所」という家の壁に書いてある。なんだろうと思ったら、その前に大きな長方形の鉄板が敷いてある。どうやら、自動車の体重計らしい。初めて見た。40tとも書いてある。車の巨漢専用だ。

 暖かい。コートを着ていたが、脱いでリュックに入れる。もう咲いている桜がある。しばらく歩いたら前方に店が固まっていて「あれ……」と思った。ひょっとしたら。やはりそうだ。4年前、ボクが迷った末にたどり着いた「人のいる場所」。ホッとしてようやく椅子に座り、ラーメンを食べた「来来亭」があった。ここで、ここが富士市吉原という場所だと知ったのだ。そしてそのすぐ先にマクドナルド。ここで親切な青年に声をかけられ、新幹線の駅まで車で送ってもらったのだ。懐かしい。二度と来ることはないと思っていた。感無量。この気持ち、他の人にはわかるまい。

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