餃子好きの日本人は多いと思うが、東と西ではその特徴は大きく違う。東の餃子は皮がもっちりと厚く、具もたっぷりと入り、基本的なタレは自分で調合する。それに対し、西の餃子は皮が薄くなり、サイズも小さくなる傾向がある。タレは神戸では味噌ダレを加えたり、九州ではポン酢系のタレにユズ胡椒を使う。ところ変わればの典型的なものだ。
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小学生の時、帯広市に住んでいたのだが、その頃は存在すら知らなかった「中華ちらし」。どうやら、ちょうど私が小学校に上がる前(40年前)に誕生したようだ。その名前から「中華風のちらし寿司とはどのようなものだろう?」と思ってしまうのが普通の人の感覚だろう。実はこの中華ちらし、酢めしは使っていない。
簡単に説明すると、白菜や玉ネギ、モヤシなどの野菜と豚肉の細切り、炒り卵、キクラゲを醤油と砂糖をベースに味付けし、ご飯にのせたもの。お店によって海老やイカといった海鮮を使用する。中華丼のようにあんかけにはしておらず、器も丼や深皿などで供される。中華料理の「木須肉絲(ムースールースー)」をアレンジしたというお店もあり、店によって味に個性があるが、どれも思ったよりもあっさりしており、それでいてご飯によく合う一品に仕上がっている。
発祥の頃の話を探ってみると、当時人気だった「割烹松竹」という店に辿りつく。現在こちらの店では中華ちらしは出していないとのことだが、この店の賄(まかな)い飯として誕生し、この店出身の料理人たちが独立した店で出し始めて広がったというという説がどうやら有力のようだ。
中でも元祖として知られている「あじ福」は、先代の店主が「割烹松竹」にいるときに最初に賄いで出しており、昭和46年に松竹が火事で一時休業していたころに独立して、お店で出すようになったのだとか。名付け親は「春華楼」のお客さんだという説もあり、この辺りはご当地グルメにありがちな、“古い話で定かではない”という謎めいた話になっている。
「豚丼」が、北海道十勝地方の中心地・帯広の開墾の歴史で親しまれた豚肉を使った料理であるというのは合点がいくが、この中華ちらしという摩訶不思議なメニューが帯広市民に受け入れられていったのは、いささか不思議ではある。開拓精神旺盛な十勝の人々が新しモノ好きであったからとか、色々な意見があるようだが、個人的には結構単純に美味しかったから広がり、残ったのだろうという気がする。全国のB級ご当地グルメは、誰かの創作料理が受け入れられ、それが広がっていって市民に浸透し、現在も残っているというのがほとんどであるわけだし……。いずれにしても、他の地域では似たようなものもほとんど存在しない中華ちらし。ぜひ一度お試しを!
40年ほど前に中華ちらしを賄いで生み出した主人のお店。店は移転してきれいになったが、海鮮の入った中華ちらしは変わらぬ味。
一説によると、中華ちらしの名付け親はこちらのお客さんだったとか。汁気や甘みが抑えられ、スプーンで頂く中華ちらしはあっさりといただける。
「浜松名物といえば!?」と聞かれると、少し前までは浜名湖のウナギを思い浮かべていた。高級ブランドの浜名湖のウナギと夜のお菓子「うなぎパイ」は、子供の頃からもなんとなく知っていた。それが最近、浜松の名物といえば「浜松餃子!」と答えが返ってくるくらい、餃子が有名になってきた。富士山静岡空港の開港の時に、たまたま福岡空港でのPRで、静岡の名物の中に、富士山と並んで浜松餃子が紹介されていた。すごいことだ。
浜松餃子が知名度を上げたきっかけは、平成18年に独自に実施した餃子消費量調査で宇都宮を上回り、「餃子消費量日本一宣言」を行なって一躍有名になったこと。家計調査は県庁所在地と政令指定都市を対象としており、現在では政令指定都市となり、正式に調査対象となった浜松市が、宇都宮とのトップ争いを演じている。
浜松には300軒ほどの餃子を提供する店があり、専門店も80軒ほどある。専門店の軒数が多いということは、全体のレベルが高いということ。それだけで店が成立するだけの食文化があるわけだから、当然競争が厳しくなり、美味しくない店はつぶれてしまう。讃岐うどん、富士宮やきそばなど、地方都市で専門店が数多く存在するところは皆そうだ
浜松餃子の一番わかりやすい特徴は、餃子にモヤシが添えられること。フライパンで焼かれることの多い浜松餃子は、円盤状になって提供されるが、その真ん中がさみしかったので、何かを置こうと選んだのがモヤシだったのだとか。
現在では具材はお店ごとにバリエーションがあるようだが、昔は地元にあるもので工夫して作っていた。そのスタンダードがキャベツであり、玉ネギであり、豚肉だった。餃子は明確な地域性が出にくいメニューだが、一般的には白菜が使われることが多く、そのほかの野菜はニラがよく使用され、肉は必ずしも使わなかったりする。
関東では、だいたい醤油と酢とラー油がテーブルに置かれていて、自分で調合するが、浜松ではタレが自家製であったり、ラー油も自家製のものが置いてある。これも餃子どころならではだろう。最近ある人の勧めでハマった餃子の食べ方は、まずそのまま食べること。「ラーメンにいきなりコショウをかけず、まずスープをすする」「そばはまずそのまま食べる」など、そのままの味を楽しむことで、食べる楽しみが広がると思う。たいして特別なことではないのだが、ぜひ一度試してみてほしい。
昭和28年創業で浜松餃子の特徴でもあるモヤシを添えた元祖。郊外にありながら行列の絶えない地元の人気店。(小)を頼むと円盤状で出てこないのでご注意を。
浜松餃子は郊外に名店が多い中、市街中心地で味わえる野菜たっぷりの餃子。昭和37年創業の老舗名店。こちらも(小)だと円盤状では出てこない。
餃子好きの日本人は多いと思うが、東と西ではその特徴は大きく違う。東の餃子は皮がもっちりと厚く、具もたっぷりと入り、基本的なタレは自分で調合する。それに対し、西の餃子は皮が薄くなり、サイズも小さくなる傾向がある。タレは神戸では味噌ダレを加えたり、九州ではポン酢系のタレにユズ胡椒を使う。ところ変わればの典型的なものだ。