『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
ひと昔前のニッポンならどこに行ってもこんな風景が見られたんだろうなぁ……。秋の日が差す縁側に腰かけて、茅葺き屋根の家々とその向こうにそびえる富士山を眺めながらしみじみ旅情に浸った。
今日訪れたのは富士五湖の中で4番目の大きさを持つ西湖の北西岸に広がる「西湖(さいこ)いやしの里 根場(ねんば)」。湖と富士山を仰ぎ見る斜面に20棟の茅葺き民家が再現され、四季移り変わる自然の景観とともに日本の原風景が感じられるところだ。それぞれの家は体験施設や食事処、資料館になっているので、芸術創作意欲や食欲が高まる秋にはもってこいの観光スポットといえる。
「集落を訪れたらまず見てほしいのがこちらです」と副所長の山中佳夫さんに案内してもらった「砂防資料館」から見学。「この根場地区にはかつて茅葺き民家が並ぶ美しい集落がありましたが、昭和41年の台風によって発生した大規模な土石流によって集落ごと消滅してしまったんです」と山中さん。その時この地を襲った土石流の凄まじさを貴重な写真や当時の新聞記事で解説するのがこの資料館だ。「災害から40数年を経て蘇ったのがこのいやしの里です。なぜこの場所にこんな施設があるのか、まずそれを知っていただき、土石流の怖さと防災の大切さも学んでもらえたら」と話してくれた。
集落の歴史を学んだら、次は体験三昧と行こう。まずは「陶と香のかやぬま」へ。ここでは手びねり陶芸や匂袋作り、練香(ねりこう)作りが楽しめる。選んだのは珍しい練香体験。香木の粉末と梅酢を合わせたお香の素を練って指で丸めるという約30分の体験だ。店主の萱沼正子さんの指導のもと、練って丸めていくと丸薬のような真っ黒な粒が完成した。「まるで鹿のフンみたいでしょ。でもこれを火に近づけるといい香りがして癒されるわよ~」の言葉に萱沼さんと顔を見合わせて笑った。
吊るし雛や袋小物作り体験ができる「ちりめん細工・つるしかざり」、本格的な手漉(す)き和紙作りが人気の「紙屋 逆手山房」、山梨の伝統工芸品・大石紬(おおいしつむぎ)の紹介と繭人形作りができる「大石紬と布の館」と歩く。お腹が減ったら、地元食材を使った山梨名物ほうとうが食べられる「和膳屋 彩雲」、石碾(び)き手打ちそば「松扇(しょうせん)」などの食事処へ。
どの体験施設や食事処にも観光客とお店の人の笑いがあふれ、みんな心から癒されているんだなぁと実感した。このあふれる笑顔こそ、災害で犠牲になった人たちへの何よりの供養なのだろう。コスモスやススキが秋の深まりを感じさせる中、いつの間にか自分も満面の笑みをたたえていた。
人気の練香作り体験は30分~1500円。京都で陶芸を学んだ萱沼正子さんの作品も展示・販売している。
陶芸家の萱沼正子さんが店主を務める店。好きな布袋を選び、好みのお香を調合して作る匂袋作り(15分~、1000円)のほか、手びねり陶芸(30分~、送料別3000円)、練香作り(30分~、1500円)が楽しめる。丁寧に指導してくれるので、初心者でも安心。
●TEL.0555-72-8918
戦国武将を気取って記念撮影。変身体験は外国人に大人気。
2階では甲州を治めた武田信玄の資料を常設展示している。
集落の中でもひときわ高い火の見櫓が目印。戦国武者の鎧兜や忍者、和服、股旅姿などに変身する体験が人気を呼んでいる。1回500円で、9:00~16:20(12~2月は9:30~15:50)。2階には武田信玄関係の歴史資料や甲冑、合戦図などを展示している。
●TEL.0555-20-4677(西湖いやしの里根場総合案内所)
災害の恐怖と防災の必要性をわかりやすく伝える資料館。
美しい茅葺き集落を一瞬のうちに消滅させた昭和41年の台風災害を伝える資料館。当時の生々しい写真や事故の大きさを物語る新聞記事、防災の心構えなどをわかりやすく展示している。2階の映像コーナーでは、災害に関するビデオを常時上映している。
●TEL.0555-20-4677(西湖いやしの里根場総合案内所)
ほうとう鍋に炊き込みご飯、漬物、総菜、デザートが付く「おもてなし御膳 大満足」1500円。まるで実家に帰ったように温かく迎えてくれるスタッフ。
主に地元でとれる食材を使い、手作りの郷土料理が味わえる食事処。メインの料理に添えられる漬物や副菜も自家製だ。山梨名物ほうとう鍋や麦とろ御膳、素朴な味わいの炊き込みご飯御膳は各1000円。濃厚ごまプリン400円やクリーム白玉あんみつ700円など甘味も揃う。
●TEL.080-8477-1670