『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
「ひこにゃん」も暮らす滋賀県彦根を歩き、たまたま出会った“本物”の猫。「よく来たにゃあ~」と微笑む愛らしい猫にほっこり。“ゆるキャラ猫”もいいが、やっぱり“本物猫”の魅力にはかなわない
福井駅に停車するJR西日本521系普通電車。メタリックな車体に青と白のラインがかっこいい。転換クロスシートの交直流近郊形電車521系は北陸本線を走る普通電車の“顔”となり、「青春18きっぷ」の旅もサポート
福井駅も以前に比べ新しくなった。特に西口はかつてごちゃごちゃした駅前だったが、現在はすっきり広々、観光にも出かけやすく、わかりやすい街になった印象。駅構内には観光案内所もあってとても便利
ほかほかのご飯にウスターソース風のタレが染みた揚げたてのカツ。香り立つソースに食欲も全開、これぞ福井名物「ソースカツ丼」。シンプルにしてハイカラ、歴史ある「ソースカツ丼」を食べて、ほっこり
福井で猫伝説ゆかりの神明神社。その参道を進み、正面拝殿の左手、つまり境内の西側に行くと猫伝説の衣羽神も祀る合祭殿がある。参道の横は公園になっていて一休み可。時には本物の猫が姿を見せるかも
「猫塚さん」に参拝し、「猫塚さん」みくじを引く。おみくじには、ほっこり愛らしい猫さんも一緒で、こちらは猫好きの人にはたまらない縁起物になる。そして、絵馬派の方には招き猫が描かれた絵馬もいい
大阪から福井へ、日帰り猫めぐりの旅。ルートは琵琶湖を真ん中にして、西側の湖西(こせい)線経由と東側の北陸本線経由があるが、今回は東側のルートをセレクト。その理由は最初に立ち寄る彦根にある。
彦根は、東海道本線と北陸本線の接続駅、米原の一つ大阪寄りにあり、ここ最近は“ゆるキャラ”の猫「ひこにゃん」でも有名。猫めぐりの旅だから、まずは「ひこにゃん」のお膝元、ご城下を散策してみよう。この「ひこにゃん」も猫伝説に由来、ただし伝説の舞台は東京世田谷、豪徳寺。白猫に手招きされた彦根藩2代目藩主、井伊直孝らはそれで落雷の難をのがれた。彦根の猫が直接、伝説に係わったわけではないが、実際に彦根で出会う本物の猫を見ればそれは愛らしく賢そう。伝説の時代にいたら、きっと井伊直孝らを落雷から守ったことだろう。
彦根から米原経由の新快速に乗り、近江塩津では湖西線経由の新快速に乗り継ぎ敦賀へ。敦賀から福井は普通列車で1時間弱。国鉄時代の古い車両にも味わいはあったが、銀色の車体に青と白のラインを引いた新鋭521系電車は颯爽とした感じ。転換クロスシートで北陸路を快走する。目的地、福井ではまずランチを食べよう。
福井といえば名物の「ソースカツ丼」。猫の伝説も全国に多々あるように、実は「ソースカツ丼」もさまざま。ここ福井ではカラリと揚げたカツにウスターソース風のタレを合わせる。熱々のカツにソースの香り、ほっこりと頬張ればもう幸せ気分。
食後は福井を散策し、猫伝説の地へ。甲府同様、福井も城下町の風情が漂う。福井城跡の北西、神明公園の奥に目指す神明神社はあった。境内西側の稲荷神・恵比須神・衣羽(きぬは)神を祀る合祭殿のうち、衣羽神が猫伝説にちなんでいる。
当地の猫伝説はいささかおどろおどろしい。時は江戸時代、武士の川澄角平(かわすみかくべい)は、怪異によって2人になってしまった妻女の一方を槍で突き殺した。すると妻女に化けた猫だった。角平は猫を埋めた塚に衣羽大明神を祀り、時を経た今では、子供の夜泣き平癒や身体健全等に霊験ある「猫塚さん」として親しまれるようになった。猫好きな人にすれば、これほどの霊力を持つ「猫塚さん」ゆえ、他の願い事も聞いてくれそうな気がしてならない。
ここには招き猫の絵馬があり、また、「猫塚さん」みくじにほっこりする。来年の事を言えば鬼が笑うと言うが、来る年の初詣に出かけてみるのもいいだろう。福井の猫さんもきっと微笑んでくれる。
駅名 | 時間 | 旅のひとことアドバイス | |
---|---|---|---|
1 日 目 |
大阪 発 | 7:47 | 新快速電車(土休日は7:30発、新快速) |
彦根 着 | 9:08 | “ゆるキャラ”でほっこり(土休日は8:50着) | |
彦根 発 | 10:49 | 新快速電車 | |
近江塩津 着 | 11:35 | 乗り換え | |
近江塩津 発 | 12:01 | 新快速電車 | |
敦賀 着 | 12:15 | 乗り換え | |
敦賀 発 | 12:38 | 普通電車 | |
福井 着 | 13:31 | 名物「ソースカツ丼」と猫の縁起物でほっこり | |
福井 発 | 16:48 | 普通電車 | |
敦賀 着 | 17:37 | 乗り換え | |
敦賀 発 | 17:49 | 新快速電車 | |
大阪 着 | 20:13 | 旅の終わり |
通称「おしんめさん」と呼ばれる神明神社は、天照大神(あまてらすおおみかみ)を祀り、創建は延長2年(924)。境内神社に稲荷神・恵比須神・衣羽神を祀る合祭殿があり、衣羽神が猫伝説にちなむ。
行き方はJR福井駅から徒歩約15分、または福井鉄道福武線、仁愛女子高校駅下車、同校東隣り。
伝統的でモダンな印象の神明神社拝殿。この左手に衣羽神も祀る合祭殿がある。子供の無事な成長を願い、「猫塚さん」を訪ね、「ニシン」を供える人も。「猫塚さん」は福井っ子の成長を見守っている
写真家、パズル作家。「青春18きっぷ」歴はちょうど18年、日本のすべての都道府県を夫婦で3巡している。
著書(夫婦の共著)は写真集『猫ヶ島』、『わらいねこ』をはじめ、『旅してでも食べたい 地もの旬もの回転寿司』など。
ホームページ http://www.aizawa22.com
文・写真:相澤秀仁&京子
※掲載されているデータは平成24年11月3日現在のものです。