昭和の時代を駆け抜けた代表的な蒸気機関車16形式18両が国重要文化財指定の機関区の扇形庫に一堂に会して保存。ここで実際に動く蒸気機関車はD51をはじめC11、C57、C62、C56などがあり、煙を吐いて走る姿を見て乗れるとなれば、SLファンならずともワクワクしてくる。梅小路蒸気機関車館は日本の鉄道の歴史、文化がぎっしり詰まった世界有数のSL専門の鉄道博物館でもある。
住所●京都府京都市下京区観喜寺町 TEL●075-314-2996 開館時間●9:30〜17:00(入館は〜16:30) 休館日●月曜(休日の場合と、3月25日〜4月7日・7月21日〜8月31日は開館)、年末年始 ※月曜日が休日の場合は翌日を休館。ただし、火曜日も休日の場合は開館 入館料●おとな(高校生以上)400円、こども(4歳〜中学生)100円 アクセス●JR山陰本線丹波口駅から徒歩15分。またはJR京都駅からバス10分の「梅小路公園前」下車、徒歩5分
国鉄から蒸気機関車が廃止されたのは北海道の室蘭本線で、昭和51年12月14日に「さよならSL」のヘッドマークを付けたC57-135号機が最後の旅客列車を引いて終了した。ところが、廃止された後も蒸気機関車を復活する声は強くなる一方であった。それらの熱い声に応えるべく昭和47年、当時の国鉄は「鉄道開業100周年」を記念して、1世紀にわたり活躍した蒸気機関車を貴重な交通文化財として末永く後世に伝えることを目的に、大正から昭和の代表的な蒸気機関車16形式18両を保存、そのうち7両を動態展示する世界でも数少ない「SL専門博物館」の開設という画期的な決断をした。
保存する場所は国際観光都市である京都が選ばれ、かつて蒸気機関車の基地であった梅小路機関区の扇形庫を活用して、「梅小路蒸気機関車館」が誕生した。
なにはともあれ、憧れの蒸気機関車に対面するため梅小路蒸気機関車館の門をくぐってみよう。現在のエントランスにあたる建物は、平成9年のリニューアル時にわが国最古の木造駅舎といわれてきた「旧二条駅舎」を移築・復元したもので、エントランス兼、資料展示館として活用されている。
展示場を出るとすぐ、機関庫の前に出る。この機関庫は「扇形庫」といわれ、この扇形車庫は、大正3年(1914)に建設された現存する最古の鉄筋コンクリート造りの建築物だ。平成16年には、庫内の電動天井クレーン、引き込み線と共に、国の重要文化財に指定され、土木学会選奨土木遺産にも認定された貴重な産業遺産でもある。機関庫のなかには20線の引き込み線があり、保存機関車がここで保守点検を受けている。車庫内の静態保存機関車には、実際に運転台に乗れるものもある。
扇形庫の扇の要にあたる所には「転車台」(ターンテーブル)があり、車庫から出た機関車はここで向きを変えて出庫してゆく。一日に数回、実際に機関車が転車台に乗って入れ替えする時間があり、絶好の撮影スポットになっている。7両の動態保存機関車は、必ずどれかの機関車が毎日動くように整備され、出庫した機関車は構内の引き込み線を乗客を乗せて走っている。あの名機D51やC62が実際に走るのだから鉄道ファンや家族連れも大喜びだ。
保存SLには、この構内だけでなく実際の路線を走るものもあり、山口線を走るC57「やまぐち号」やC56「北びわこ号」など、JR西日本内で運転される車両として使用されている。またこの博物館は、現役の梅小路機関区としても機能しているので、車庫内では機関車の整備点検、時にはディーゼル機関車なども入庫している。
国際観光都市にある博物館だけに、イギリスやドイツなど海外の鉄道ファンも多く訪れている。今や「梅小路」は日本を代表する鉄道博物館といったところである。
- 明治28年(1895)、日本最初の電車の運転を始めたのが、東洞院通り七条下る鉄道踏切南側から伏見下油掛通りまで 6kmの間。京都駅前にはその記念碑が立っている。
- 日本初の電車で、隣接する梅小路公園と愛知県の明治村で復元されたN電が走っている。
- 梅小路蒸気機関車館に保存されているC11-64号機は、かつて会津線、只見線、日中線などで活躍していた。(昭和44年、日中線喜多方駅で撮影)
扇形庫から出て転車台に乗る、国鉄最小のSL「B20形」
車庫内では静態保存の機関車を間近で見ることができる
修理点検中のC57。梅小路機関区は現役の蒸気機関車の機関区でもある
お召し列車仕様のC58-1号機
館内で展示されているお召し列車の機関車の装飾品
かつて東海道本線で特急「つばめ」を引いたC62-2号機も動態保存されている
B20形に石炭を積み込む作業も目が離せない光景
旅客用最大のC62形と、国鉄最小SL、B20形のツーショットはイキな計らい
敷地内を走るSLスチーム号。館内の展示運転線(往復1km)を約10分で運行。小さなSLの旅が楽しめる