『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
豊橋駅で発車を待つJR東海、浜松行き普通電車。白にオレンジ色のラインがよく似合っている。豊橋~浜松間の車窓では浜名湖が最大の見どころに。また、新居町駅の近くには旧東海道の新居関所がある
魚粉をふりかけて味わう「静岡おでん」タイプの「掛川おでん」。手前の黒はんぺんは静岡エリア特有のもので、その次の鶏皮が掛川らしい。当地のおでんは一つ一つが串にささり、出汁はあまりかけない
作家、尾崎紅葉の小説『金色夜叉』の舞台にもなった熱海。今もサンビーチ沿いには貫一お宮の像がある。小説の新聞連載が始まった明治30年といえば、熱海は「豆相人車鉄道」が開業したての頃にあたる
今にすればおとぎ話のような人車鉄道。小田原~熱海間の所要時間は約4時間という。その後、蒸気機関車による軽便鉄道に進化し、所要時間は3時間弱に短縮。当時の蒸気機関車は熱海駅前に保存されている
東海道本線きっての温泉地、熱海の湯。さまざまなタイプの宿があり、おひとり様もカップルも、グループ旅行の人も満喫できる。寒い季節、ぽかぽかと温まる温泉の有難さ。熱海ではゆっくりと過ごそう
蒲鉾や練り物で有名な小田原は今、「小田原おでん」も人気上昇中。「小田原すじ」などオリジナルなおでん種もあり、それを「梅みそ」(写真手前)で味わうのも独特。ところ変われば、おでんもさまざま
寒い季節、恋しいものといえば温泉に熱々の食べもの。そういう人は多いだろう。大阪で温泉地といえば、周辺の有馬、白浜、城崎がまずは思い浮かぶが、時には日本の屋台骨を支える東海道本線に乗って東へ、徳川家康ゆかりの熱海温泉にもおトクに行ってみたい。
大阪発の青春18きっぷ旅。スタートはいつも便利な新快速から。米原、大垣、豊橋で電車を乗り継ぎ、静岡県の掛川でちょっと寄り道、ランチタイムの途中下車。
今は新幹線も停車する掛川駅。明治22年の開業で、それは東海道本線の元となった新橋~神戸間の鉄道開通と同じ年。昭和15年(1940)に建てられた木造駅舎(北口)は今も現役で、こちらは新幹線駅で唯一の木造駅舎としても知られている。
静岡県といえばこの時期は「おでん」といきたい。「掛川おでん」も「静岡おでん」に似て魚粉をふりかけていただくスタイル。一つ一つが串にささっていて、静岡らしい黒はんぺんはもちろん、鶏皮もあるのが特徴に。また、焼きそばを一緒に食べるのも掛川流だろう。お腹を満たし、掛川城に立ち寄って再び駅へ。
東海道本線の旅。一気に目的地まで行かず、ところどころ下車したほうが気分的にもリフレッシュでき、新しい発見もあって一段と楽しめる。
さあ、丹那トンネルをくぐり抜け、ほどよい時間の熱海に到着。あちこちで売られているホカホカの温泉まんじゅうを食べ食べ宿へ。青春18きっぷの旅だから、大阪~熱海間の通常運賃7,340円が1日分(1回分)の2,370円と超おトク。浮いたお金でのんびり湯浴みといこう!
明治22年に開通した新橋~神戸間の鉄道。しかし、熱海駅の開業はそれより36年も後の大正14年(1925)3月のことだった。
当時の東海道本線は熱海よりもさらに東京寄り、国府津から御殿場を経て沼津に至る箱根越えのルート(現在の御殿場線)を利用。熱海駅は国府津からの熱海線としての開業だった。やがて昭和9年(1934)、難工事の末に熱海~函南間の丹那トンネルが開通すると、東海道本線は現在の熱海経由にルートを変更。大回りが解消されて文字通りの大動脈となった。
日本の鉄道史に名を残す丹那トンネルといい、鉄道と縁が深い熱海。大正14年の熱海駅開業以前は、主に温泉観光客のため、国府津や小田原からローカルな交通機関が結んだ。とりわけユニークなのは小田原~熱海間で明治29年開業の「豆相人車鉄道」だろう。伊豆と相模にちなむ豆相はともかく、人車鉄道とは人力で客車を押す鉄道のこと。熱海駅のほど近くには人車鉄道熱海駅跡の碑が今も建っている。
小田原~熱海間を約4時間かけて走ったという人車鉄道は明治40年には軽便鉄道の熱海鉄道に衣替え。ここで活躍した蒸気機関車7号は熱海駅前に保存され、準鉄道記念物に指定されている。
かつての人車鉄道を思い浮かべつつ行く小田原。蒲鉾など練り物で知られる小田原は、今、おでんも名物に。梅が市の花だけに、当地のおでんは「梅みそ」で味わうのが新鮮だ。食後は小田原城に出かけ、あらためて丹那トンネルをくぐり、大阪への帰路につこう。
駅名 | 時間 | 旅のひとことアドバイス | |
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1 日 目 |
大阪 発 | 7:03 | 東海道本線 新快速 (土休日は快速6:39発) |
米原 着 | 8:30 | 乗り換え (土休日は8:26着) | |
米原 発 | 8:33 | 東海道本線 普通 (土休日は8:46発) | |
大垣 着 | 9:05 | 乗り換え (土休日は9:19着) | |
大垣 発 | 9:11 | 東海道本線 新快速 (土休日は特別快速9:24発) | |
豊橋 着 | 10:38 | 乗り換え (土休日は10:54着) | |
豊橋 発 | 10:42 | 東海道本線 普通 (土休日は掛川行き普通11:03発) | |
浜松 着 | 11:16 | 乗り換え | |
浜松 発 | 11:29 | 東海道本線 普通 | |
掛川 着 | 11:54 | おでんランチ&乗り換え (土休日は豊橋発の直通で12:05着) | |
掛川 発 | 13:35 | 東海道本線 普通 | |
島田 着 | 13:54 | 乗り換え | |
島田 発 | 14:04 | 東海道本線 普通 | |
熱海 着 | 15:51 | この日は熱海泊 | |
2 日 目 |
熱海 発 | 11:32 | 上野東京ライン(宇都宮・東海道線) 普通 |
小田原 着 | 11:54 | 小田原おでんのランチ (土休日は11:53着) | |
小田原 発 | 14:11 | 上野東京ライン(高崎・東海道線) 普通 | |
熱海 着 | 14:34 | 乗り換え | |
熱海 発 | 14:37 | 東海道本線 普通 | |
浜松 着 | 17:14 | 乗り換え | |
浜松 発 | 17:23 | 東海道本線 普通 | |
豊橋 着 | 17:57 | 乗り換え | |
豊橋 発 | 18:01 | 東海道本線 新快速 (土休日は18:02発) | |
名古屋 着 | 18:57 | 夕食&乗り換え (土休日は18:58着) | |
名古屋 発 | 19:50 | 東海道本線 快速 (土休日は新快速20:00発) | |
米原 着 | 21:07 | 乗り換え (土休日は21:12着) | |
米原 発 | 21:34 | 東海道本線 新快速 | |
大阪 着 | 22:57 | 旅の終わり |
JR東日本、JR東海、JR西日本とJR3社の電車を乗り継いで横断する青春18きっぷ東海道本線の旅。JR各社でタイプの異なる電車に乗れるのも乗り鉄派の方には楽しみの一つとなり、普通電車や快速電車を乗り継ぐとはいえスピードを見れば東京~神戸間で9時間とそこそこ(乗り換え時間を含む)。これは同区間を8時間37分で走った戦前の特急「燕」とさほど変わらない速さに思える。
乗り継ぐ電車の運賃や距離では、東京~熱海間が運賃1,940円で距離104.6km。豊橋~大垣間も運賃は同じく1,940円で距離は116.4km。さらに、大阪~米原間も運賃は1,940円で距離は110.5kmといずれも似通っていて面白い。
JR掛川駅の北口駅舎は新幹線駅で唯一の木造駅舎。平成25年5月から耐震化工事を施し、平成26年1月26日に工事完了。昭和15年に建築された外観を今もそのまま残している。(写真は耐震工事開始前のもの)
写真家、パズル作家。日本のすべての都道府県を夫婦で4巡し、「青春18きっぷ」歴は20年以上。
著書(夫婦の共著)は写真集『猫ヶ島』、『わらいねこ』をはじめ、『旅してでも食べたい 地もの旬もの回転寿司』など。
夫婦旅ブログ http://fullmoon.aizawa22.com
文・写真:相澤秀仁&京子
※掲載されているデータは平成27年10月31日現在のものです。