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久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。

根室本線 ねむろほんせん

滝川(滝川市)から根室(根室市)まで443.8㎞、68駅を結ぶ長大な路線。今回は夏場に霧が多発する「霧の町」釧路から大楽毛(おたのしけ)まで、釧路市内を10㎞程度歩いた。

 

 新釧路川を渡る。すぐ向こうに根室本線の鉄橋が見える。川の色がコーヒー牛乳のように茶色い。茶色い川に青空が映っている不思議。そこを渡ってしばらく歩くと、新富士駅。無人駅。駅舎がない。跨(こ)線橋そのものが駅舎みたいだ。隣は貨物車のコンテナ置き場みたいになっていて、コンテナを挟んで運ぶ、見たこともない作業自動車を見た。北海道、知らないものがたくさんある。


階段が駅?の新富士駅

 この辺から車道の脇の歩道に雑草がたくさん生えているようになる。みんな車。ここを歩く人なんてほとんどいないんだろう。北海道でこんな道を「散歩」しているのはボクだけかもしれない。地元の人から見たら、変な人かもしれない。道端にコスモスが咲いている。やはり時期が違う。

 右手に釧路市中央卸売市場が現れ、さらに進むと、根室本線の向こうに大きな「全酪連」の建物が見えた。酪農。北海道だ。
 前方海側に白い船のようなものが見える。次第に近づいてきたら、やはり船だ。それも巨大な客船だ。7、8階建てのビルぐらいある。きっと上にプールもある豪華客船だろう。それがどうして、こんな何もないような場所にいるのか。どこから、どこへ向かう、どこの国の船だろう? 全然わからない。よーく見たら日の丸の旗が見えた。思いもよらないものに無言で出くわす北海道。

 隣の根室本線は高架線になった。別に何があるわけでもないのに、なぜだろう。地盤とかが悪いのか。ショベルカー、ブルドーザー、ユンボなどがドッサリ並んでいる横を通る。男の子だったら夢のような場所だろう。開発、開墾、開拓という言葉が、その順番で頭に浮かぶ。そのまま北海道の歴史だ。

 歩道の雑草はますます背が高くなってきて、両側から押し寄せるように、歩く者の邪魔をした。もはや絶対こんな所歩いている人はいない。だけど11月ぐらいになると、この雑草も枯れ果て、その上に雪が積もるのだろう。そして来年の夏には、またこんなふうに復活するのだ。雑草は強い。その強さが、本州よりもっと野性的というか、野太い気がする。

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