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車窓で旅する日本列島:東海道本線

地図

路線図

さった峠で富士山を仰ぎ見る

 「車窓で旅する日本列島」新年のトップバッターは、東西を結ぶ大動脈の東海道本線。そのなかから今回は、各駅停車の普通列車に乗って、街道時代の面影を残す車窓風景が楽しめる熱海駅~静岡駅間と、名古屋駅~米原駅間を紹介したい。

 JR東日本と東海の境界駅・熱海。静岡駅方面に向かう列車は、ほとんどがこの駅始発だ。ホームに停まっているのは211系。東京駅~熱海駅間でも走っている電車だが、15両の長い編成ではなく、こちらはぐっと短い3両編成だ。熱海駅を発車すれば、熱海温泉のホテルや旅館群、相模灘に浮かぶ初島などを車窓左に見ながら伊東線の来宮(きのみや)駅をかすめ、すぐに全長7804mの丹那(たんな)トンネルへ。これを抜けると函南駅。山間を走って三島駅。ここまで来れば、富士山が裾野まで視界に入り、その雄大な姿を間近に見ることができる。御殿場線が車窓右から近づけば沼津駅だ。

 沼津駅を発車して町並みを走り抜け、原駅、東田子の浦駅と進むと、車窓右には富士山の美しい姿が望める。製紙工場が建ち並ぶ中を行くと吉原駅。次の富士駅を発車すると、まもなく列車は富士川に架かる橋梁を渡る。車窓右後方になるが、車窓いっぱいに広がる富士山と富士川のコラボレーションは、息をのむような眺めだ。

 新幹線と交差して新蒲原駅、蒲原駅。そして由比駅から興津駅にかけては駿河湾に沿って走る。最初は東名高速と国道1号が視界を遮るが、さった峠の麓で東名高速とアンダークロスすると、車窓左に大きく駿河湾と富士山の姿が望める。興津駅を出るとまもなく清見寺(せいけんじ)。境内を横切る列車からは、左に山門、右に本堂が見られる。

 清水駅を過ぎ、車窓左に日本平や久能(くのう)山が遠望できれば、市街地の中を進んで静岡駅に到着する。

関ヶ原を越えて美濃から近江へ

 次の東海道本線の車窓の旅は、名古屋駅から関ヶ原を越えて、湖国・滋賀県の米原駅へ。名古屋の都市圏を抜ければ、山間の風景や宿場町の町並みも望める、旅情に富んだ区間がつづく。

 名古屋駅を発車した列車は、車窓右に名鉄名古屋本線、左に稲沢貨物線や新幹線としばし並走する。名鉄本線が下をくぐり抜けると枇杷島駅。さらに清洲駅、稲沢駅と濃尾平野の直線区間を快走する。ふたたび名鉄本線が合流して尾張一宮駅。発車して愛知・岐阜県境の木曽川を渡り、前方に金華山が見えてきて、右から高山本線が合流すれば、高架の岐阜駅に到着する。西岐阜駅を出て長良(ながら)川を、穂積駅を出て揖斐(いび)川を渡れば、車窓右には樽見鉄道が近づいてくる。しばらく並走すれば大垣駅に到着だ。

 大垣駅を発車すると、まずは大垣車両区が車窓に広がる。JR東海のさまざまな車両を見ることができ、鉄道好きならずとも楽しい瞬間だ。まもなく車窓に田園風景が広がり、右を見れば、美濃赤坂駅への支線が分かれていく。さらに、特急列車が走る下り専用線も上り線の下をくぐって右方向へ。そして、乗車している普通列車は、上り線に並行する線路を直進する。

 次の垂井駅を発車して、ふたたび下り専用線が近づいてくると関ケ原駅。同駅を発車して東海道新幹線をまたぎ、短いトンネルを抜けると、車窓左にかつての中山道・今須(います)宿の家並みがつづく。すぐに岐阜・滋賀県境。現代の旅人は、快適な電車に乗って、美濃から近江に入ることになる。

 最初の駅が柏原。発車すれば、伊吹山の美しい山容が車窓右に広がる。次の近江長岡駅を過ぎて、国道21号が近づいてくると、醒井(さめがい)宿の町並みを望みながら醒ケ井駅へ。発車して新幹線が近づき、さらに北陸本線と合流すると、米原駅に到着する。

悠然と裾野を広げる富士山を眺めながら富士川を渡る東海道本線の普通列車(写真は上り列車から撮影)。富士駅~富士川駅

由比宿と興津宿の間にあり、東海道の難所として知られるさった峠。交通網が変貌を遂げた現代でも、歌川広重が描いた浮世絵のシーンが時を超えて展開する。写真の列車は、身延(みのぶ)線に直通する373系特急「ふじかわ」。東京駅~静岡駅間の特急「東海」が廃止されたいま、同区間を走る唯一の昼行特急だ。さった峠へは、由比駅から徒歩1時間。由比駅~興津駅

清見寺を走る普通列車。写真には見えないが、画面右に線路をまたぐ橋と山門がある。興津駅~清水駅

大垣駅~関ケ原駅間の下り専用線を行く683系電車の特急「しらさぎ」。この下り専用線は、SL時代の昭和19年(1944)10月、急勾配を避けるために迂回ルートとして敷設されたもの。後に上り線に並行して線路が増設され、下りの普通列車は、この線路を使用して運転するようになった。これにより、下り専用線にあった新垂井駅は廃止されている

柏原駅を発車して右カーブを進むと、車窓右前方に伊吹山が姿を現す。柏原駅~近江長岡駅

313系の2両編成が山間をゆく。東海道本線もこのあたりではローカル線の風情が漂う。柏原駅~近江長岡駅

往時の面影を残す中山道・醒井宿の町並み

東海道本線

 日本の鉄道の原点ともいえる東海道本線は、明治5年(1872)の旧暦9月12日、新橋駅~横浜駅間が開業した。新橋駅はかつての汐留(しおどめ)貨物駅、横浜駅は現在の根岸線桜木町駅だ。新橋駅~神戸駅間の全線開業は明治22年7月。このうち本連載では、車窓の旅として熱海駅~静岡駅間と名古屋駅~米原駅間を紹介している。これらの区間のうち、沼津駅~静岡駅間の開業は明治22年2月。御殿場駅経由で箱根越えをする、国府津駅~静岡駅間が一挙に開業した。熱海駅~沼津駅間の開業は、丹那トンネルが完成した昭和9年(1934)12月のことだ。一方、名古屋駅~米原駅間では、まず明治16年5月に関ケ原駅~深谷駅間が開通(当時は深谷駅から長浜駅に通じていた。深谷駅~長浜駅間は、深谷駅も含め後に廃止)。木曽川鉄橋が完成した同20年4月に名古屋駅~関ケ原駅間がつながった。そして、最後に残った深谷駅~米原駅~馬場駅(現・膳所=ぜぜ駅)間の開通で、全線が開業した。

近江長岡駅に停車する313系電車。平成11年から運転を開始したJR東海の新型車両で、写真のように2両編成でも運転できる。東海道本線をはじめ、同社エリア内の多くの電化区間で幅広く活躍している

醒ケ井駅に停車する117系電車。かつては大阪圏や名古屋圏の新快速・快速列車の主役だった同車両も、現在では東海道本線の一部の普通列車などに運用されている

※掲載されているデータは平成22年1月現在のものです。詳しい運転時刻については『JR時刻表』をご確認ください。

次回は、「伯備線」(予定)です。

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