『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
1.酔心山根本店の『酔心』と『ぶな(木偏に無と書く)のしずく』 2.竹原の町並み保存地区内にある「小笹屋酒の資料館」では、竹鶴酒造の銘酒を試飲できる 3.同じく竹原の「藤井酒造酒蔵交流館」。こちらも試飲が可能 4.中尾酒造の『誠鏡』と『誠鏡 幻赤箱』 5.湯坂温泉郷のホテル賀茂川荘の月替わり四季会席 6.杜氏の確かな技が銘酒を醸す(写真は中尾醸造)
三原駅から徒歩10分、横山大観が愛飲した『酔心(すいしん)』を醸す酔心山根本店から、旅は始まる。さっそく試飲させてもらったのは、ブナの原生林から湧く超軟水で仕込んだ純米酒『酔心 ぶな(木偏に無と書く)のしずく』。盃の向こうで微笑む写真の大観先生に献杯! 「旨い酒と桜を存分に楽しんでおいで」と笑ってくれた、ような気がした。
広島市と三原市を結ぶJR呉線。その中でも三原~呉(広)間は、特に風光明媚な車窓風景から“瀬戸内さざなみ線”の愛称で親しまれている。三原駅を出ると、やがて瀬戸内海の多島海美が広がった。約2000本の桜が咲く筆影山(ふでかげやま)を仰ぎ見る須波(すなみ)駅を過ぎ、ここから海際を走る忠海(ただのうみ)駅までの間が呉線一のハイライト。うららかな春の陽に輝く瀬戸内海が車窓に広がり、そこに浮かぶ島々が目の高さに眺められる。須波駅や忠海駅からは温泉に足を延ばすのもいい。日本有数の高濃度を誇る美肌の湯「みはらし温泉」や、船でしかいけない大久野島に湧く「せと温泉」。こちらでは温泉に浸かりながら瀬戸内の絶景が楽しめるからだ。
忠海駅から安芸長浜駅、大乗(おおのり)駅と走り、長いトンネルを抜けると竹原駅に到着した。15分ほど歩いて「竹原町並み保存地区」へ。「遠いところをようこそ」と迎えてくれたのは享保18年(1733)から酒造りを営んでいる竹鶴酒造の竹鶴壽夫(ひさお)社長。築240年の蔵に併設された小笹屋酒の資料館で、伝統の生もと造り純米酒を一献。飲みごたえのある、これぞ日本酒という味わいが口いっぱいに広がった。
格子造りの家が並ぶ竹原で3蔵をハシゴ。杜氏渾身の美酒で火照った頬に、潮香を含んだ春風が心地よかった。
クルーザーをイメージしたマリンブルーの車体が印象的な観光列車で、広島(一部呉)~三原間を1日2往復している。乗車券のほかに別途座席指定券(大人510円)が必要な指定席車両と、普通運賃だけで利用できる自由席車両の2両編成。指定席車両にはテーブル付きのクロスシートとソファシートがあり、くつろいで瀬戸内海の多島海美を楽しめる造り。一角には海を望むカウンター席(フリーシート)も用意されている。
※掲載されているデータは平成22年3月現在のものです。