『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。テレビ東京系でドラマ『孤独のグルメ』の第4シーズンが絶賛放映中。

南武線 なんぶせん

川崎から立川までに、浜川崎支線と呼ばれる浜川崎から尻手(しって)を加えた39.6km30駅。京王、小田急、東急と、多くの線と交差する路線。今回は川崎市の登戸から平間までを歩いた。

 

 川から離れた南武線に寄って行くと、新明国上教会という大正元年(1912)にできた宗教団体の建物があった。屋根の上に三重塔が乗っかった本殿? がユーモラス。

 巨大な高架をくぐる。東名高速だ。「久地(くじ)はり灸接骨院」がある。久地に入ったか。いつの間にか右手側に丘陵が迫っている。次の津田山の駅まで歩いて、その丘陵が全体で緑ケ丘霊園であることがわかった。津田山は小さな無人駅。ひたすらつたい歩く。ペットボトルは2本目も残りがもうお湯になっている。

 そして武蔵溝ノ口に着いた。ここには昔降りたことがある。東急田園都市線と交わるところなので、駅も大きく人も多い。当初ここまでと思っていたが、まだ2時半過ぎなので、もうひと駅歩くことにする。


壁が全部100円均一本。武蔵溝ノ口駅そば

 駅を越えた高架下に、前に写真に撮った古本屋を発見。店の外壁が全部100円均一の本棚になっている。変わってない。盗まれないのか。そこを越えると道は南武線にくっついてずっと直線の車道。ちょっと退屈。この退屈さ、身に覚えがある、と思ったとたんに鉛筆型の煙突が見えた。そうだ、ここ、歩いたじゃん。ボクは10年ちょっと前に「武蔵小杉~武蔵中原~武蔵新城~武蔵溝ノ口」と武蔵4駅踏破というのをやったことがあったんだ。急にこのつたい歩きが新鮮さのない手垢のついたものに感じてきた。

 暑い。足が疲れた。単調な道を何も考えず歩いて武蔵新城到着。とにかく喉が渇いた。座りたい。駅のイートインのパン屋に入る。グレープフルーツジュースを頼み、椅子に座るのももどかしく、腰を下ろしながらコップのジュースを飲む。座ったときは飲み干していた。冷房が嬉しい。やれやれ、これからどうしよう。

 これで終わりたくない。とにかくこの汗をなんとかしたい。iPhoneで、この近所の銭湯を検索したら、武蔵小杉の2駅先の平間(ひらま)駅の近くに「平間温泉」というのがあり、昼間からやっているようだ。そこだ!ジュースのコップに水を入れて飲み干すと、改札に向かい南武線に乗って武蔵小杉に向かう。そこまでは以前歩き済み。

前のページへ 次のページへ
旅の手帖mini

散歩の達人MOOK

バックナンバー

このページのトップへ