『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
上野~高崎間の鉄道開通は明治17年(1884)5月1日。高崎駅も同日に開業。生糸などの貨物輸送を目的とした路線で、昭和27年(1952)には電化完成。写真は高崎駅に到着したE231系電車
上信電鉄と一緒に「富岡製糸場見学往復割引乗車券」をパチリ。向かって右側が往路、左側が復路のきっぷで、それぞれ1回ずつ途中下車可能。そして中央が富岡製糸場の入場券だ
富岡製糸場の入口。周囲にはレトロな雰囲気の商店街が広がり、製糸場で働く人たちも立ち寄ったであろう食堂や喫茶店も。見学の後、周辺の店にも出かけてみたい
工女たちもきっと食べたのであろう、しょうゆ味のラーメン。昔懐かしい味は、将来に残したい日本の「ラーメン遺産」だと思う
文明開化の時代の富岡は、文化や流行にも敏感な工女たちで休日も賑わった。往時の余韻が漂う町で食べた和風あずきアイス。ハイカラで優しい味わいだった
上信電鉄線馬庭(まにわ)駅から徒歩約20分の地勝寺。洪水の折、鏑川べりで猫とともに見つかった石仏がある。当地の民話では「猫地蔵」と呼ばれ、蚕の守り仏とされている
立秋を過ぎても、まだまだ暑さ本番、残暑の夏。しかし、よく「かかあ天下に空っ風」といわれる上州・群馬も夏は暑く、空っ風ならぬ熱風が吹き抜ける。この群馬にあって、2014年6月、日本で18番目となる世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」が誕生した。
東京から青春18きっぷの日帰り旅行も楽々でき、途中利用する私鉄線の上信電鉄では、見学往復割引乗車券も発売に。桑の葉茂る今こそ旅どき、シンボルとなった富岡製糸場を見学する歴史旅に出てみたい。
上野発の高崎線電車は、2007年8月に40.9度の最高気温を記録した埼玉県の熊谷を通り、神様も流れてきそう?な神流(かんな)川を渡って群馬県へ。交通の要衝、高崎駅でJR線から上信電鉄線に乗り換え、上州富岡駅へと向かう。
この上信電鉄では、高崎~上州富岡間の往復乗車券と富岡製糸場入場券がセットになった「富岡製糸場見学往復割引乗車券」を発売(大人1640円)。通常より440円も安く、乗車券は記念に持ち帰ることもできる。
上野~高崎間の運賃は片道1940円、青春18きっぷ1日(1回)分は2370円。つまり、浮いたお金は上信電鉄線の割引乗車券代とほぼ同額。青春18きっぷのおかげで富岡製糸場への旅がかなりおトクになる!
色とりどりの電車が走る上信電鉄。車窓からは、蚕(かいこ)が食べる桑の木もところどころ見え、鏑(かぶら)川を2度渡って上州富岡駅に到着だ。
日本初の本格的な器械製糸工場として明治5年(1872)に完成し、操業を始めた富岡製糸場。明治5年といえば、くしくも新橋~横浜間で日本初の鉄道が開業した年にあたる。
文明開化の時代、日本は殖産興業も御旗に掲げ、主要輸出品であった生糸(蚕の繭<まゆ>から繰り取ったままの繊維、ローシルク)の生産や品質向上に注力。富岡製糸場はまるで機関車のように日本の近代化を牽引(けんいん)してきた施設だ。戦災にあわず、昭和62年まで操業を続け、以後もレンガ造りの建造物群は往時そのままの姿を残し、重要文化財にもなっている。
しかし、建物や装置もさることながら、工女たちの努力なしには良質の生糸は生産できなかったはず。富岡製糸場を見学すれば、ここで働いてきた人たちの頑張りがあってこその製糸技術の発達であり、世界遺産だと気づく。
明治から昭和後期までの間、どれほどの人が製糸場へ働きにやってきたのだろう。生糸とともに歩んできた富岡の町はどこかレトロなたたずまいで、工女たちも食べたというラーメンは優しい味がした。町歩きの後は、あずきアイスもおすすめだ。
上信電鉄の「富岡製糸場見学往復割引乗車券」は往路、復路各1回ずつ途中下車もできる。富岡からの帰路は、上州富岡駅から6つ目の馬庭(まにわ)駅で途中下車し、地勝寺などの民話の舞台を訪ねてみるのはいかが? おトクな旅ができる今、ぜひ上州歴史旅にお出かけを!
駅名 | 時間 | 旅のひとことアドバイス | |
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1 日 目 |
上野 発 | 8:35 | 高崎線快速「アーバン」(土休日は8:39発) |
高崎 着 | 10:17 | 乗り換え | |
高崎 発 | 10:31 | 上信電鉄線 (富岡製糸場見学往復割引乗車券1,640円) |
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上州富岡 着 | 11:06 | 富岡製糸場を見学、ランチ&散策 | |
上州富岡 発 | 15:11 | 上信電鉄線 | |
馬庭 着 | 15:29 | ちょっと途中下車して「猫地蔵」にお参り | |
馬庭 発 | 16:34 | 上信電鉄線 | |
高崎 着 | 16:52 | 乗り換え(夕食用に高崎駅の駅弁を購入するのはいかが?) | |
高崎 発 | 17:26 | 高崎線通勤快速(土休日は快速「アーバン」) | |
上野 着 | 19:02 | 旅の終わり |
明治30年(1897)に高崎~下仁田間が全通した上信電鉄(当時の名は上野〈こうずけ〉鉄道)。そこに大正13年(1924)、ドイツからやってきたのが、電気機関車「デキ1形」だ。
デキ1、デキ2、デキ3の3両が導入され、愛らしい凸型ながらも貨物輸送に奮闘。繭も運んだという。平成6年に貨物輸送はなくなったがデキ1、デキ3は現在も在籍中。なお、廃車となったデキ2は、富岡市の指定重要文化財として、市内のもみじ平総合公園に保存されている。
現役時代のデキ2。昭和52年に高崎で撮影したもの。高崎には国鉄の機関区もあり、大型のEF62形電気機関車などと比べれば、マスコットみたいに愛らしい存在だった
文・写真:相澤秀仁&京子
※掲載されているデータは2014年9月現在のものです。