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国際友好記念図書館(上)や旧門司税関など、歴史を伝える建物が「門司港レトロ」として整備されたのが平成7年。今年で20周年
鹿児島駅から肥薩おれんじ鉄道を挟んで281・6km、95駅の鹿児島本線終着・門司港駅。駅を出ると、左手に関門海峡。青い海を大型船が悠々と進む。
明治22年(1889)に国の特別輸出港に指定。明治24年に門司駅(現門司港駅)が開業して九州鉄道の起点になると、陸海の玄関口に大手企業や官庁が集積し、門司港は一気に華やいだ。
まずは九州鉄道の本社社屋、現在は九州鉄道記念館。ゲートには宇都宮副館長が「九州の始まりの駅に、役目を終えてやって来た看板娘に息子」と呼ぶ、九州ゆかりの懐かしい電車がずらり。しばしタイムトリップをどうぞ。
門司港の町は映画館や芝居小屋で賑わい、社交場として料亭も栄えた。その代表格が三宜楼(さんきろう)。「海賊とよばれた男」出光興産創業者の出光佐三も常客で、政財界の要人や文化人も多く訪れた。高い天井が醸す豪華さ、気品ある意匠。かの一流人と同じ空間で食事ができるとは、なんたる贅沢か。一度廃業したが地元有志の保存活動で蘇ったと聞けば、いっそう味わいも深まる。
門司ゆかりの作家、林芙美子も港町繁栄の象徴だ、というと強引だろうか。「賑わう門司港に仕事を求めて各地から労働者や商人が集まり、その中に四国生まれの行商人だった芙美子の父親がいました」と話すのは、林芙美子記念室を監修している北九州市立文学館の今川英子館長。門司生まれの説もあり、幼少期には下関、石炭景気に沸く若松などへ移り住んだ。自由に生き、市井の人々を書き続けた彼女の原点は? 記念室で探ってみよう。
明治36年(1903)生まれ。昭和5年に『放浪記』で流行作家に。昭和26年に47歳で急逝。写真は昭和7年頃、東京下落合の和様式洋館にて。
最後に港へ。旧大連航路上屋は国際ターミナルだった。100mはあるという2階のデッキから関門海峡を一望。かつては岸壁に何隻もの大型客船が接岸したというからすごい。
海峡沿いをレトロエリアの船だまりまで歩く。コンテナのない時代、船荷の積み卸しは人海戦術で、船だまりには黒崎や宇部の港へ荷を運ぶ船への艀(はしけ)がぎっしり停泊していたという。形に残らない歴史も、華やかな港を支えた。
いつしか夕暮れ時。夕日を浴びて船が行き交う海景色を堪能したら、夜景の門司港を見てから帰ろうか。
明治24年(1891)に建てられた旧九州鉄道本社を本館に、九州鉄道の歴史を楽しみながら学べる記念館。九州ゆかりの車両9台が並ぶ展示場や運転体験施設は、大人も夢中に。
時間:9:00~17:00
休:第2水曜(祝日の場合は翌日) 300円
住所:福岡県北九州市門司区清滝2-3-29
アクセス:JR鹿児島本線門司港駅から徒歩3分
TEL.093-322-1006
百畳間と呼ばれる大広間、眺望が見事な3階の俳句の間、下地窓や欄間の意匠など、見どころがたくさん。展示室には当時の器や芸妓の衣装、訪れた文化人の名刺などが展示され、往時をしのぶことができる。
時間:10:00~17:00
休:月曜(祝日の場合は翌日) 展示室は見学自由
住所:福岡県北九州市門司区清滝3-6-8
アクセス:JR鹿児島本線門司港駅から徒歩8分
TEL.093-321-2651
北九州市が「林芙美子文学賞」を創設したのを機に展示室数を増やし、2月28日にリニューアルオープン。記念室は三井物産の接客・宿泊施設だった旧門司三井倶楽部2階にある。生誕から尾道時代、『放浪記』誕生まで、渡欧、戦争を挟んでの活動など、波瀾万丈だった芙美子の生涯を俯瞰できる。北九州市立文学館所蔵の『骨』の原稿(写真右下)も。
時間:9:00~17:00
休:なし 2階のみ100円
住所:福岡県北九州市門司区港町7-1 旧門司三井倶楽部2階
アクセス:JR鹿児島本線門司港駅から徒歩3分
TEL.093-321-4151
昭和4年、門司税関1号上屋として建てられた。1階に港の歴史や門司港に寄港した客船に関する展示や休憩スペース、昭和10年門司生まれの松永武さんが収集した映画・芸能関連の資料を展示する松永文庫がある。国会議事堂を手掛けた大熊喜邦の設計で、アール・デコ様式が特徴。上屋前の道端に立つ係船柱(写真右下)は、昔はここまでが岸壁だったことを表す。
時間:9:00~17:00
休:年4回休館日あり 無料
住所:福岡県北九州市門司区西海岸1-3-5
アクセス:JR鹿児島本線門司港駅から徒歩5分
TEL.093-322-5020(松永文庫は093-331-8013)
門司港観光案内所 TEL.093-321-6110
交通:JR鹿児島本線門司港駅下車
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