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久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。7月からテレビ東京系でドラマ『孤独のグルメ』の第4シーズンが放映中。

鹿児島本線 かごしまほんせん

門司港(もじこう)から新八代(しんやつしろ)までの232.3km81駅と、肥薩おれんじ鉄道を挟んで川内(せんだい)から鹿児島までの49.3km14駅。今回は北九州市の小倉から門司港、関門海峡付近を歩いた。

 

 しかもその道は延々と続いた。ようやく道が国道に出て、またしばらく歩き、ようやく門司港駅前に出る。12時半になっていた。3時間半歩き詰めで、さすがにちょっと疲れた。門司港駅前はさっきの住宅街とは別世界のように若者や観光客が多く、お洒落なカフェもたくさんあった。それが古い港のビルの1階を改装してやっているので、雰囲気がいい。「焼きカレー」というのが流行っているらしい。昼時で行列ができている店もある。

 だが、ボクはここから観光列車に乗らなければならない。門司港駅に向かう。駅は今改修工事中だった。どうやらすごくレトロでイイ感じの駅だったのをそのまま復元しようとしているらしい。駅の周囲にはなんとも言えない、昔の人々の苦労や哀愁が残ったような空気が流れている。と思ったら、古い水飲み場に「帰り水」と書いてあるのを発見。満州から引き揚げの人々がここで水を飲んで、日本に戻ったことを実感したそうだ。そういう駅だったのか。


門司港駅構内に今も残された「帰り水」

 さて、ボクがそこから乗った門司港レトロ観光線「潮風号」は、貨物線に観光列車を走らせたもので、トロッコ列車みたいで楽しい。全長2.1km、最高時速15km。日本最短で、日本一遅い観光列車なんだそうだ。乗客はアナウンスに皆笑って和んだ。実際のろいのろい。窓からの海風が気持ちいい。

 列車はのんびり終点の関門海峡めかり駅に到着。海沿いの道を約500m歩くと「関門トンネル人道入口」という建物があった。なんと地下道を歩いて渡れるというのだ! そんなの、今回の旅まで全然知らなかった。無料。自転車と原付は20円。


日本一遅い観光列車「潮風号」。
カワイイ!

まさか関門海峡を歩いて渡るとは思わなかった。
SFっぽいトンネル

 エレベーターでかなり深く降りていくと、ガランとしたロビーがあり、休んでいる人がいる。いきなりそこにトンネル。うおー、向こうが見えない。キューブリックの映画の主人公になってその一点透視の消失点に向かって歩き出した。ちょっとコワい。この上は海だ。信じられない。海底を歩いて九州から本州に渡るとは。歩いてみてわかったが、向こうが見えなかったのは道が緩やかに傾斜して下っていて、まんなかあたりから上っているからだった。全長780m。中ほどに線が引いてあり、山口県と福岡県の県境だった。

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