『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
常磐線の特急「スーパーひたち」、「フレッシュひたち」はフレッシュなE657系電車で運転
笠間稲荷神社の門前町、笠間。神社の参道、仲見世は各種縁起物やおみやげが売られている
大きな油揚げが乗った笠間名物、門前の「稲荷そば」。茨城県はそばの産地としても名高い
陶器特有の温かみがある笠間焼の湯呑み。笠間のギャラリーで出会い購入。お気に入りです
笠間からの帰り道、新幹線で仙台に行って夕食を。“幻”といわれるブドウエビは絶品でした
E5系「はやて」で東京に戻る。電動レッグレストや読書灯もあるグリーン席は乗り心地抜群
ついつい納豆が思い浮かぶ茨城県。「いばらぎ」でなく「いばらき」と読むのはさておき、茨城県には実は関東一の歴史を持つやきものの里、笠間がある。
旅の3日目は風そよぐ笠間を散策し、仙台・宮城デスティネーションキャンペーン(6月30日まで開催)で盛り上がる仙台へ。おいしい海の幸を夕食にいただき東京へ帰る日帰りの旅。なんといっても少ない荷物で出かけられるのが日帰り旅の魅力、やきものにしても仙台のおみやげにしても余裕で持ち帰ることができる。
まずは上野から常磐線の特急「フレッシュひたち13号」で友部へ。フルムーン世代にとって常磐線特急「ひたち」と聞くと、犬のような顔立ちをしたキハ80系ディーゼル特急「ひたち」が懐かしい。その常磐線特急も今年3月のダイヤ改正ですべてフレッシュな顔立ちの新型電車(E657系)にチェンジとなった。
江戸時代、安永年間に誕生という笠間焼。よく「特徴がないのが特徴」といわれ、しかし、温かみのあるシンプルな風合いは普段使いの器にさりげない喜びを感じさせてくれる。ギャラリーロード、陶の小径を歩き、お気に入りの陶器を探してみよう。
笠間は日本三大稲荷の一つに数えられる笠間稲荷神社でも有名。こちらも参拝し、大きな油揚げが名物の「稲荷そば」も食べてみたい。
再び水戸線に乗って小山へ。東北新幹線に乗り換えれば仙台は近い。仙台では“幻のエビ”こと「ブドウエビ」があればラッキー。ブドウ色をしたエビで身はプリプリ、これから旬の時期を迎える。仙台で美味を満喫し東京へ帰ろう。
3日目●乗車距離:774.2km 運賃合計2人分:62,380円
【各区間ごとの運賃と乗車距離】
上野~友部:@5,190円(乗1,890円 特グ3,300円) 乗車距離101.0km
友部~笠間:@190円(乗190円) 乗車距離6.9km
笠間~小山:@740円(乗740円) 乗車距離43.3km
小山~仙台:@10,990円(乗4,620円 特グ6,370円) 乗車距離271.2km
仙台~東京:@14,080円(乗5,780円 特グ8,300円) 乗車距離351.8km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数
東京発5日間・後編 【旅の3日目】 心ときめく“やきもの”フルムーン 3日目 |
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3 日 目 |
発着駅 | 時間 | メモ |
笠間で「笠間焼」を選び、 仙台で夕食の日帰り旅(自宅泊) ~ E2系、E5系に乗車 ~ |
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上野 発 | 9:30 | 特急【フレッシュひたち13号】グリーン車(E657系) | |
友部 着 | 10:37 | 乗り換え | |
友部 発 | 10:49 | 普通列車 | |
笠間 着 | 10:57 | 「笠間焼」のお気に入りを探し、笠間稲荷神社を参拝 | |
笠間 発 | 13:58 | 普通列車 | |
小山 着 | 14:53 | 乗り換え | |
小山 発 | 15:03 | 東北新幹線【やまびこ211号】グリーン車(E2系) | |
仙台 着 | 16:45 | お寿司など、お好みの夕食を | |
仙台 発 | 18:54 | 東北新幹線【はやて44号】グリーン車(E5系) | |
東京 着 | 20:36 | この日は自宅泊 |
観光の問合せ
■笠間:笠間市観光案内所(笠間駅前) TEL.0296-72-1212
■仙台:仙台市総合観光案内所(仙台駅2F) TEL.022-222-4069
「特徴がないのが特徴」と言われもする笠間焼。しかし、実際に見てみると、どれも陶器らしい「温かみ」があり、人懐っこい茨城の人をそのまま器にしたような感じ。
笠間は東京からも近く、備前や有田と同様に、鉄道からも陶芸の里が眺められる。友部を出発した水戸線の列車では進行方向右側の景色に注目を。
笠間稲荷神社(駅から徒歩約20分)の門前町、笠間。五穀豊穣、商売繁盛の神様に詣で、門前町の風情を味わい、好みの笠間焼を探したい。笠間の町は散策するのにほどよい広さで、レンタサイクルもある。
平成23年3月11日の東日本大震災、震度6強だった笠間では笠間焼の登り窯が被害(現在はほぼ修復完了)を受けた。笠間へ出かけ、お気に入りの器を購入するのも、旅ならではの復興の一助になるのだろう。
東日本大震災で笠間は登り窯も被害(現在はほぼ修復)を受けた。写真は道から見た登り窯
東海道新幹線700系グリーン車の2人掛けシート。くつろぎの夫婦旅が楽しめる快適な座席だ
新茶の季節、東海道新幹線では三島~掛川間に広がる緑爽やかな茶畑の風景もお見逃しなく
清水寺の手前、清水坂にも京焼・清水焼のお店が並ぶ。ふらりと立ち寄って作品を見てみたい
清水寺界隈のギャラリーで購入した清水焼の小皿。京都らしい雅な雰囲気がいいでしょう
春から初夏にかけ京都では筍(たけのこ)がおいしい季節。筍ごはんもおかわりがしたいほど
散策をすればお腹もすく。京都ではちょっとした「おばんざい」(和風の惣菜)も食べたい
4日目からは1泊2日で京都&金沢を訪ねるやきものの旅。京都は旅の初日、2日目と通ってはいたが、ここはやはり特別な都。時間をゆったりと作り、あらためて出かけてみたい。
新幹線「のぞみ」は利用できないフルムーンパス。それでも日中の時間帯、東海道新幹線では1時間に2本「ひかり」が走っており、好きな時間の「ひかり」にご乗車を。新茶のシーズンを迎える今、東海道新幹線の車窓では富士山とともに茶畑をお見逃しなく。三島駅~掛川駅にかけて、主に進行方向右側の車窓に爽やかな緑の茶畑が広がっている。
千年の都、京都。やきものが盛んになっていったのは安土桃山時代のことだとか。そう、ちょうど茶の湯文化の盛り上がりと結びついている。茶とそれを味わう器、両者の共鳴が芸術性を高め、やがて江戸時代になり、現在の京焼・清水焼につながっていったという。
祇園の路地を歩き、日本の茶祖と呼ばれる栄西禅師が開いた建仁寺へ。そして、二寧坂(二年坂)、産寧坂(三年坂)や清水坂、五条坂、茶わん坂をはんなりとまわり、途中の陶器店にふらり立ち寄りながらお気に入りの器を探す。これもフルムーン旅行らしい散歩コースだろう。
一方、ご自分でも陶器をこしらえてみたい方は陶芸教室に参加してみては? 絵付け体験や、ちょっと本格的なロクロを用いた陶器作りまで、京都にはプログラムがいろいろと用意されている。オリジナルのやきものもそれはいい旅の思い出に。
春から初夏にかけ、京都は筍(たけのこ)もおいしい季節。やきもの散策でお腹が減れば、ぜひ「筍ごはん」を味わってみたい。
4日目●乗車距離:513.6km 運賃合計2人分:35,720円
【各区間ごとの運賃と乗車距離】
東京~京都:@17,860円(乗7,980円 特グ9,880円) 乗車距離513.6km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数
東京発5日間・後編 【旅の4日目】 心ときめく“やきもの”フルムーン 4日目 |
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4 日 目 |
発着駅 | 時間 | メモ |
京都ではんなり「京焼・清水焼」を探す旅 (京都泊) ~ 700系に乗車 ~ |
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東京 発 | 10:33 | 東海道新幹線【ひかり509号】グリーン車(700系) | |
京都 着 | 13:14 | この日は京都泊 |
観光の問合せ
■京都:京都総合観光案内所(京都駅ビル2F) TEL.075-343-0548
学生時代、京都へ修学旅行に行ったフルムーン世代の方も多いと思う。かく言う私たちも修学旅行は京都だった。ただ、その時代、京都のやきものといえば「清水焼」の名称が普通だったと記憶。それが今では「京焼・清水焼」という呼び方が一般的に。京都ではさまざまな地区にやきものがあり、「京焼」はいわばその総称にあたるのだとか。
伝統を守りつつ進取の気質にも富む京都。ここは日本初の水力発電所が設けられ、日本初の路面電車が走った都。全国各地からさまざまなものが集まり、人々はそれらを巧みに使いこなしてきた。これはやきものの分野にもあてはまり、京都のやきものは百花繚乱、陶器もあれば磁器もあり、まさにさまざまな手法で表現されている。京都では自分自身の感性にマッチする器をじっくりと探してみたい。
清水寺界隈の茶わん坂。やきものの町にふさわしい名前だ。坂の下には京都の景色が見える
関西と北陸を結ぶ特急「サンダーバード」。運転本数も多く京都~金沢間を2時間ほどで走る
もてなしドームと鼓門(つづみもん)がシンボルの金沢駅。北陸新幹線の延伸開業が待ち遠しい
金沢の台所、海の幸や加賀野菜が豊富にそろう近江町市場。ガサエビ(ガスエビ)もあった
金沢の寿司店で食べたガサエビ(ガスエビ)の握り。ねっとりとした甘さがたまりません
普段使いに金沢のギャラリーで購入したプリント物の九谷焼。プリント物は手頃な価格が魅力
金沢~新潟間を長岡経由で走る特急「北越」。485系電車を使用し国鉄色の車両もやってくる
旅の最終日もゆっくりの出発としよう。京都10時40分発の特急「サンダーバード13号」に乗車、琵琶湖を車窓に眺めつつ湖西線を走り、敦賀から先は北陸本線に。
列車はやがてトンネルをくぐり加賀路へ入る。九谷(くたに)焼発祥の地としても知られる山中温泉、その最寄りの加賀温泉駅付近では、残雪の山々を背に、田植えシーズンを迎え水を一面に張った田んぼが車窓を飾る。北陸の古都、金沢はもうすぐだ。
男川と呼ばれる犀川と、女川と呼ばれる浅野川。ふたつの川が流れる金沢を歩けば、浅野川のほとり、ひがし茶屋街の家並みといいどこか女性的な印象を受ける。当地で引き継がれてきた九谷焼は繊細であでやかな色彩の色絵陶磁器。もし備前焼を男性的とするのなら、九谷焼は対照的に女性的。金沢には同じく色彩あでやかな加賀友禅も息づいているが、加賀百万石とうたわれた土地だけに華やかな色彩が一段と輝くのだろう。
九谷焼のギャラリーは金沢駅内をはじめ、周辺各所に見られる。間近にすれば男性的なタッチの作品もあり、お好みでお選びを。また、プリント物であれば値段も手頃、普段使いの器にいいと思う。
お米も海の幸もおいしい北陸地方。金沢は北陸の食の都でもある。なかでも地物のエビ、ガサエビ(ガスエビ)が美味。市内の市場でも売られ、寿司店でも食べられる。
駅に戻り特急「北越7号」グリーン車に乗車。日本海に沈む夕日を車窓に見つめ、一路、長岡へ。この旅が終われば、各地で買い求めた陶磁器と、旅の想い出に囲まれた暮らしが始まる。
5日目●乗車距離:745.6km 運賃合計2人分:64,020円
【各区間ごとの運賃と乗車距離】
京都~金沢:@10,200円(乗3,890円 特グ6,310円) 乗車距離224.8km
金沢~長岡:@10,620円(乗4,310円 特グ6,310円) 乗車距離250.2km
長岡~東京:@11,190円(乗4,620円 特グ6,570円) 乗車距離270.6km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数
東京発5日間・後編 【旅の5日目】 心ときめく“やきもの”フルムーン 5日目 |
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5 |
発着駅 | 時間 | メモ |
金沢で「九谷焼」のお気に入りを探し、帰京する ~ E4系に乗車 ~ |
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京都 発 | 10:40 | 特急【サンダーバード13号】グリーン車 | |
金沢 着 | 12:57 | お気に入りの「九谷焼」を探し、ランチもいただきます | |
金沢 発 | 16:48 | 特急【北越7号】グリーン車 | |
長岡 着 | 19:36 | 乗り換え | |
長岡 発 | 19:47 | 上越新幹線【Maxとき348号】グリーン車(E4系) | |
東京 着 | 21:20 | やきもの三昧フルムーンの終わり |
観光の問合せ
■金沢:石川県金沢観光情報センター(金沢駅構内) TEL.076-232-6200
あでやかな色彩と繊細な絵柄がイメージされる磁器、九谷焼。最大の特徴は、赤・黄・緑・紫・紺青(こんじょう)の5色(九谷五彩という)による上絵付けにある。九谷焼のギャラリーをのぞけば、色彩の美しさ、華やかさに圧倒されてしまう。これは同じく伝統ある加賀友禅の絵柄の印象にも通じ、素人目には九谷焼は加賀友禅をやきもので表現したものとも映る。いずれにせよ加賀百万石の豊かさがあってこその逸品なのだろう。
九谷焼の発祥は加賀温泉郷の一つ、山中温泉付近といわれている。最寄駅の加賀温泉駅あたりはのどかな田園風景が車窓に広がり、なかなかあの華麗な色彩とは結びつかないが、歴史ある湯に浸り、陶芸散歩をするのも面白そう。山中温泉でも陶芸体験ができ、お好きな方はぜひどうぞ!
磁器らしい光沢を放つ九谷焼の器。プリント物だが加賀百万石のエッセンスが感じられる
<東京発 「心ときめく“やきもの”フルムーン」 の運賃総額、JR総乗車距離>
運賃総額:335,000円(2名分合計 通常期で算出)
JR総乗車距離:4573.1km ※運賃計算キロ
お得になった金額:254,500円(JR運賃総額-フルムーン5日間パス定価80,500円)
乗車倍率:4.16倍(JR運賃総額÷フルムーン5日間パス定価80,500円)
※運賃計算キロは、JR東日本のサイト、えきねっと「乗換・運賃案内」で表示のものです。
※今回のコースはすべてJR線です。
写真家、パズル作家。日本のすべての都道府県を夫婦で4巡している。これまでに120日フルムーンパスでの旅をし、JR路線も約11万キロ乗車。著書(夫婦の共著)は写真集『猫ヶ島』、『わらいねこ』をはじめ、『旅してでも食べたい 地もの旬もの回転寿司』など。また、英語クロスワードパズルを新聞に17年に渡って連載。
ホームページhttp://www.aizawa22.com
文・撮影:相澤秀仁&相澤京子
※掲載されているデータは平成25年(2013)4月10日現在のものです。
※JR時刻表4月号を使用。到着時刻等、一部時刻未掲載のものは、えきねっと「乗換・運賃案内」等で表示の時刻を使用。
※運賃は通常期(4月22日)をモデルに算出しました。