『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
現代東海道本線の旅はJR3社の電車を乗り継ぐ旅。まずはJR東日本の電車で熱海へ行き、JR東海の電車に乗り換える。熱海では乗り換えの時間に余裕を持たせ、駅前温泉足湯(無料)で一休みするのもいい
米原からはJR西日本の便利な新快速に乗車。東海道本線の終点、また、山陽本線の起点、神戸まで乗り換えなしに行ける。夕刻に到着の神戸駅は駅舎も堂々たるもの。国の近代化産業遺産に指定されている
横浜や長崎とともに神戸にも中華街がある。夜ともなれば華やかな明かりがともり、風情もひとしお。神戸での夕食は中華料理にハイカラな洋食など、よりどりみどり。夜景が見えるレストランもある
異人館が建ち並ぶ神戸、北野地区で見かけたクリスマス頃の風景。文明開化の時代を経て、クリスマスはいつの間にか日本に定着。忙しいサンタさんにも、のんびり青春18きっぷの旅をおすすめしてみたい
食の都、粉もんの聖地、大阪では道頓堀界隈で名物の「たこ焼き」を味わってみよう。「多幸」に通じ、縁起良さそうな「たこ焼き」。ソースの香りに包まれ、出来立てをハフハフ食べるのも大阪らしいひと時
大阪、法善寺横丁の水掛不動尊。水をかけてお参りをする不動尊だけあって、苔がビッシリとついている。これも人々の厚い信仰の証しなのだろう。新しい年が良い年となるよう、水掛不動尊に願かけを
文明開化以前、徒歩旅行の時代から日本の大動脈だった東海道。江戸の日本橋から京都の三条大橋まで53の宿場(宿駅)があり、人々はこの街道を約2週間かけて歩き通したが、13泊14日の行程としてみても宿泊費や食費などなどで旅費はかなりの金額になっただろう。
やがて明治22年(1889)7月1日、現在の東海道本線の元となった新橋~神戸間の鉄道が全通。この時、1日1往復の直通列車が運転を開始、所要時間は約20時間だった。しかし、それでも徒歩時代と比較すれば夢のような超高速。新橋~神戸間で3円73銭だったという運賃は一見高そうに思えるが、13泊14日の旅費と比べればはるかに激安、身体的疲労も驚くほど低減されたに違いない。
さて、現代。東海道・山陽新幹線「のぞみ」を利用すれば、東京~新神戸間は3時間とかからない近さ。一方、在来線の東海道本線は優等列車が新幹線に移ったことで通過待ちが減り、普通列車もスピードアップ。今では明治期の所要時間の半分以下、東京~神戸間は乗り換え時間を含め約9時間で行くこともできる。現在の運賃9,290円にしても、明治期の運賃よりぐんと安いのではないだろうか。しかも、青春18きっぷを利用すれば1日分(1回分)の2,370円で済み、こちらも夢のような超激安!
安く遠くへ行けることが特徴にまずあげられる青春18きっぷ。この原点に立ち返り、日本の鉄道史に燦然と輝く東海道本線を起点の東京駅から終点の神戸駅まで一気に旅してみよう。列車の運転本数が多く、多様なアレンジも可能だ。
美しい夜景が広がる港町、神戸。鉄道の敷設は明治5年(1872)開業の新橋~横浜間に次いで古く、明治7年には大阪~神戸間が開通。東京や大阪といった大都市と最寄りの開港都市とを結ぶ鉄道は文明開化の象徴だったのだろう。このような経緯もあって東海道本線の終点は今に至るまで神戸となった。
夕刻に到着した神戸ではお好みの夜景散策を。横浜中華街と肩を並べる神戸の南京町に出かけ、食べ歩きを楽しむのもいい。おトクな青春18きっぷの旅、浮いたお金で食費はもちろん宿泊費まできっとまかなえる。
翌2日目は朝から北野の異人館街に行ってみよう。開港によって居住が始まった外国の人々、彼らにとって母国へ通じる海が見える神戸の高台は郷愁を誘ったと思う。
このプランでは昼前に神戸を離れ大阪へ移動する。せっかく関西まで来たのだから大阪の味もぜひ食べておきたい。折しも、ゆく年くる年、年末年始。新しい年の「多幸」を祈念して大阪名物「たこ焼き」を頬張ってみよう。道頓堀界隈の店の「たこ焼き」を作る見事な手さばき。これも大阪ならではのパフォーマンス。関東ではなかなかお目にかかれない。あわせて近くの法善寺横丁にも足を運び、水掛不動尊に願をかけておこう。
帰路も東海道本線の電車を乗り継ぐ旅。ただ、連続した日程での利用も、日を開けての利用もできる青春18きっぷのメリットを活かし、関西にゆっくり滞在してみるアレンジもOK。京都や奈良など、関西には何度も行ってみたいスポットがたくさんある。
駅名 | 時間 | 旅のひとことアドバイス | |
---|---|---|---|
1 日 目 |
東京 発 | 7:28 | 上野東京ライン(宇都宮・東海道線) |
熱海 着 | 9:14 | 乗り換え | |
熱海 発 | 9:37 | 東海道本線 普通 | |
興津 着 | 10:34 | 乗り換え | |
興津 発 | 10:42 | 東海道本線 普通 | |
浜松 着 | 12:15 | 乗り換え | |
浜松 発 | 12:20 | 東海道本線 普通 | |
豊橋 着 | 12:54 | ランチに「カレーうどん」を食べて、乗り換え | |
豊橋 発 | 14:03 | 東海道本線 快速 (土休日は米原行きに。米原16:10着) | |
大垣 着 | 15:32 | 乗り換え | |
大垣 発 | 15:37 | 東海道本線 普通 | |
米原 着 | 16:12 | 乗り換え | |
米原 発 | 16:18 | 東海道本線 新快速 | |
神戸 着 | 18:10 | この日は神戸泊 | |
2 日 目 |
神戸 発 | 11:03 | 東海道本線 新快速 |
大阪 着 | 11:28 | 「たこ焼き」を食べて、乗り換え | |
大阪 発 | 14:30 | 東海道本線 新快速 | |
米原 着 | 15:53 | 乗り換え | |
米原 発 | 16:00 | 東海道本線 普通 | |
大垣 着 | 16:34 | 乗り換え (土休日は16:32着) | |
大垣 発 | 16:41 | 東海道本線 特別快速 (土休日は新快速) | |
豊橋 着 | 18:10 | 「駅そば」を食べて、乗り換え (土休日は18:11着) | |
豊橋 発 | 18:31 | 東海道本線 普通 | |
浜松 着 | 19:07 | 乗り換え | |
浜松 発 | 19:19 | 東海道本線 普通 | |
熱海 着 | 22:04 | 乗り換え | |
熱海 発 | 22:08 | 東海道本線 普通 | |
東京 着 | 23:46 | 旅の終わり |
東西を結ぶグルメの宝庫、東海道本線。東京を出発すると相模湾や駿河湾の海の幸エリアとなり、鯵やシラス、サクラエビに、清水や焼津といった漁業基地ではマグロも名物に。
ウナギの浜松を過ぎ、八丁味噌ゾーンに突入、いわゆる「名古屋めし」が待つ。関ヶ原を越えて滋賀県では近江ちゃんぽんや近江牛が味わえ、懐石の京都を経て食の都、大阪へ。
おでんにしても、濃い目の関東に、魚粉がけの静岡風、大阪の関東煮(かんとだき)に味噌煮込みおでんの名古屋と多種多様。東京と大阪を足して2で割ったような土地柄でなく、独自の食文化を生み出す名古屋が良きアクセントになっている。
東日本と西日本の架け橋、東海道本線。両者は食べものの味付けにしてもかなり異なっている。写真は米原駅ホームの駅そばだが、駅そばの出汁にも違いがあり、その違いをテーマとした旅も面白そうだ
文・写真:相澤秀仁&京子
※掲載されているデータは平成27年10月31日現在のものです。