『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
高尾駅で出発を待つ中央本線115系普通電車。115系は「青春18きっぷ」誕生の頃も今も活躍の働き者、いずれ車両は世代交代するだろうから、健在のうちにじっくり乗車して、115系ならではの旅を堪能したい
石和温泉駅の駅前右手にある無料の温泉足湯「石和温泉駅前公園あしゆ」。温泉客が数多く訪れ、列車待ちのひと時もほっこり気分で過ごせる。利用時間は午前10時から午後5時(4月~9月は午後6時)まで
甲州、山梨といえば風林火山の武田信玄。甲府駅横に鎮座する信玄公の銅像は戦国武将らしく堂々とした姿。ここではぜひ記念写真を撮っておきたい。それにしても冬場に眺めると“冬将軍”みたいに思えました
甲州の郷土料理「ほうとう」。味噌仕立てのスープにカボチャをはじめとする野菜類がたっぷり入り、平たく太い麺をがっしりと煮込んだもの。パワフルで熱々、寒い冬にぴったりの味。身も心もほっこりします
慈照寺の境内、本堂左手の傍らには猫伝説にちなむ猫石(猫塚)がある。お寺で飼われていた猫が恩返しをし、姿を消したその猫のために立てられた猫塚だ。人と猫の係わり、甲州の義理堅さがうかがえる
甲府で日向ぼっこをしていた猫さん。ちょこっと出した“猫舌”が愛らしい。恩返しした猫の伝説を知ってか知らずか、風林火山よろしく「動かざること山の如し」とばかり、日差しを浴びてほっこりしていた
東京駅8時9分発の快速電車から始まる中央本線、山梨への旅。立川、八王子と過ぎ、高尾でその先へ向かう電車に乗り換えとなる。
中央本線は高尾を境に路線の表情が激変、東京~高尾間は割と平坦な区間だが、高尾を出発した途端、小仏峠にさしかかり、ほとんど“山岳路線”といった印象に。勾配路線用に製造された115系電車の旅を楽しもう。
大月駅を発車すると115系電車は笹子峠に挑む。笹子駅と甲斐大和駅間にある笹子トンネル(下り列車用。上り列車用は、新笹子トンネル)をくぐり、新大日影(おおひかげ)トンネルを出れば風景はまたも一変、車窓に広がる勝沼ぶどう郷の大パノラマに目を奪われる。天気が良ければ雪をいただく南アルプスや甲府盆地方面も一望に。中央本線(中央東線)きっての絶景、進行方向左手側をお見逃しなく。
峠を越えた電車は軽やかに甲府へと下って行く。甲府の手前、石和(いさわ)温泉駅には駅前右手に無料の温泉足湯がある。ここはちょっと下車してほっこり温まってみたい。
戦国武将の雄、武田信玄の銅像が駅横に鎮座する甲府駅。信玄公は冬場に眺めると、なんとなく寒波襲来の“冬将軍”っぽく見えてくる。それはさておき、甲府はこのところ「鳥もつ煮」が人気。とはいえ季節は冬、やはり信玄公ゆかりの陣中食といわれる熱々の名物料理「ほうとう」を食べ、身も心もほっこりと。食後は駅からすぐの甲府城に行ってみよう。聞けば、お城が駅から近いのは当たり前、城跡の一部に駅が立地していた。
山国、甲州の人は義侠心に富み、義理堅い気質も持つという。それは甲州の猫にも言えるのだろうか、甲府のお隣、竜王の古刹、慈照寺には「猫の恩返し伝説」が残っている。当地の猫伝説は、江戸時代、慈照寺が貧しい寺だった頃、飼い猫が永年の恩返しにと霊力を使い甲府の旗本を檀家に招き入れ、お寺に豊かさをもたらしたもの。一般に「猫檀家」と呼ばれる伝説で、歴史あるたたずまいの本堂左手の傍らに、以来、姿を消してしまった猫のため猫石(猫塚)が設けられた。義理堅い伝説の猫ゆえ、訪れた旅人にも幸運のプレゼントがあるかもしれない。
山梨ふらり冬散歩、お帰りは往路同様に中央本線で。もし別ルートをご希望なら、甲府から身延線で富士へ出て、東海道本線に乗り換えて東京へ。こちらは時間がかかるが乗り鉄派の方は満足されると思う。また、工事による一部列車の運休や年末年始ダイヤ等、旅行前に運行情報の確認をお忘れなく。
駅名 | 時間 | 旅のひとことアドバイス | |
---|---|---|---|
1 日 目 |
東京 発 | 8:09 | 中央線快速電車(土休日は8:11発、中央特快) |
高尾 着 | 9:21 | 乗り換え(土休日は9:11着) | |
高尾 発 | 9:25 | 普通電車(土休日は9:27発) | |
石和温泉 着 | 10:54 | 駅前の温泉足湯(無料)でほっこり(土休日も同時刻着) | |
石和温泉 発 | 12:10 | 普通電車(土休日は12:13発) | |
甲府 着 | 12:17 | 名物「ほうとう」を食べてほっこり(土休日は12:19着) | |
甲府 発 | 14:00 | 普通電車 | |
竜王 着 | 14:04 | 猫伝説のお寺へ | |
竜王 発 | 16:19 | 普通電車 | |
甲府 着 | 16:22 | 乗り換え | |
甲府 発 | 16:46 | 普通電車(土休日は16:53発) | |
八王子 着 | 18:45 | 乗り換え(土休日は18:51着) | |
八王子 発 | 18:50 | 中央線快速電車(土休日は18:54発、中央特快) | |
東京 着 | 19:53 | 旅の終わり(土休日は19:45着) |
有富山慈照寺は甲斐市竜王にある曹洞宗の寺院。創立時期は明確ではないものの延徳元年(1489)に真翁宗見(しんおうそうけん)が再興し改宗したという。
行き方はJR竜王駅から西へ徒歩約10分、甲斐市竜王スポーツセンターの向かいにある。詳細は甲斐市のサイト「甲斐市観光ガイド」をチェック。
有富山慈照寺の山門。江戸時代初期に建てられ、山梨県指定有形文化財になっている。山号の有富山は、境内から望む霊峰富士によるという。春ともなれば、山門前の桜はそれは見事な花を咲かせる
文・写真:相澤秀仁&京子
※掲載されているデータは平成24年11月3日現在のものです。