『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。
下館(茨城県筑西市)から茂木(栃木県茂木町)までの41.9km、17駅。週末を中心に今もSLが定期的に走る。
今回は栃木県の真岡駅(真岡市)から益子駅(益子町)までを歩いた。
また道が線路と並んだ。間に柵も何もなくどこまでもまっすぐ。空気が気持ちよくて、どこまでも無限に歩けそうな気がした。時折現れる火の見櫓の八角形の屋根の角のところにいちいちクルリと巻いた鉄の飾りがついているのが、昔っぽくてウレシイ。
西田井駅に到着。無人駅。駅前に小さな小さな公園がある。池があって、池の中に小さな島があって、渡れる。その島の木陰に腰を下ろして、休息。時計を見たら、まだ午後1時半。水を飲む。シートがあったら草の上に寝転がりたい。
遠くで踏切の音がした。列車が来る。ボクは急いで線路に向かった。そして、1両列車と自分の影法師を一緒に写真に収めることに成功した。
また家が増えてきて、北山駅。ここも無人駅。ホームのベンチでまたちょっと休憩。あまり疲れは感じないのだが、休めるところでは、休む。忙しい仕事の合間を縫っての長散歩なので、疲れを溜めたくない。
「益子(ましこ)3km」の標識が出る。今日の目標駅だ。調べたら、益子駅15時1分発の、上りのSLがある。今14時5分。あと約1時間ある。十分間に合うではないか! もう一度SLに乗れると思うと元気が出た。15分ほど車道を歩くと「益子町」の標識が出た。「益子焼窯元」と「イチゴ狩り受付」という看板が並んで立っている。JAの野菜直売所があり、隣に「いちご畑レストラン」もある。昔、茨城県日立の妻の実家から、車で益子に来たことがあるのを思い出した。30年近く前だ。でもその時の記憶は全然残っていない。急須かなにか、買ったような……。
「陶芸ろくろ体験」の看板もある。さすが益子。でも前はそういうのはやらなかったな。陶芸は土に向かって無心になるので、自分が原始人のような気持ちになる。集中力がいるので、終わると体はクタクタになるけど、精神的にはすごくストレス解消になる。しばらく前にはよく青梅のほうの教室で、ろくろに向かった。またそろそろやりたいな。
しばらく歩くと大きな酒蔵があった。見学もできるようで、若い女の子たちが見えた。お洒落なカフェも併設されているようだ。でも最近の若い人は、男子より女子の方が酒も強いし、好きだからなぁ。SLの時刻が気になるので、寄らない。小貝川というちょっと大きな川を渡って、少し行くとしばし離れていた真岡鐵道にぶつかり、そこがもう今回のゴール・益子駅だった。