『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

華々しいデビューを飾ったアイドル的列車カタログ JR名車両列伝1 JRスタートから24年。従来の国鉄の殻を破り、斬新なスタイルやサービスでデビューした当時のJR車両たちも、世代交代の時期を迎え、新型車へのバトンタッチ、リニューアルなどが行なわれています。最新車両の礎にもなった当時の名車両の数々にスポットを当て、歴史を振り返ってみましょう。

16m級車体のキハ100系 20m級車体の急行用キハ110系デビュー

 老朽化した旧型気動車の取り替えとローカル線の近代化、サービス改善のため、平成2年にデビューしたのがキハ100・110系気動車です。車体、機関など在来車両の概念を一新して製造されたまったく新しいタイプの気動車です。

 キハ100系は16m級車体のセミクロスシート車。冷房を備え、側窓は複層ガラスの連続固定窓、側扉は密閉性の高いプラグドアが採用されています。機関はコマツ、カミンズ製の直接噴射式(過給器・吸気冷却器付き330PS)、ブレーキは機関、コンバーターブレーキ併用の応答性のよい電気指令式となり、飛躍的に運転性能が高まりました。カラーリングはグリーンを基調にしたとても明るいもので、それまでの気動車のイメージが大きく変わりました。

 キハ110系は20m級車体の回転クロスシート車で、急行列車用として誕生しました。機関はカミンズ、新潟製で420PSと出力の高いものが搭載されています。蛍光灯グローブも設けられ、特急車並みの車内設備を誇りましたが、急行列車そのものが衰退傾向にあり、増備は11両に留まりました。また、キハ110系は急行用としての最後の新製車両にもなりました。

ローカル線を次々に近代化 ロングシートのキハ101形も登場

 キハ100系は平成2年3月から北上線に、キハ110系は釜石線の急行「陸中」(現在は快速「はまゆり」)に投入され大変に好評でした。そこで量産されることになり、翌年にはキハ100系が釜石線、山田線、大船渡線に続々と投入されます。キハ110系は、車内をセミクロスシートの一般形に改めた100番台車が登場。磐越東線で運転を開始。これも小海線、磐越西線と続々と投入され、平成4年には水郡線にも入線します。

 翌年には側扉を引戸にした200番台車(片運転台のキハ111・112形は150番台)が製造され、磐越西線、羽越本線、八高線、水郡線に入線。さらにロングシートの16m級車体のキハ101形もデビュー。左沢(あてらざわ)線に専用で使用され、キハ100・110系はローカル線を一気に近代化させ、量産が行なわれます。飯山線、陸羽東線と使用線区は増え、古い国鉄形気動車で時代遅れの感のあったJR東日本のローカル線は、爽やかで明るいイメージになりました。

 しかし、近年ではE130形・E200形といった最新のハイブリッド気動車の登場により、世代交代が始まり、小海線の一部、水郡線の全車が置き換えられ、代わって同線のキハ110系は花輪線、気仙沼線に転じました。

 キハ100・110系の力強く軽快な走り、心地よい車内設備、美しいデザインの近代的な外観はローカル線の将来を明るいものに塗り替えました。それらコンセプトを次世代車が受け継ぎ、末永く走り続けていくことを期待します。

磐越東線を行くキハ110系100番台。グリーン基調の明るい車体は風景によく調和する

回転リクライニングシートのキハ110系0番台。快速「はまゆり」などに運用される

キハ110系100番台はセミクロスシートの一般形。混雑時に対応した2+1列配置

北上線で運転中のキハ100系。豪雪地帯、寒冷地に関わらず幅広い線区で活躍する

 

文・写真:斉木実 写真協力:裏辺研究所(リン)

※掲載されているデータは平成22年5月現在のものです。

前のページへ

バックナンバー

このページのトップへ