平成3年3月、成田空港駅開業と同時に、空港アクセス特急としてデビューしたのが253系「成田エクスプレス」です。池袋・新宿・横浜~成田空港間を短時間で結び、「価値ある移動空間」をコンセプトにした専用車両が投入されました。
精悍な赤と黒、白、グレーのカラーリングに濃いスモークガラスが連続する大胆な車体デザイン。車内は航空機利用者を考慮し、荷物スペースがゆったり取られています。グリーン車は1+1配置(0番台)または1+2の千鳥配置(100番台)の開放室、4人用個室で構成され、ミニバー(現在は廃止)も備えていました。普通車ではボックス式シートが設置され、荷物携行客に対応しています。
各車両の出入口付近には、スーツケースや大型荷物が収納できる荷物棚があり、荷棚は航空機と同じ開閉式のハットラックタイプが採用されました。外国人の利用者にも対応して、バイリンガルの情報案内装置も設けられています。
制御方式は界磁添加励磁制御を採用、最高速度は130km/hを誇ります。ブレーキ方式は電力回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキで、抑速ブレーキ、耐雪ブレーキを備えています。
253系特急「成田エクスプレス」。その姿、その走りは多大なインパクトを与え、それまで不便であった成田空港へのアクセス特急として大活躍をします。新宿・横浜方面から列車は東京駅で分割併合が行なわれ、自動解結装置が先頭車に取り付けられたほか、自動幌装置も設けられました。
編成は3両編成が基本でしたが、後に中間車が増備されて6両編成が現れました。9両、12両など多様な編成が見られ、運転区間も大船・大宮・高尾と乗り入れが行なわれ、さらに便利になります。
253系は平成14年製造車で変更が行なわれ、車内では普通車がボックスシートから回転リクライニングシートになります。グリーン車では2+1配置となりました。同年から6両編成の従来グリーン車も全て2+1配置に改め、翌年には、普通車は従来車のボックスシートが集団見合い式のクロスシートに変更されました。また、3両編成のグリーン車開放室の普通車化も行なわれました。
後継車のE259系がデビューし、253系「成田エクスプレス」は平成22年6月30日をもって退役することになりました。しかし、赤と黒の車体、躍動的なN`EXのロゴなど、253系が築いたよきコンセプトはE259系がそのまま受け継いでいます。