『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。作曲・演奏をした『孤独のグルメSeason4』サウンドトラック盤(地底レコード)発売中。
宇美(宇美町)から西戸崎(福岡市)までの25.4km、16駅。今回は和白から西戸崎までを歩いた。
西戸崎そばの西戸崎港からは福岡市営渡船があり、志賀島まで18分、博多港まで15分で結ぶ。
歩き始めると、最初に間違えたと思ったところで、踏切が鳴った。間もなく明るいクリーム色の車体で、前面だけが濃紺のガッシリした香椎線のディーゼルカーが現れた。西鉄線と全然違う重厚さ。青鬼みたいだ。見送ったら後ろの顔はクリーム色だった。道は線路といったん離れたが、車道に「海の中道」と書いてあったから、これに沿っていけば香椎線とまた並ぶはずだ。
最初は道沿いにマンションも多かったが、次第に左手が開けて畑などが現れ、線路が道路に寄り添うように近づいてきた。奈多(なた)駅。駅舎が小さくてカワイイ。線路の向こう側は古そうな大規模な団地になった。壁にロブスターの絵が描かれたこぢんまりしたレストランがあってランチタイムだったが、食べてる場合じゃない。
団地が途切れたので、線路の向こう側の細い道に移って歩いていたら、左手の家の間から海が見えた。海の向こうにも陸が見えたから内海なのだろう。本格的に海の中道に入ってきたのか。奈多とイタリアンをかけたのか「奈多利庵」という店があった。玄界灘のせいか「俺の玄海」という居酒屋もあった。「俺の限界」みたいで面白い。個人経営っぽいダイビングスクール「潜望鏡」もあった。面白い店名に出会うと、思わず笑ってしまい、心和む。
だんだん家が少なくなり、道も広くなり、空が大きくなっていく。雲は多いが晴れ間も見える天気で、歩いているから寒くはないが、だんだん前からの風が冷たくなってきた。でも菜の花がいっぱい咲いている。やっぱり九州だ。東京ではまだ咲いていない。