「北海道の鉄道発祥の地」である小樽の手宮〜札幌間35.9kmに鉄道が開通したのは、明治13年(1880)。日本で初めて鉄道が敷かれた新橋〜横浜間、神戸〜京都間に次ぎ、日本で3番目であった。かつての手宮(小樽)〜幌内間にはそれぞれ鉄道の保存施設があり、旧手宮駅跡に建つのが「小樽市総合博物館」。北海道の歴史や自然、交通などに関する展示を行なう博物館として、多くの鉄道資料が展示公開されている。
住所●北海道小樽市手宮1-3-6 TEL●0134-33-2523 開館時間●9:30〜17:00 休館日●火曜(祝日の場合は翌日)、年末年始 入館料●一般400円(冬季は300円)、高校生200円(同150円)、中学生以下無料 アクセス●JR小樽駅から高島3丁目経由小樽水族館行きバスで約10分の「総合博物館」下車
小樽市総合博物館は、北海道の歴史や自然、鉄道をはじめとした交通、科学などに関する展示を行なう総合博物館で、その展示物のなかに充実した鉄道展示部門があり、北海道の鉄道の歴史を見ることができる。
博物館へは小樽駅からバスの便があるが、小樽運河に近い旧手宮線の廃線跡遊歩道をたどって行けば、博物館の手宮口に到着する。手宮線は北海道最初の鉄道なので、この遊歩道も博物館の延長と思えば、博物館の見学がより魅力的なものになる。
本州の鉄道は、イギリス人鉄道技師の指導のもと、イギリス式の鉄道様式で建設が進められたのに対し、北海道の鉄道は、アメリカ式の鉄道技術を使って鉄道建設が進められたといわれている。建設に携わった中心人物は、アメリカの鉄道技師ジョセフ・ユーリ・クロフォード博士。H・Kポーター社製の蒸気機関車2台をはじめ、車両はアメリカから輸入され、蒸気機関車は「弁慶」「義経」と名づけられた。博物館のしづかホールには7106号「しづか号」が展示してある。この機関車は明治13年(1880)、北海道初の鉄道「幌内鉄道」開業にあたりアメリカから輸入された機関車のうちの1台で、西部劇映画に出てくるようなアンティークスタイルの蒸気機関車である。
屋外に目を向けてみよう。博物館の中心には、国の重要文化財に指定されたレンガ造りの機関車庫と転車台が現存し、庫内には「しづか号」と同じアメリカ・ポーター社製の機関車「アイアンホース号」が動態保存され、博物館内を往復して乗車も可能だ(冬期運休)。
館内のほぼ中央部にあたるレール敷地には「北海道鉄道開通起点標」が建立されている。北海道初の官営幌内鉄道の起点となった鉄道史跡である。この石碑から旧手宮駅方向には手宮機関区時代の転車台が残っているのも興味深い。
また、旧手宮駅構内でもある敷地には、北海道にゆかりのある40以上の車両が揃っている(冬期は屋外車両非公開)。SLでは旧手宮駅で入れ替えにも使われたC12形タンク機関車、かつて急行列車を引いて最果ての鉄路・宗谷本線を疾走したC55形などが保存されている。特に急行用C55形の直径1.75mのスポーク状大動輪は必見。C55の美しい姿に磨きをかけている。
私の思い出の車両は特急、急行用のディーゼルカーだ。特に「白鳥形」といわれたキハ80系は、かつて北海道内を疾走した特急「おおぞら」「北斗」「おおとり」などに使用され、小樽を走る函館本線の「山線」では唯一、特急「北海」が峠を越えて小樽駅に発着していた。また、急行「大雪」「すずらん」「宗谷」などに使われたディーゼルカーなども保存されていて、鉄道ファンならずとも懐かしい気持ちにさせてくれる。
- 保存されているC55は宗谷本線で活躍した旅客用SL。美しいスポーク状動輪が特徴だった。(昭和48年6月、宗谷本線で撮影)
- 北海道有数の機関区で全盛時代には多くの蒸気機関車を保有していた。映画『男はつらいよ・望郷篇』ではロケも行なわれ、小樽〜倶知安を走るSLが登場した。(昭和46年撮影)
- わが国最大の旅客用SLで、かつては東海道本線で特急「つばめ」も引いていた。現在は梅小路蒸気機関車館に保存されている。(昭和46年、小沢駅で撮影)
小樽市総合博物館に続く旧手宮線の廃線跡の遊歩道
旧手宮機関区に残る国鉄時代の転車台。ここから遊歩道に続く
昔の駅の改札口と待合室をイメージした博物館のエントランスはレトロ駅を彷彿とさせる
屋内に保存展示されている準鉄道記念物第1号の「しづか号」
「北海道鉄道開通起点」の石碑。ここから北海道の鉄道が始まった
C12形SLはかつて手宮駅構内で入れ替え用機関車として活躍していた
鉄道創世記のレンガ造りの機関車庫と転車台は国の重要文化財に指定されている
赤レンガ車庫で休む「アイアンホース号」。時々構内を走る動態保存機だ