『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。

フルムーン夫婦グリーンパスで行く新幹線の旅 列島縦断6,000kmウルトラ弾丸フルムーン ~JR最南端の有人駅、山川から最北端の稚内へ~

  • 1日目 新幹線を乗り継ぎ 鹿児島は指宿へ
  • 2日目 「太平燕」を食べて 熊本から博多へ
  • 3日目 九州から北海道へ 列島縦断大旅行
  • 4日目 札幌から稚内へ 宗谷岬は日本最北
  • 5日目 札幌、函館を経由 「北斗星」で帰京

3日目 快適列車で楽々弾丸2,000km! 新幹線を乗り継いで、北海道へ 山陽新幹線[博多⇒新大阪]/東海道新幹線[新大阪⇒東京]/東北新幹線[東京⇒新青森]/奥羽本線・津軽線・津軽海峡線・函館本線・室蘭本線・千歳線[新青森⇒札幌]

  • 博多発新大阪行き「ひかりレールスター」。フルムーンパスで利用できる4人用個室が魅力

  • 「ひかりレールスター」4人用個室。テーブルも広く、人目を気にせずに駅弁も食べられる

  • 新幹線グリーン車で味わう駅弁「かしわめし」。かしわ(鶏肉)料理は北部九州ならでは

  • 新大阪駅で出発を待つ700系東海道新幹線。居心地のいいグリーン車でゆったり東京へ

  • 東北新幹線E2系「はやて」のグリーン車も乗り心地がいい。旅の疲れが消えていくようだ

  • かつて青函連絡船が発着した青森駅。余韻漂うホームから夜行急行「はまなす」が発車する

 旅の3日目もゆっくり起床。今夜は寝台車での車中泊、朝、シャワーを浴びて出発しよう。博多駅10時37分発「ひかり552号」レールスターに乗車。「さくら」のグリーン車もさることながら、レールスターの普通車4人用個室もいい。フルムーンパスなら夫婦で広々と使え、座面スライドにより足も伸ばせて、これまた楽ちんな旅ができる。「さくら」のグリーン車も、レールスターの個室も、フルムーンパスならお好みしだい。

 新大阪で東海道新幹線に乗り換え、東京着。東京駅にはエキナカ「グランスタ」があり、夕食を買い求め、東北新幹線ホームへ行こう。

 もし東京駅からそう遠くないところにお住まいなら、乗り継ぎ時間を活用して一時帰宅というアレンジも。自宅との往復時間を計算し、その分だけ早く博多を出発すればよい。たとえば博多8時41分発「ひかり546号」なら、新大阪で「ひかり470号」に乗り継ぎ東京14時40分着。東北新幹線「はやて177号」の出発時刻(17時28分)まで3時間弱も時間が作れる。一時帰宅できれば自宅の様子が確認でき、旅の荷物だって減らせる。東京駅よりも大宮駅が近ければ、「はやて177号」には大宮駅(17時54分発)で乗車を。

 E2系「はやて」グリーン車に身をゆだね新青森へ。在来線で一駅移動し、青森からは札幌行き急行「はまなす」B寝台車に乗る。個室ではないものの寝台で眠りにつけば、翌朝には北海道だ。列島を走り抜けた2000km、心配したほど身体は疲れなかったと思う。

3日目●乗車距離:2371.6km 運賃合計2人分:139,120円
【各区間ごとの運賃と乗車距離】
博多~新大阪:@14,590円(乗9,350円 特指5,240円) 乗車距離622.3km
新大阪~東京:@18,390円(乗8,510円 特グ9,880円) 乗車距離552.6km
東京~新青森:@20,860円(乗9,870円 特グ10,990円) 乗車距離713.7km
新青森~青森:@180円(乗180円) 乗車距離3.9km
青森~札幌:@15,540円(乗7,980円 急寝7,560円) 乗車距離479.1km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数

モデルコース

東京発5日間・後編 【旅の3日目】
九州から北海道へ、列島縦断大旅行
3日目 発着駅 時間 メモ
新大阪、東京、青森を経て札幌へ
(車中泊)
博多 発 10:37 山陽新幹線【ひかり552号レールスター】普通車4人用個室など
新大阪 着 13:21 個室で夫婦水入らずの山陽路
新大阪 発 13:40 東海道新幹線【ひかり474号】グリーン車
東京 着 16:40 エキナカ(グランスタなど)でお弁当類を買い求め、東北新幹線へ
東京 発 17:28 東北新幹線【はやて177号】グリーン車
新青森 着 21:28 在来線に乗り換え
新青森 発 21:38 普通列車
青森 着 21:44 飲みもの、夜食を買って、B寝台車へ
青森 発 22:42 急行【はまなす】B寝台、寝ながら翌朝、札幌へ
札幌 着 6:07 Good morning北海道!

駅コラム③ 九州新幹線全線開業、博多駅がもっと便利に

 九州を代表するターミナル、博多駅。九州新幹線鹿児島ルート全線開業にあわせ、新幹線コンコースもきれいになり、駅全体の印象もかなり変わった。

 新幹線改札口付近の「博多デイトス」には、「博多めん街道」(写真)や「博多ほろよい通り」があり、フルムーン旅行の際、つい博多ラーメンが食べたくなって吸い込まれてしまったが、九州最大級の駅ビル「JR博多シティ」も開業。ここは、デパートに大手雑貨店、それに専門店街「アミュプラザ博多」、さらには大きな書店やシネマコンプレックスも有し、充実の内容だ。旅行者の目線で見ても、駅であれこれできるのは本当に好都合。博多には天神、中洲といった繁華街もあり、博多駅地区ともども、これまで以上に盛りあがっていくと思う。

九州を代表するターミナル駅、博多。九州新幹線全線開業にあわせ駅も大きく変貌している

4日目 特急「スーパー宗谷」で行く稚内 最果て、宗谷岬は日本最北端の地 函館本線・宗谷本線[札幌⇒稚内]

  • 札幌から「スーパー宗谷1号」に乗って稚内へ。グリーン車は1号車にあり最高時速は130km!

  • 特急「スーパー宗谷1号」のグリーン車。革張りのシートが上質な旅の時間を演出する

  • 「スーパー宗谷1号」車窓に望む利尻富士。利尻はまさに「山が海に浮かんだような島」だ

  • ここが日本最北端の地、宗谷岬。稚内駅前ターミナルから路線バスで50分ほどのところ

  • 宗谷地方はホタテも名産。新鮮なホタテを目の前で焼いて味わう。ビールがすすむこと

  • 稚内の宿で食べたタラバガニ。身がしっかりと詰まっていてカニ独特の甘さがたまらない

 札幌駅到着の急行「はまなす」を下車して始まる旅の4日目。まだ朝6時を過ぎたあたり、稚内行き特急「スーパー宗谷1号」の出発時刻(7時48分)までは時間がある。札幌駅周辺で早朝より営業している店に立ち寄ったり、赤レンガの北海道庁旧本庁舎や有名な時計台、大通公園まで散策してみるのも一案だ。天気に恵まれれば、朝の散策でなおのこと気分爽快になるだろう。

 キハ261系気動車の特急「スーパー宗谷」は最高時速130km、札幌-稚内を約5時間で結んでいる。グリーン車は革張りの落ち着いたシートで雰囲気もよく、二度寝するうち稚内に近づく。晴天の日、進行方向左手に気になる山影が…。そう、山が海に浮かんでいると形容される利尻島(利尻富士)が車窓を飾ってくれる。

 日本最北端の駅、稚内。有人駅であり、現在、駅周辺が再開発の真っ最中。駅もこの春、新しくなった。「日本のてっぺん」と言われる稚内、なるほど日本地図を眺めると一番上にある。荷物を宿に預け、さらに北、日本最北端の地、宗谷岬に出かけよう。駅前のターミナルから路線バスで50分ほど、宗谷海峡を前にして立てば、はるばるJR日本最南端の有人駅、山川駅からやってきた旅程を思い、胸がいっぱいに!

 稚内・宗谷地方ではホタテも名物。ホタテ焼き、ホタテラーメンなどを食べてみたい。九州の味覚は九州で、北海道の味覚は北海道で。フルムーンパスの旅らしい至福の時間が流れていく。

 

4日目●乗車距離:396.2km 運賃合計2人分:27,320円
【各区間ごとの運賃と乗車距離】
札幌~稚内:@13,660円(乗7,140円 特グ6,520円) 乗車距離396.2km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数
※路線バス分は含みません

モデルコース

東京発5日間・後編 【旅の4日目】
札幌から稚内へ、宗谷岬は日本最北
4日目 発着駅 時間 メモ
日本最北端の稚内へ(稚内泊)
札幌 発 7:48 特急【スーパー宗谷1号】グリーン車
稚内 着 12:47 利尻富士を車窓に眺めつつ、日本最北端の駅、稚内へ
  宿に荷物を預け、路線バスで、宗谷岬へ
稚内駅前 発 13:45 稚内駅前ターミナルから宗谷バスに乗車
宗谷岬 着 14:31 宗谷岬まで運賃@1350円
  ここが日本最北端の地、宗谷岬
宗谷岬 発 15:08 駅に帰るバスは宗谷岬17:33発もあります
稚内駅前 着 16:00 稚内駅前ターミナル着、運賃@1350円
  ノシャップ岬で夕陽を眺め、宿へ、
宗谷バスは平成23年10月1日時刻改正予定。

旅のメモ

観光の問合せ
■稚内:稚内観光協会 TEL.0162-24-1216

駅コラム④ 北海道の大地にタワーそびえる札幌駅

 九州の博多駅も変貌をとげたが、北海道の札幌駅もすごい。生まれて初めて札幌駅に行った時はまだホームは地面にあったが、現在では高架になり、2003年には「JRタワー」が完成。38階建てのタワーには展望室やホテルもあり、札幌の街を一望できる。そして、駅ビルは、博多駅と同じく、ショッピング・エリアや食事処も充実、シネマコンプレックスもある。

 札幌駅は市営地下鉄とも接続しているが、JRの駅は「札幌駅」で地下鉄側は「さっぽろ駅」というのも面白い。ここで大きなニュースを一つ。札幌駅と大通公園が地下道で結ばれて、ぐっと便利に。冬寒い北海道、何度も雪道で滑って転んだが、地下道があると雪に慣れない旅行者も足元の心配が減って助かる。地下の活用が上手な札幌では、道内一のターミナル「札幌駅」からも目が離せない。

北海道最大のターミナル駅、札幌駅。駅ビル内には食事処も充実し、北の幸を堪能できる

5日目 北海道から「北斗星」で上野へ…… 長いようで短かった6,000kmの旅 宗谷本線・函館本線[稚内⇒札幌]/千歳線・室蘭本線・函館本線・津軽線・東北本線など[札幌⇒上野]

  • 札幌行き特急「スーパー宗谷2号」で食べた最北、稚内駅の駅弁、その名も「最北駅弁」

  • 札幌と稚内を最短4時間56分で結ぶ特急「スーパー宗谷」はキハ261系気動車を使用している

  • 北海道らしい筋子の握り寿司。札幌の人気店では自家製筋子醤油漬けが安価で食べられる

  • 札幌のシンボル、時計台。駅から歩いて10分ほどのところにあり、今も時を刻んでいる

  • 函館から乗車する上り寝台特急「北斗星」。この時間、食堂車ではパブタイムの営業中

  • 上野駅到着の寝台特急「北斗星」。新幹線を活用した「ぐるり日本6,000km」の旅が終わる

 稚内で朝を迎えた最終日。寝台特急「北斗星」2人用B寝台個室「デュエット」で東京、上野へ帰る。

 稚内から札幌へ行く特急は朝、昼、夕の3本あるが、朝の特急「スーパー宗谷2号」に乗らなければ「北斗星」に乗り継ぎができない。稚内7時10分発と早い分、旅のアレンジがいろいろでき、旭川で下車し話題の旭山動物園に出かけてみたり、小樽や札幌の観光をしてみたり。これらの場合、始発駅札幌で「北斗星」に乗車を。また、このプランのように札幌でランチにお寿司を食べ、函館に行くのもおすすめだ。

 夜景が美しい街、函館は市内に温泉が豊富。駅から市電で約20分の市営・谷地頭温泉は入浴料も420円と安く、旅行者にも人気、露天風呂もある。温泉でさっぱりして「北斗星」に乗ろう。函館、湯の川温泉には温泉家族風呂もある。札幌を一つ前の特急「北斗14号」(13時17分発)で函館(16時49分着)に移動し、湯の川温泉の家族風呂でゆっくりするのもいい。

 寝台特急「北斗星」の個室に揺られ、長いようで短かった旅を振り返るうちに眠ってしまい、列車は翌朝、終着駅、上野に到着する。

 夫婦の合計年齢が88歳以上で利用できるフルムーンパス。40代の若い夫婦もいれば50代、60代以上の夫婦もいる。どんなプランであれ、体調を優先し無理は禁物。

 南にも北にも行くこのプランなら、いつ出発しても季節の移ろいが感じられるだろう。急に寒くなっても大丈夫なよう、体温調節のしやすい服装をお忘れなく。

5日目●乗車距離:1611.1km 運賃合計2人分:100,780円
【各区間ごとの運賃と乗車距離】
稚内~札幌:@13,660円(乗7,140円 特グ6,520円) 乗車距離396.2km
札幌~函館:@12,080円(乗5,560円 特グ6,520円) 乗車距離318.7km
函館~上野:@24,650円(乗15,410円 特寝9,240円) 乗車距離896.2km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数
※青い森鉄道(距離121.9km、運賃等@3,770円)、IGRいわて銀河鉄道(距離82km、運賃等@2,790円)分を含む

モデルコース

東京発5日間・後編 【旅の5日目】
札幌、函館を経由、「北斗星」で帰京
5日目 発着駅 時間 メモ
札幌を経由して「北斗星」で上野へ
(車中泊)
稚内 発 7:10 特急【スーパー宗谷2号】グリーン車
札幌 着 12:06 稚内の駅弁を朝ごはんに食べ札幌着
  札幌で北海道の海の幸いっぱいのお寿司ランチを
札幌 発 14:52 特急【スーパー北斗16号】グリーン車
函館 着 18:09 噴火湾や大沼を眺めつつ函館着
  市営「谷地頭温泉」などで一風呂浴びて寝台列車へ
函館 発 21:48 寝台特急【北斗星】2人用B寝台個室「デュエット」
上野 着 9:38 ぐるっと日本6000kmの旅が終わる

旅のメモ

観光の問合せ
■札幌:札幌観光協会 TEL.011-211-3341
■函館:函館市観光案内所 TEL.0138-23-5440

駅コラム⑤ 青函連絡船の時代から旅情あふれる函館駅

 青函トンネルで本州と北海道が結ばれる以前、青函連絡船が函館と青森の間を行き来していた。その時代、函館駅が北海道の玄関となり、札幌、釧路、網走など道内各地へ向かう特急や急行列車が発着、早朝から深夜まで活気に満ちていた。現在の特急「スーパー宗谷」も当時は急行「宗谷」として、函館?稚内間をおよそ11時間かけて力走。函館駅の長くカーブしたホームには今もその余韻が感じられる。
 一方、駅舎は2003年に新しくなり、ツインクルプラザ(旅行センター)や函館市観光案内所など、駅の機能がわかりやすくまとめられ、モダンで使い勝手がよくなった。

 函館は「100万ドルの夜景」といわれるほど夜が美しい。函館駅も明かりがともる夕暮れ時、港町の風情とあいまってとてもロマンチックな佇まいを見せる。

青函連絡船の時代とは様変わりして新しくなった函館駅。今も独特の雰囲気に満ちている

<東京発5日間の運賃総額、JR総乗車距離>
JR運賃総額:384,420円 (2名分合計 通常期で算出)
※運賃総額-第3セクター分(2名分合計13,120円)
※JR総乗車距離6027.7km
※総乗車距離-第3セクター分(203.9km)
乗車倍率:4.77倍 (JR運賃総額÷フルムーン5日間パス定価80,500円)
※運賃計算キロは、JR東日本「えきねっと 乗換・運賃案内」で表示のものです

● 旅人(著者)紹介 相澤秀仁&相澤京子

写真家、パズル作家。日本のすべての都道府県を夫婦で3巡している。これまでに80日以上「フルムーン旅行」をし、JR路線も約80,000キロ乗車。著書(夫婦の共著)は写真集『猫ヶ島』、『わらいねこ』をはじめ、『旅してでも食べたい 地もの旬もの回転寿司』など。また、英語クロスワードパズルを新聞に17年に渡って連載。●ホームページ http://www.aizawa22.com

 

文・撮影:相澤秀仁&相澤京子
※掲載されているデータは平成23年9月11日現在のものです。
※JR時刻表9月号を使用。到着時刻等、一部時刻未掲載のものは、えきねっと「乗換・運賃案内」で表示の時刻を使用。
※運賃は通常期の平成23年9月11日をモデルに算出しました。

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