『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。文庫版『ひとり飲み飯 肴かな』(日本文芸社)発売中。
居能(山口県宇部市)から小野田(山陽小野田市)までの11.6㎞、9駅と、通称・本山線の支線2.3㎞、2駅。大正4年(1915)、石灰やセメント運搬のため小野田~小野田港(旧駅名セメント町)間で開業し、今年11月に100周年を迎える。今回は小野田から長門本山(山陽小野田市)まで歩いた。
しかし暑い。日差しがものすごく強い。日焼け止めを塗ってきたが肌がジリジリする。噴き出る汗。だが歩道に大きなセミが落ちているのを見て、盛夏は過ぎつつあるのかと思う。そのセミが東京では見たことのない、羽根の緑っぽいセミ。戻って調べたらクマゼミだった。動画で鳴き声も確認。ああ、鳴いてた鳴いてた。こういうところは便利な時代。
ここでまた線路は大きくカーブ。道がT字路で二手に分かれるまんなかを行く。どちらへ行けば沿うのか。地図を開く。あたりは市街地になっている。するとどこからかソースの焦げるいい匂いがしてきて、見たらお好み焼きやたこ焼きや焼きそばの店があった。夏期登校日らしい中学生グループが歩いてきた。プール帰りか。未来無限の人生が羨ましい。
南小野田駅。近くに「セメント町踏切」があった。小野田や宇部がセメントで有名なのを思い出す。線路の向こうに工場が見える。太平洋セメント小野田工場だ。大きなクレーンも見える。次の港町踏切で、海が見えた。瀬戸内海。向こうは九州だ。
小野田港駅。何軒かのうどん屋を見る。やはりそばよりうどん文化圏のようだ。その先でまた線路がT字路のまんなかを。今回ばかりは地図を持ってきてよかった。こんな箇所がこの辺で続く。この炎天下、間違えて戻ったりしていたら体力も気力も奪われる。
波瀬崎踏切を渡って少し歩いたら後ろで警報機が鳴り出した。うわっと思って走って戻る。本数が少ない路線だから、この機会は逃せない。やがて黄色い一両車が現れ、逆光だが何とか撮ることができた。
そこを過ぎると狭い水田が現れ、市街地を抜けたようだ。少し歩くと雀田(すずめだ)駅に到着。午後1時43分。ここから小野田線の支線・本山線に沿って、終点長門本山駅まで歩く。この支線は1日に3往復しかない。疲れたので、雀田の駅舎の中に座って休む。
通る風が本当に心地いい。「もうじき100歳! JR小野田線」というポスターがある。そんなに歴史があるのか。駅には窓口もあったが、カーテンが閉まっていた。きっぷ自販機などもない。だがこぎれいな駅舎だった。