『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
春の朝、7時39分。観光客がまだ来ない静かな錦帯橋と川沿いの桜。とっておきのひと時だ
山陽新幹線の100系「こだま」。フルムーン世代にはお馴染みの100系も引退の時が近い
尾道の千光寺公園も「日本さくら名所100選」の一つ。周辺の坂の町に咲く桜も魅力的だ
鞆の港を見守るように咲く桜。穏やかな鞆の浦の海は箏曲『春の海』のモチーフになった
醤油味で平打ち麺、背脂が浮かんだ尾道ラーメン。思ったよりあっさりとして食べやすい
尾道名物の「アイスモナカ」。散歩の途中、ふいに食べたくなるとっておきのデザート
「春眠暁を覚えず」ではないが、岩国で朝寝坊するのはもったいない。早起きして観光客がやってくる前の静かな錦帯橋をひと散歩。錦川のゆるやかな流れに朝日がさし、桜もキラキラと輝く。日本らしい情緒に満ちた風景に出会えるのも宿泊してこそ。錦帯橋の朝は格別に爽快だ。
新岩国11時12分発「こだま738号」に乗れば、この列車はフルムーン世代にもお馴染みの100系新幹線。500系や700系が山陽新幹線「こだま」の主流となった今、近い将来、引退していくのだろう。光陰矢のごとし、夫婦の旅の思い出もたくさん残しておこう。
新尾道まではちょうど1時間、駅からは路線バスで観光へ。林芙美子ゆかりの尾道、おすすめはJR尾道駅あたりから桜名所の千光寺公園まで、尾道水道を行き交う渡船や桜を眺めつつの坂道めぐり。あちこち歩いてお腹が減れば、空腹は最高のスパイスとばかり尾道ラーメンの店へ。食後のデザートには名物の「アイスモナカ」が待っている。
一方、波穏やかな瀬戸の港、鞆の浦へ向かうアレンジも。その場合、「こだま738号」を新尾道で下車せず、次の福山(12時21分着)で下車。駅から路線バスで30分、もう鞆(とも)の浦に着く。宮城道雄の箏曲『春の海』のモチーフとなった鞆の浦、桜咲く医王寺界隈から眺める港景色はいかにも瀬戸内らしい風情を感じさせる。
旅の3日目は、お好みで尾道または鞆の浦に宿泊を。鞆の浦で食べたシャコの酢の物も美味だった。
3日目●乗車距離:124.3km 運賃合計2人分(通常):1万260円
【各区間ごとの運賃と乗車距離】
新岩国~新尾道:@5130円(乗2210円 特指2920円) 乗車距離124.3km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるkm数
※乗:乗車券 特グ:特急、グリーン料金
尾道、鞆の浦へ<4泊5日コース 3日目> (尾道または鞆の浦泊) |
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3日目 | 発着駅 | 時間 | メモ |
早起きして朝の錦帯橋、夫婦散歩 | |||
新岩国 発 | 11:12 | 山陽新幹線【こだま738号】指定席(100系) | |
新尾道 着 | 12:12 | 尾道の千光寺公園や、鞆の浦などでお花見 |
観光の問合せ
■尾道:尾道観光協会 TEL.0848-37-9736
■鞆の浦:福山市観光協会 TEL.084-926-2649
日本全国を旅行できるフルムーンパス。だから満開の桜を追いかける旅もOK。ただいつどこへ出かければいいのか判断するのがとても難しい。では、プラン作りのコツを。旅行予定が4月上旬であれば、一般的に北の桜はなかなか満開にはならないし、また、4月下旬であれば南や西の桜は散っているものも多いだろう。旅行予定期間に合わせ、大まかな方向性を決め、思い浮かぶままに行ってみたい都市をリストアップする。さらに、優先度の高い順に並べ替えを。
インターネット上では各地の桜の開花状況を知らせるサイトが多数あり、グリーン車の空席状況もわかる。あとは満開状況とリストを見比べ、グリーン車で行けるところへ行くだけだ。事前にスケジュールを固めず、その時その時、満開の街へ行くフルムーン旅行も面白いと思う。
桜は満開に限るという満開派の方は、その日、満開の都市へフルムーンパスで旅しよう
岡山駅前に立つ桃太郎一行の像。乗り換えの時間を利用して、ここで記念写真はいかが?
新大阪から京都へ向かい、車窓右手に見える東寺の五重塔。今春は東寺の桜が注目の的に
京野菜の漬け物寿司もある京都。赤かぶ(京野菜)の握り寿司もほんのり桜色で春らしい
早咲きの桜もあれば遅咲きも。哲学の道に咲くこの八重桜は見頃が4月中旬~下旬あたり
春真っ盛りの嵐山。咲き誇る桜のさまは、まるで山全体がニコニコと微笑んでいるよう
京都の宿で食べた寄せ鍋。春とはいえ肌寒くなる夜、鍋料理なら身体もポカポカに温まる
旅の4日目は、いよいよ京都へ向かう。見どころいっぱいの古都、京都。桜の名所も数知れず、お花見フルムーンをはじめ、いつ訪ねても新しい発見や感動がある。
新尾道10時12分発「こだま734号」に乗車。鞆の浦で宿泊した場合は福山(10時25分発)から乗車。「こだま734号」はグリーン車もある堂々16両編成、岡山には10時53分に着く。乗り継ぎの「ひかり472号」(11時27分発)まで少々時間もあり、岡山駅前に立つ桃太郎一行の像を背に記念写真をパチリ。鬼退治に出かけた桃太郎といえば「きびだんご」が思い浮かぶ。駅で買い求め、京都へ行くグリーン車で頬張ればホッと一息。
「ひかり472号」は進行方向右側に東寺の五重塔を眺め、12時54分京都着。その東寺にも桜は咲いている。今年はJR東海の「そうだ 京都、行こう。」京都キャンペーンにも登場。東寺は京都駅から歩いて15分くらいと近く、大勢の人が美しい桜に会いに来ることだろう。
思い思いに楽しむ京都の桜。早咲きもあれば遅咲きも。京都では4月上旬から下旬まで、さまざまな桜が咲き競う。円山公園に平安神宮、二条城に仁和寺、嵐山に哲学の道、本当にどこへ出かけても素晴らしいの一言。遠く平安時代から桜を愛でてきた京都、桜との係わりが深く、この都に咲く桜は他のどこの桜よりも優雅な感じがする。
夜、古都の桜は妖艶さを一段と増す。京都市内に宿をとり、高台寺など夜桜の名所にも足を運んでみたい。
4日目●乗車距離:297.7km 運賃合計2人分(通常):3万40円
【各区間ごとの運賃と乗車距離】
新尾道~岡山:@4200円(乗1280円 特グ2920円) 乗車距離78.4km
岡山~京都:@1万820円(乗3570円 特グ7250円) 乗車距離219.3km
※ 通常期の場合 ※ 距離は運賃計算に用いるキロ数
※ 乗:乗車券 特グ:特急、グリーン料金
※路線バス分は含みません
京都へ<4泊5日コース 4日目>(京都泊) | |||
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4日目 | 発着駅 | 時間 | メモ |
新尾道 発 | 10:12 | 山陽新幹線【こだま734号】グリーン車(300系または700系) | |
岡山 着 | 10:53 | 乗り換え | |
岡山 発 | 11:27 | 東海道・山陽新幹線【ひかり472号】グリーン車(700系) | |
京都 着 | 12:54 | 東寺をはじめ数多くの桜名所でお花見 |
観光の問合せ
■京都:京都市観光協会 TEL.075-752-0227
日本には名だたる桜、有名桜がある。福島県三春の「滝桜」、岐阜県本巣の「淡墨桜」、山梨県北杜市の「神代桜」などなど。堂々と咲く一本桜に会いたいと思う人はたくさんいるのだろう。それにしても人出がすごい。聞くところでは三春の「滝桜」は約30万人(2010年)、岐阜の「淡墨桜」は約20万人(同)だそうだ。しかし、これでは花見に行ったのか“人見”に行ったのかわからなくなってしまいそう。できればあまり人が多くない場所で静かに桜と対面したい。
日本には名もないものの堂々とした桜や、さほど有名ではないものの見事な枝ぶりの桜も多い。これらの桜だって有名桜に負けないほど美しく、しかも人出が少ない。それぞれの夫婦に合ったお気に入りの桜を探し、ゆっくりと眺めてほしい。
何十万人も訪れる有名な桜もあれば、ひっそり咲く桜も。静かに桜と語り合う時間も素敵だ
特急「サンダーバード」はどこか雷鳥に似た顔つき。京都から金沢までは2時間20分ほど
金沢の台所、近江町市場に立ち寄る。エビやカニなどなど、豊かな北陸の幸がいっぱい
北陸地方で食べておきたい「バイ貝」の寿司。ほどよい歯ごたえと旨味がたまりません
金沢をゆるやかに流れる浅野川は女川とも呼ばれる。川べりには桜が艶やかに咲いていた
浅野川沿いに歩くと散り桜のカーペットに猫がひょっこり乗っていた。桜と猫はよく似合う
餅をあんこでくるんだ「あんころ」は北陸地方各地にある。金沢でもおやつは「あんころ」
九州の桜から始まり、山陽・瀬戸内、そして、京都と訪ねたお花見フルムーン。旅の最終日は金沢に寄り道し、北陸の桜を眺めて帰路につく。
京都9時40分発の特急「サンダーバード9号」で金沢12時1分着。この列車なら金沢でランチを食べて観光ができ、時間的にもちょうどよい。
金沢の台所、近江町市場。駅から歩いて15分ほどだが、100円バスも駅から出ていてアクセス抜群。北陸の幸が一堂に並ぶ市場では海鮮丼やお寿司も味わえる。エビやカニが有名な金沢、しかし、貝類、特にバイ貝も負けずとおいしい。刺身や寿司で口にすれば、ほどよい歯ごたえと旨味に大満足。
食後は金沢お花見散歩。定番中の定番、兼六園や金沢城へ行くのも一興、また、女川と呼ばれる浅野川あたりの桜も金沢らしい。加賀美人に加賀友禅、金沢に女性的な印象を持たれる方も多いかもしれないが、ゆったりとした浅野川の流れにあでやかな桜、たまたま姿を見せた猫さえも桜景色になじんでいた。
夕刻、金沢17時48分発の特急「しらさぎ64号」で米原へ。米原では「ひかり530号」に乗り換えて終着、東京を目指す。時間にかなり余裕を持たせ、ゆとりある旅を続けてみたが、なんと列島を3200kmも駆け抜けていた。これも高速で快適な新幹線とグリーン車があってこそ。フルムーンパスがなければできない旅だ。
旅には旅人のみならず広く日本を元気にする力がある。桜咲く日本をめぐる、お花見フルムーンにさあ出かけよう。
5日目●乗車距離:847.3km 運賃合計2人分(通常):6万9220円
【各区間ごとの運賃と乗車距離】
京都~金沢:@1万200円(乗3890円 特グ6310円) 乗車距離224.8km
金沢~米原:@7710円(乗2940円 特グ4770円) 乗車距離176.6km
米原~東京:@1万6700円(乗7140円 特グ9560円) 乗車距離445.9km
※ 通常期の場合 ※ 距離は運賃計算に用いるキロ数
※ 乗:乗車券 特グ:特急、グリーン料金
金沢で花見をして帰京<4泊5日コース 5日目> | |||
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5日目 | 発着駅 | 時間 | メモ |
京都 発 | 9:40 | 特急【サンダーバード9号】グリーン車 | |
金沢 着 | 12:01 | ランチの後は、浅野川などでお花見 | |
金沢 発 | 17:48 | 特急【しらさぎ64号】グリーン車 | |
米原 着 | 19:44 | 新幹線に乗り換え | |
米原 発 | 19:54 | 東海道新幹線【ひかり530号】グリーン車(300系) | |
東京 着 | 22:10 | お花見フルムーン2011、旅の終わり |
観光の問合せ
■金沢:金沢市観光協会 TEL.076-232-5555
有効期間が異なる3タイプがあるフルムーンパス。5日間用が8万500円、7日間用が9万9900円、そして、最も有効期間が長い12日間用が12万4400円だ。ここにご注目。12日間用は5日間用2部(計10日間に)よりも4万円近く安く、5日間パスと7日間パスの合計(計12日間に)よりも6万円近く安くなる。12日間パスを活用してみてはどうだろう。週末しか時間がとれなくとも、12日間パスなら週末を2回含めることができ、日帰りで東京から京都へグリーン車で往復する場合、夫婦で7万1440円、土日2回分計4回往復すると、28万5760円、なんと16万1360円もおトクになる。12日間パスなら、かなり広いエリアで桜の満開時期とも一致。桜前線と歩調を合わせ、自由自在な旅ができる。12日間パスをフルに活用して究極のお花見フルムーンをぜひ!
お花見には12日間用フルムーンパスの活用も効果的。これなら北も南も存分に楽しめる
<東京発5日間全体のスケジュール、金額、距離>
運賃総額:26万3340円 (JR運賃総額26万3340円)
総乗車距離:3261.3km
乗車倍率:3.27倍(JR運賃総額÷フルムーン5日間パス定価8万500円)
※金額は2名分合計、通常期で算出
※運賃計算キロは、JR東日本「えきねっと 乗換・運賃案内」で表示されるものです
写真家、パズル作家。日本のすべての都道府県を夫婦で3巡している。これまでに80日以上「フルムーン旅行」をし、JR路線も約8万キロ乗車。著書(夫婦の共著)は写真集『猫ヶ島』、『わらいねこ』をはじめ、『旅してでも食べたい 地もの旬もの回転寿司』など。また、英語クロスワードパズルを新聞に17年に渡って連載。●ホームページ http://www.aizawa22.com
桜の錦帯橋にて“夫婦撮り”
文・撮影:相澤秀仁&相澤京子
※掲載されているデータは平成23年3月現在のものです。
※運賃は「JR時刻表」4月号を使用。到着時刻等、一部時刻未掲載のものは、えきねっと「乗換・運賃案内」で表示の時刻を使用。通常期の「2011年4月11日(月)」をモデルに算出しました。