『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
釧路行き特急「スーパーおおぞら」。車内販売のない列車もあり食べ物等は駅でお買い求めを
厚岸駅で購入の駅弁「かきめし」。製造元へ事前予約すれば列車まで持ってきてもらえる
日本最東端の終着駅、根室駅にあった表示。この先で線路は本当に行き止まりになっていた
天気が良ければ北方領土の島影も見える納沙布岬。ここを起点にJR最西端、佐世保へ行こう
終着駅は始発駅。最東端の始発駅、根室から西へ向かう最初の列車は釧路行きの普通列車
急行「はまなす」の開放B寝台(上段)。旅情あふれる客車ならではの乗り心地を満喫しよう
世界地図を眺めると極東の海に日本列島は浮かんでいる。大陸と比較すれば猫の額ほどの小さな島国かもしれないが、それでも東西に約3000km(南鳥島から与那国島まで)、南北にもおよそ3000km(沖ノ鳥島から北方領土、択捉島まで)と長い。(出典:国土技術研究センターのサイト)
JRの路線でも最東端の終着駅、根室から最西端駅の佐世保まで、その距離は2894.4km(このコースの運賃計算キロ)にも及ぶ。旅の3日目、札幌から最東端の終着駅、根室へ行き、納沙布岬へ。そして一転、終着駅は始発駅となる。JR最東端の始発駅、根室からJR最西端駅の佐世保まで、はるか彼方へと続く鉄路の旅をしよう。
札幌ではホテルをチェックアウトする際、この先に必要な荷物以外は宅配便で自宅に送っておくといい。大抵のホテルであればフロントで宅配便の取り扱いがあり、一段と身軽になれる。
根室到着後、駅前バスターミナル13時45分発の路線バス(片道1070円)で納沙布岬には14時29分に着く。北方の島々に思いをはせ、当地15時10分発のバスから西へ向かう旅を開始。駅前バスターミナルには15時54分に到着し、普通列車に乗車。釧路で特急に乗り換え、さらに南千歳で夜行列車「はまなす」に乗り継ぐ。
JR唯一の定期急行列車でもある「はまなす」。開放B寝台車が連結されており、フルムーンパスでもちろん利用できる。寝台でぐっすりと眠れば、翌朝は青森だ。
「はまなす」をはじめ車内販売のない列車もあり、乗り換え時間等を活用して、食糧の調達をお忘れなく。
3日目●乗車距離:1358.9km 運賃・料金合計2人分:91,600円
【個別区間(列車)ごとの運賃と乗車距離】
札幌~釧路:@12,960円(乗6,260円 特グ6,700円) 乗車距離348.5km
釧路~根室:@2,490円(乗2,490円) 乗車距離135.4km
根室~釧路:@2,490円(乗2,490円) 乗車距離135.4km
釧路~南千歳:@12,420円(乗5,720円 特グ6,700円) 乗車距離304.5km
南千歳~青森:@15,440円(乗7,660円 急B寝7,780円) 乗車距離435.1km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数
終着駅フルムーン 3日目 | |||
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3 日 目 |
発着駅 | 時間 | メモ |
根室を往復し、「はまなす」で青森へ (車中泊) |
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札幌 発 | 7:02 | 特急【スーパーおおぞら1号】グリーン車 | |
釧路 着 | 11:01 | 乗り換え | |
釧路 発 | 11:13 | 快速【ノサップ】普通車自由席 (厚岸駅は11:59着) | |
根室 着 | 13:22 | 納沙布岬を観光 | |
根室 発 | 16:10 | 普通列車 | |
釧路 着 | 18:51 | 乗り換え | |
釧路 発 | 19:02 | 特急【スーパーおおぞら12号】グリーン車 | |
南千歳 着 | 22:30 | 乗り換え | |
南千歳 発 | 22:41 | 急行【はまなす】B寝台 ※運休日、時刻変更日に注意! |
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青森 着 | 5:39 | 車中泊で青森へ |
観光の問合せ
■根室:根室市観光協会
TEL. 0153-24-3104
時代とともに変化する鉄道。最北端や最東端と同じく、最西端も微妙に変化している。
国鉄時代、佐世保から平戸口、伊万里を経て有田へ行く松浦線があり、その平戸口駅が長らく日本最西端の駅だった。松浦線はその後、JR九州線となり、やがて第三セクターの松浦鉄道西九州線に移行。平戸口駅はJR駅でなくなり、平成元年(1989)3月11日には「たびら平戸口駅」と改称。以来、JR線としての最西端駅は長崎県第2の都市、佐世保市の玄関、佐世保駅となった。
明治31年(1898)1月20日開業の佐世保駅。現在は高架の駅になり、JR線が3面6線、松浦鉄道が1面2線と、一見したところ、北の稚内や東の根室、南の枕崎のように最果て感が漂う行き止まり式の線路にはなっていない。しかし、特急「みどり」などは当駅が終着駅であり、「JR最西端の終着駅」と呼んで差支えないと思う。
特急「みどり」などの終着駅でもあるJR最西端の佐世保駅。ホームは高架でモダンな駅だ
新青森で東北新幹線「はやぶさ」に乗車。新幹線を乗り継いで九州への弾丸旅行が始まる
東京駅からは東海道新幹線「ひかり」の旅。この頃はN700系を使用する列車が増えてきた
東海道新幹線、グリーン車の車窓から見た浜名湖の風景。まるで海上を走っているかのよう
九州新幹線と長崎本線の接続駅、新鳥栖。名物の「かしわうどん」(立ち食い)も九州の味
特急「みどり」のグリーン車もゆったりとしている。終着駅、佐世保までくつろいで行こう
佐世保は長崎と同じく夜景の美しい街。駅から街に出て名物「レモンステーキ」の夕食を
日に日に近づく北海道新幹線の開業。その検査等があり、急行「はまなす」も運休日や運転時刻変更となる日がある。詳細は『JR時刻表』でご確認を。ちなみに時刻変更日の上り「はまなす」は青森着が6時19分となる。
シャワー設備のない急行「はまなす」。通常運転日であれば青森到着は5時39分と早く、お風呂派の方は駅近くの天然温泉「青森まちなかおんせん」(朝6時から営業)で朝風呂を。すっきりリフレッシュして旅を続けよう。
新青森で発車を待つ東北新幹線「はやぶさ」に乗り、最高速度320km/hで東京へ。東海道新幹線「ひかり」に乗り換え、さらに、新大阪からは山陽・九州新幹線「さくら」の旅。新鳥栖で特急「みどり」に接続し、目指す佐世保に到着する。
最東端の終着駅、根室からJR最西端駅の佐世保まで、2881.6kmを27時間15分で走破(乗り換え時間等を含む)。単純計算で平均速度はおよそ106km/hとなり、これはすごい数字と映る。フルムーンパスが発売された最初のシーズン、昭和57年(1982)4月の時刻表をめくれば、根室をほぼ同時刻、16時40分発の列車に乗車した場合、車中泊2泊で、佐世保到着は翌々日の15時6分だった。所要時間は46時間26分であり、この30年ほどの間で到達時間が約20時間も短くなったことになる。
フルムーンパスは発売当初、寝台車は追加料金なしには利用できなかった。また、車両の乗り心地やグリーン車のグレードも現代の方が格段に向上。この30年の歳月、新幹線の発展とともに、フルムーンパスの利便性もさらに高まった。
4日目●乗車距離:2006.6km 運賃・料金合計2人分:135,620円
【個別区間(列車)ごとの運賃と乗車距離】
青森~新青森:@190円(乗190円) 乗車距離3.9km
新青森~東京:@21,970円(乗10,150円 特グ11,820円) 乗車距離713.7km ※「はやぶさ」の運賃
東京~新大阪:@18,920円(乗8,750円 特グ10,170円) 乗車距離552.6km
新大阪~新鳥栖:@23,120円(乗9,890円 特グ13,230円) 乗車距離650.9km
新鳥栖~佐世保:@3,610円(乗1,650円 特グ1,960円) 乗車距離85.5km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数
終着駅フルムーン 4日目 | |||
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4 日 目 |
発着駅 | 時間 | メモ |
九州は佐世保へ弾丸旅行(佐世保泊) ~ E5系、N700系に乗車 ~ |
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青森 発 | 7:15 | 普通列車 | |
新青森 着 | 7:20 | 乗り換え | |
新青森 発 | 7:43 | 東北新幹線【はやぶさ10号】グリーン車 E5系 | |
東京 着 | 11:04 | 乗り換え | |
東京 発 | 11:33 | 東海道新幹線【ひかり511号】グリーン車 N700系 | |
新大阪 着 | 14:26 | 乗り換え | |
新大阪 発 | 14:59 | 山陽・九州新幹線【さくら561号】グリーン車 N700系 | |
新鳥栖 着 | 17:49 | 乗り換え | |
新鳥栖 発 | 18:02 | 特急【みどり21号】グリーン車 | |
佐世保 着 | 19:25 | この日は佐世保泊 |
観光の問合せ
■佐世保:佐世保観光コンベンション協会
TEL. 0956-23-3369
最北端の終着駅、北海道の稚内から鉄路でおよそ3000km。鹿児島県、薩摩半島南部、指宿枕崎線の終点、枕崎駅がJR線最南端の終着駅に。
この枕崎駅も時代とともに変遷し、以前はあと100mほど線路が北側に延び、私鉄の鹿児島交通枕崎線の駅に乗り入れていた。枕崎駅の開業は鹿児島交通としては昭和6年(1931)3月10日で、国鉄線の乗り入れは昭和38年(1963)10月31日から。やがて、 昭和59年(1984)3月17日には鹿児島交通枕崎線が廃止され、国鉄単独使用駅に。そして、JR九州の時代になり、駅付近の再開発事業によって、平成18年(2006)5月1日、枕崎駅は現在の位置に移設された。
東西南北の終着駅のうち、枕崎駅だけが無人駅であり、ホームは1面1線。鹿児島交通との共用駅時代も出かけているが、現在の駅の方がより終着駅らしい姿に見える。
指宿枕崎線の枕崎駅はJR最南端の終着駅。平成25年4月、市民の寄付で新しい駅舎ができた
平成13年12月に高架の新しい駅となった佐世保駅。特急「みどり」で再び新鳥栖駅へ向かう
新鳥栖駅で九州新幹線に乗り換えて日本最南端の新幹線駅である鹿児島中央駅に到着する
鹿児島中央からはJR最南端路線、指宿枕崎線の旅。途中のJR最南端有人駅、山川駅で撮影
JR最南端の終着駅、枕崎。南国ムードも満点、新しくできた駅舎といい旅情が感じられる
鰹で有名な枕崎。名物の「ぶえん鰹」を刺身でいただく。一本釣りの鮮やかな赤身が美味
寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」のノビノビ座席。寝台ではないが身体を楽に伸ばせる
いよいよ旅の最終日、JR最西端駅の佐世保からJR最南端の終着駅、枕崎へ行ってみよう。
大概の人が思う終着駅のイメージ。それはきっと行き止まり式の線路だろう。稚内、根室、枕崎しかり。しかし、佐世保は高架の駅であり、第三セクター「松浦鉄道」の線路が延びている。確かに特急「みどり」等の終着駅には違いないが、行き止まり式ホームを有するJR最西端の終着駅としては、佐世保よりやや東にあるものの長崎駅という方も多いのでは。長崎派の方は早起きをして、佐世保5時57分発、大村線経由の普通列車で長崎(7時49分着)へ。暫し滞在の後、同駅8時29分発の特急「かもめ8号」に乗れば新鳥栖には9時58分の到着。このコースで利用する「さくら545号」にちょうど接続する。
鹿児島中央からは指宿枕崎線の旅。途中、JR最南端の「みどりの窓口」設置駅である指宿や、JR最南端の有人駅、山川駅、そして、JR最南端の駅、西大山駅を通り、薩摩富士(開聞岳)を眺めつつ、JR最南端の終着駅、枕崎に到着。駅の表示を見れば稚内から3144.5kmとある。
JR線の東西南北の終着駅を制覇したフルムーン。さあ残すはJR最南端の始発駅となった枕崎からの帰路だけだ。姫路からは寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」を利用するが、フルムーンパスの場合、最終日のうちに乗車する夜行列車は、下車しない限り、その列車の終着駅まで有効となる。
フルムーンパスでは「ノビノビ座席」(普通車指定席)だけが追加料金不要の「サンライズ瀬戸・出雲」。ここは必要な料金券を購入し、個室B寝台の「サンライズツイン」に乗ってみたい。
5日目●乗車距離:1985.2km 運賃・料金合計2人分:130,280円
【個別区間(列車)ごとの運賃と乗車距離】
佐世保~新鳥栖:@3,610円(乗1,650円 特グ1,960円) 乗車距離85.5km
新鳥栖~鹿児島中央:@12,690円(乗5,180円 特グ7,510円) 乗車距離260.3km
鹿児島中央~枕崎:@1,820円(乗1,820円) 乗車距離87.8km
枕崎~鹿児島中央:@1,820円(乗1,820円) 乗車距離87.8km
鹿児島中央~博多:@13,020円(乗5,510円 特グ7,510円) 乗車距離288.9km
博多~姫路:@18,590円(乗8,420円 特グ10,170円) 乗車距離530.6km
姫路~東京:@13,590円(乗9,830円 特指3,760円) 乗車距離644.3km
※通常期の場合 ※距離は運賃計算に用いるキロ数
終着駅フルムーン 5日目 |
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5 |
発着駅 | 時間 | メモ |
佐世保から枕崎を経て帰京 ~ N700系、700系に乗車 ~ |
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佐世保 発 | 8:47 | 特急【みどり8号】グリーン車 | |
新鳥栖 着 | 10:05 | 乗り換え | |
新鳥栖 発 | 10:12 | 九州新幹線【さくら545号】グリーン車 N700系 | |
鹿児島 中央 着 |
11:33 | 乗り換え | |
鹿児島 中央 発 |
12:05 | 普通列車 | |
枕崎 着 | 14:31 | 枕崎を散策 | |
枕崎 発 | 16:03 | 普通列車 | |
鹿児島 中央 着 |
18:41 | 乗り換え | |
鹿児島 中央 発 |
19:03 | 九州新幹線【さくら412号】グリーン車 N700系 | |
博多 着 | 20:39 | 乗り換え | |
博多 発 | 20:51 | 山陽新幹線【ひかり444号】グリーン車 700系 | |
姫路 着 | 23:01 | 乗り換え | |
姫路 発 | 23:35 | 寝台特急【サンライズ瀬戸・出雲】ノビノビ座席(普通車指定席) | |
東京 着 | 7:08 | 旅の終わり |
観光の問合せ
■枕崎:枕崎駅前観光案内所
TEL. 0993-78-3500
最後に東西南北の各終着駅の現状(2015年4月現在)をまとめてみたい。
日本最東端の駅は東根室駅で、日本最東端の有人駅、同じく終着駅は根室駅。
JR最西端の駅、同じく有人駅、同じく終着駅は高架の駅ながら佐世保駅。ただし、日本最西端の駅、同じく有人駅、同じく終着駅は沖縄都市モノレールの那覇空港駅。
JR最南端の駅は指宿枕崎線の西大山駅(無人駅)で、JR最南端の有人駅は同線の山川駅、また、JR最南端の終着駅は同線の枕崎駅(無人駅)。ただし、日本最南端の駅、同じく有人駅は沖縄都市モノレールの赤嶺駅で、日本最南端の終着駅は最西端同様に那覇空港駅。
そして、日本最北端の駅、同じく有人駅、同じく終着駅のタイトルはすべて稚内駅。
こうしてみると、各タイトルごとに微妙に駅が異なっているのがわかる。
日本最南端の駅、沖縄都市モノレールの赤嶺駅。日本最西端の駅、那覇空港駅は次の駅だ
<東京発 東西南北 終着駅フルムーンの運賃・料金総額、総乗車距離>
JR運賃・料金総額:497,880円 (2名分合計 通常期で算出)
JR総乗車距離:7339.8km ※運賃計算キロ
お得になった金額:415,080円(JR運賃・料金総額-フルムーン夫婦グリーンパス料金 [5日間用 82,800円])
乗車倍率:6.01倍 (JR運賃・料金総額÷フルムーン夫婦グリーンパス料金 [5日間用 82,800円]
)
※運賃計算キロは、JR東日本のサイト、えきねっと「乗換・運賃案内」で表示のものです。
写真家、パズル作家。日本のすべての都道府県を夫婦で4巡している。これまでに130日フルムーンパスでの旅をし、JR路線も約12万キロ乗車。
著書(夫婦の共著)は写真集『猫ヶ島』、『わらいねこ』をはじめ、『旅してでも食べたい 地もの旬もの回転寿司』など。
また、英語クロスワードパズルを新聞に17年に渡って連載。
夫婦旅ブログ http://fullmoon.aizawa22.com
文・撮影:相澤秀仁&相澤京子
※掲載されているデータは平成27(2015)年4月10日現在のものです。
※時刻等は、時刻表4月号、えきねっと「乗換・運賃案内」、JRおでかけネット「マイ・ダイヤ」等のものを使用。
※時刻は臨時に変更となる場合があります。
※運賃例は、全JRが通常期の2015年5月16日付で算出。