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東海道本線の151系を祖とするボンネットスタイルの特急用電車。昭和30年代から特急列車黄金時代に活躍した足跡を紹介します。(文=結解喜幸 写真=結解学)

交流電化区間にも進出したボンネット車 481・483系特急形電車

 昭和39年12月、北陸本線富山交流電化に合わせて、大阪・名古屋〜富山間で電車特急の運転が計画されました。151系は直流専用で交流区間を走れないため、151系の増備車では東海道新幹線開業後に交直流両用タイプに改造する計画がありました。

 ところが、当時は非電化であった幹線の交流電化が推進され、将来的に交流区間を走ることができる電車特急が必要となることから、すでに実績のある471系交直流急行用電車の走行機器と151系の車体を組み合わせた481系が製造されることになりました。

 まずは大阪〜富山間の「雷鳥」および名古屋〜富山間の「しらさぎ」用として60Hzの交流電源に対応した481系が製造され、昭和40年には50Hzの東北本線に対応した483系が登場。モーターが搭載されていない先頭車両はクハ481形と共通で、中間の電動車ユニットがモハ481+モハ480またはモハ483+モハ482となっています。

 東北特急では、上野〜仙台間の「ひばり」や上野〜盛岡間の「やまびこ」に運用され、さらに上野〜山形間の「やまばと」、上野〜会津若松間の「あいづ」も登場。先頭車両がグリーン車のクロ481形も増備され、クハ481形0番台・100番台、クロ481形0番台・50番台・100番台がボンネット車となりました。

 東北新幹線開業後の晩年は常磐線の「ひたち」で活躍しましたが、九州エリアで活躍していた60Hz用の電動車に組み込まれていたクハ481形が転属し、車両前面のスカートの色が違う車両を見ることができました。

データ

481系・483系 特急形電車の主な列車
特急「雷鳥」、「しらさぎ」、「ひばり」、「やまびこ」、「やまばと」、「あいづ」、「ひたち」など

鹿児島本線の特急「有明」や日豊本線の特急「にちりん」など九州内でも活躍

交流50Hz区間に対応した483系が投入された上野〜仙台間の特急「ひばり」

日本全国の電化区間に対応した 485系特急形電車

 日本列島は東日本が50Hz、西日本は60Hzと交流電源の周波数が異なります。明治時代に東京の電力会社が50Hzの発電機、大阪の電力会社が60Hzの発電機を採用したためで、国鉄の交流電化でもエリアによって周波数が異なっています。

 ちなみに東海道新幹線は交流電化ですが、東京エリアの50Hzを60Hzに変換して全線60Hzに統一。長野新幹線では北陸エリアへの延長計画があるため、軽井沢〜佐久平間で50Hzと60Hzが切り替わるようになっています。

 481系が登場した当時は50Hzと60Hzを共用できる変圧器が開発途中であったため、50Hz用は483系として登場しましたが、昭和43年に実用化されることになり、50Hzと60Hz共用の485系が誕生しました。電動車がモハ485+モハ484のユニットになった車両で、先頭車はボンネットスタイルを含むクハ481形が使用されています。

 ボンネット車は東北本線の「ひばり」「やまびこ」「やまばと」「あいづ」、常磐線の「ひたち」、日本海縦貫線(北陸本線)の「白鳥」「雷鳥」「しらさぎ」、山陽本線の「つばめ」「はと」、鹿児島本線の「有明」、日豊本線の「にちりん」、長崎本線の「かもめ」など、交流区間も走る特急列車で活躍しましたが、特急「雷鳥」の運用を最後に引退。ボンネットスタイルのクハ481形は姿を消してしまいました。

データ

485系 特急形電車の主な列車
特急「ひばり」、「やまびこ」、「やまばと」、「あいづ」、「ひたち」、「白鳥」、「雷鳥」、「しらさぎ」、「つばめ」、「はと」、「有明」、「にちりん」、「かもめ」など

大阪〜青森間の特急「白鳥」に運用された新潟エリアのオリジナル塗色の車両

北陸本線の485系特急「雷鳥」。交直流車を区別するため「ひげ」が描かれている

信越本線(横川〜軽井沢間)の協調運転に対応 489系特急形電車

 今は廃止となった信越本線横川〜軽井沢間では、急勾配を克服するため碓氷(うすい)峠を通過する全列車にEF63形電気機関車が連結されていました。信越本線を経由して北陸方面を結ぶ特急列車はキハ82形特急用気動車で運転されてしましたが、スピードアップと輸送力増強を目指して電気機関車と協調運転できる交直両用の特急形電車の製造が計画されました。

 北陸本線の「雷鳥」と共通運用できることを前提としたため、485系に協調運転に必要な機器類を搭載した489系が開発され、昭和47年3月から上野〜金沢間の「白山」で本格的なデビュー。基本仕様は485系という汎用性の高い車両で、「雷鳥」や「しらさぎ」にも運用され、本来の力を発揮する信越本線の「あさま」「そよかぜ」、さらに日本海縦貫線の「北越」や上越線経由の「はくたか」、山陽本線の「つばめ」「はと」、臨時列車の「新雪」などにも運用されていました。

 485系のクハ481形と区別が付かないほどですが、489系は上野寄りにEF63形電気機関車を連結するため、上野寄りのクハ489形500番台は協調運転用の総括制御用ジャンパ栓があり、ひと目でクハ489形であることがわかります。

 最後のボンネットスタイルの特急形電車として、金沢総合車両所に9両編成が3本、7両編成が1本の計4本が在籍し、定期列車としては上野〜金沢間の夜行急行「能登」1往復に運用されているほか、北陸エリアの団体列車や臨時列車に使用されています。

データ

489系 特急形電車の主な列車
特急「白山」、「雷鳥」、「しらさぎ」、「あさま」、「そよかぜ」、「北越」、「はくたか」、「つばめ」、「はと」、臨時特急「新雪」、夜行急行「能登」など

白山専用のオリジナルデザインで運転されていた上野〜金沢間の489系特急「白山」

489系のボンネット車両で運転される唯一の定期列車となった急行「能登」

写真協力:交通新聞サービス、ハマちゃんのがらくた箱
※掲載されているデータは平成21年12月現在のものです。

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