青森県黒石市に「つゆやきそば」なるメニューがある。文字通り焼きそばを日本そばのつゆか中華スープに入れたもの。どちらも黒石独特の太麺を使っている。また、栃木県那須塩原市には「スープやきそば」が存在。こちらは見た目はほぼラーメンだが、中華スープにソースが香る。起源は、「ボリュームを増やすため」、「出前でたまたま混ざった」など、諸説あるようだが、別々に独自に誕生したのは興味深い。
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今や、「“ご当地やきそば”といえば富士宮やきそば」と言われるほど知名度の高い焼きそば。富士宮出身者は、首都圏などへ行くと「美味しい焼きそばがない」と嘆くという。富士宮やきそばは、地元の人にとっては子どもの頃から食べていた馴染みの味だが、地域外から来た人でも美味しいと感じる確かな理由がある。
一番の特徴は麺。食べた人は、まずそのコシの強い食感に驚く。富士宮の焼きそばのルーツは、戦後の食糧不足の時代。少量の小麦粉と野菜でできる焼きそばは重宝され、冷蔵庫などない中、少しでも長く保存できるようにと麺の水分を極力減らしたことから、コシの強い固めの麺になったという。そのため焼きそばを作る際には、十分に水分を加える独特の調理法で作る必要があり、作り手の技術で味が変わってしまう焼きそばでもある。
また、富士宮は豚の飼育も盛んであり、ラード(豚脂)の生産が多かったことから、炒め油は主にラードを用い、ラードを絞った「肉かす」を隠し味にコクを出す。具には地産のキャベツを使い、最後にイワシの削り粉をたっぷり振りかけることで、和風の味わい深い焼きそばになるのだ。
最近では市外でも食べられる店がある富士宮やきそばだが、やはり本場で食べたいもの。市内には焼きそばを食べられる店舗が150軒以上ある。店のタイプは大きく分けて3つ。まずは「駄菓子屋系」。昔ながらの駄菓子屋の片隅に鉄板があり、そこでお好み焼きと焼きそばを焼く。店のお母さんとのコミュニケーションも楽しい。次に「鉄板焼き系」。様々な鉄板焼きのメニューを出す店で、焼きそばを焼いてくれる。そして「食堂系」。いわゆる食堂で、お皿で提供してくれるもの。それぞれに美味しい店があり、タイプもバラエティに富んでいる。
食べ歩きをするなら、まずは浅間大社の向かいにあるお宮横丁内の富士宮やきそば学会アンテナショップで味わうのがおすすめ。スタンダードの富士宮やきそばを食べたら、「富士宮やきそばマップ」を入手し、興味の沸いたお店に突撃すべし。ぶらぶら歩きながら、街中の気に行った店構えの店に寄ってみるのもいいかもしれない。
駄菓子屋系の人気店。昭和を感じさせるノスタルジックな雰囲気の中で、鉄板から直接いただく焼きそばは美味。
浅間大社前のお宮横丁にある富士宮やきそば学会直営の焼きそば専門店。スタンダードの焼きそばの他、辛みの効いたメニューが並ぶこともある。
秋田県横手市は冬のかまくらで有名な町。そして、知る人ぞ知る焼きそばの町だったが、第4回B-1グランプリのチャンピオンに輝いたことで一躍全国的に有名になった。市内には専門店をはじめ多くの焼きそば提供店があり、現在至る所で行列ができている。
横手やきそばはゆで麺を用いる。麺は太めのまっすぐな角麺で、具材はひき肉とキャベツが一般的。ポイントは福神漬を添えること。焼きそばには紅ショウガが定番だが、私が知る限り福神漬が添えられるのは全国でもここだけだ。いずれかのお店が始めて、甘めの横手やきそばに合うということで広まったのだろう。
そして、なんといっても多くのファンを魅了してやまないのが、半熟の目玉焼き。横手やきそばはソースにダシを合わせる。地元の人は、食べるときにまずそのまろやかなソースをかける。そして半熟の黄身を崩し、焼きそばと合わせて食べる。これが美味くないはずがない。外から来る人には、「水っぽい感じがして苦手」という方もいるようだが、あえて水分を全て飛ばさないのだとか。個人的には好みだ。
横手やきそばは戦後に誕生した。鉄板焼き文化の北限といわれる横手では、もともとお好み焼き(クレープ状のはし巻きのようなものだったらしい)が存在したが、昭和28年頃に横手やきそばの麺ができ上がると、当初の居酒屋メニューから、現在のように食堂などでも食べられる定番へと広がっていったそうだ。
横手には実はもうひとつ、「ホルモン焼そば」という名物焼きそばがある。豚のホルモンを柔らかく調理し、焼きそばの麺を合わせたソース焼きそばだ。通常の横手やきそばとは違うソースを使うこだわりのお店もある。
横手焼きそばを食べるなら、まずチェックするのは“四天王店”。横手では毎年「横手やきそば四天王」の決定戦を行なっている。公募の“覆麺”の調査委員が約2ヵ月かけて食べ歩く予選会を実施。審査の項目は、麺の焼き加減やソースとのバランス、価格、店での対応など。この予選会を勝ち抜いた上位10店舗が、推奨店として秋に四天王決定戦に出場でき、上位4店舗に絞られたお店が、晴れてその年度の「横手やきそば四天王店」を1年間名乗ることができるのだ。過去の四天王店も合わせて、気になる店を見つけて突撃しよう。
横手やきそばの発祥の店として知られる老舗有名店。駅からは少し離れているが、ぜひ訪れてみたいお店。
メニュー豊富な横手やきそば暖簾会会長のお店。焼きそばはもちろん、ラーメンやその他メニューも人気。
青森県黒石市に「つゆやきそば」なるメニューがある。文字通り焼きそばを日本そばのつゆか中華スープに入れたもの。どちらも黒石独特の太麺を使っている。また、栃木県那須塩原市には「スープやきそば」が存在。こちらは見た目はほぼラーメンだが、中華スープにソースが香る。起源は、「ボリュームを増やすため」、「出前でたまたま混ざった」など、諸説あるようだが、別々に独自に誕生したのは興味深い。