沖縄といえばタコライスや麺ではないちゃんぽんなど独特なご飯料理があるが、沖縄のカツ丼もちょっと変わっている。そもそも見た目は豪快そのもの。一般的に食堂のメニューはでか盛りだが、カツ丼も量がすごい。さらに普通は具が玉ネギか長ネギくらいだが、野菜がたっぷりと入っている。ハイカロリーだがヘルシー……かなぁ。
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全国的には卵とじカツ丼のシェアが圧倒的だが、カツ丼の元祖はソースカツ丼といわれる。誕生については複数の説があるが、最も古いとされるのが、現在福井に本店がある「ヨーロッパ軒」の初代主人が東京の早稲田で大正初期に提供をはじめたという説。ドイツでの料理修業を経て創作したというカツ丼は、カツレツ系の薄めで細かいパン粉を使用し、複数枚を丼にのせて提供される。駒ヶ根や会津のように、パン粉が粗く衣が厚いトンカツ系のカツを切って丼にのせ、千切りキャベツと共に食べるものとは趣が違う。関東大震災後、故郷の福井に戻って提供を始め、県内に広がっていったとみられる。ヨーロッパ軒だけでも県内に暖簾分けのお店が結構あるが、それ以外にもソースカツ丼の提供店はかなり多い。
キャベツはのらず、ソースをくぐらせたトンカツと白飯のみという潔さ。ここに3枚程度のカツがのるのだが、そのままではご飯にたどりつけない。ご飯にはみ出さんばかりにのったトンカツの上に蓋がのっていて、「蓋がしまらないでしょ。いらないんじゃないの?」と突っ込みたくなるが、地元のお客さんの使い方を見て納得。蓋はカツの取り皿として、まず一枚だけをどんぶりに残してそのほかを「避難」させる。そうして1枚ずつカツと飯をいただくわけだ。
カツは厚いほうがうまい!と思いこんでいたが、福井のソースカツ丼を食べると、厚さはないがジューシーで、肉のうまみと衣・ソースとのバランスが絶妙。シンプルではあるが実に奥深く、100年近く歴史があるといわれれば素直に納得してしまう。お店によっては半熟の目玉焼きや海老フライ、メンチカツといったトッピングのバリエーションもあるようだ。地元にいれば色々なものを試してみたいが、まずはシンプルにカツ丼を食べることをオススメする。
福井といえば、越前そばという大根おろしを使ったそばがあり、個人的には日本一うまいそばではないかと思っている。が、福井は白米も美味しい米どころで、コシヒカリは新潟の名産として知られているが、実は生まれは福井県である。福井の人たちはご飯のうまさにかなり厳しいので、ぜひともご飯自体もじっくり味わって食べてほしいものだ。
福井はもちろん日本のソースカツ丼の発祥のお店。薄めながら大ぶりのカツが贅沢にのった逸品。県内にも複数の暖簾分けがある地元の超有名店。
昭和48年創業の地元で人気の洋食レストラン。リンゴなどを使用したフルーティで甘めのソースが食欲をそそる。ボリューム満点で満足度も高い。
岡山といえばキャッチフレーズは「晴れの国」。ポカポカした暖かい瀬戸内式の気候に恵まれ、ブドウや桃などの高級フルーツで名高い地域だ。瀬戸内海に行ったことのなかった10年以上前は、瀬戸内の海の幸は日本海や太平洋には及ばないと偏見を持っていたが、実は美味なる味覚にあふれている。個人的には「ままかり」という岡山名物の魚(隣からまま=ご飯を借りてまで食べたいほどうまいというのがその名の由来)を焼いた「焼ままかりの酢漬け」が大好きなのだが、初めて食べて衝撃を受けたのがデミカツ丼である。
発祥の店「野村」は一見料亭のような高級感漂う店構え。こちらのデミカツ丼はご飯の上に温キャベツが敷かれ、濃厚なデミグラスソースが、数切れに切られたトンカツの上にたっぷりとかかかっている。昭和初期に開店し、初代が作ったこの濃厚なデミグラスソースは帝国ホテル仕込みなのだとか。これがスタンダートと思うと実はそうでもない。岡山のデミカツ丼は大変バリエーションが豊富なのである。
意外に多いのがラーメンと一緒に提供される店。実は岡山は隠れたラーメンどころで、魚介ダシのきいたラーメンの名店も多い。人気店の一つ「だて」ではラーメンとカツ丼しかメニューにない。昔は半丼も半ラーメンもなかったため、両方食べたいときには2人前を頼んで平らげたものだが、今はハーフサイズがあるらしい。
また、魚介の風味が強烈にきいた個性的なラーメンを出し、メニュー豊富な人気店「やまと」のカツ丼はデミソースも和風のテイスト。店の場所が近いだけに、「だて」と「やまと」は人気を二分している。個人的にも甲乙つけがたく、お昼時には行列が短いほうに行くこともたびたびあった。
デミグラスソース・ケチャップなどの赤系ソースのカツ丼は少数派だが、洋食系の平皿に盛られるタイプは全国に複数ある。地域に広がる丼としては土岐市の「てりカツ丼」くらいしか見当たらないが、平皿にのったものとしては、長岡の「洋風カツ丼」、加古川の「カツめし」なども赤系ソースのカツメニューだ。
白飯の代わりに炒め飯を使うメニューとしては根室の「エスカロップ」、長崎の「トルコライス」などもある。日本人はカツが好きなのだろう。トンカツを活用したメニューは、福井の「ボルガライス」、大阪の「トルコライス」、釧路の「スパカツ」などかなりのバリエーションがあって実に面白い。岡山のデミカツ丼は、全国的にもっと注目されてもいいメニューだ。
創業昭和6年の老舗デミカツ丼元祖のお店で、濃厚なソースが癖になる。ゆでキャベツとの相性も良い。居心地の良い空間で、卵とじカツ丼との食べ比べも可能。
カツ丼とラーメンが主力の人気店。デミグラスソースはさらっとしているが、味わい深い。生卵がついてくるので、混ぜ方はお店に聞いて食べよう。
沖縄といえばタコライスや麺ではないちゃんぽんなど独特なご飯料理があるが、沖縄のカツ丼もちょっと変わっている。そもそも見た目は豪快そのもの。一般的に食堂のメニューはでか盛りだが、カツ丼も量がすごい。さらに普通は具が玉ネギか長ネギくらいだが、野菜がたっぷりと入っている。ハイカロリーだがヘルシー……かなぁ。