『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。グルメマンガ『孤独のグルメ2』(扶桑社)18年ぶりの第2弾がついに発売。
あすなろう四日市から内部(ともに三重県四日市市)までの5.7㎞、8駅。「ナローゲージ」と呼ばれる狭い線路幅の路線で、マッチ箱のような車両がかわいらしい。日永駅から分岐する八王子線(1駅)も希少なナローゲージの路線だ。
旧道には和菓子屋さんもよくある。シャッターが閉まっている店だったが、看板に「結婚・誕生・新築・祝事・仏事・御進物用 御菓子・餅・赤飯・饅頭・砂糖」と漢字が詰め合わせてある。最後の砂糖にちょっと笑う。甘い物が今よりありがたかった時代。
さらに歩いていくと、前をキャップをかぶり、赤いリュックをしょって、ウォーキングシューズをはいたひとりの老人が黙々と歩いていた。すぐピンと来た。東海道者(もの)だ。旧東海道を歩いて旅している人。ボクは前に東京から大阪まで断続的に踏破したことがあるので、こういう人に何人も出会っているから、その雰囲気ですぐわかる。どこからどこまで行くのだろうか。心の中で無事を祈る。
道脇にひときわ立派な松の木が立っている。近寄ると、立て看板に「東海道名残りの一本松」と書いてあった。昔、このあたりは道の両側に低い土手が築かれ、その上に松が並んでいたそうだ。このあたりから次の泊の集落までの間、家は一軒もなかったとある。でも道幅は昔と変わらない三間(約5.5m)。変わるところと変わらないところ。
へぇ、と思いながら歩いていくと内部線泊駅があった。さらに歩いていくと旧東海道は国道1号に吸収された。そしてすぐに「日永の追分」という史跡があった。追分とは分岐点で、ここで東海道と伊勢街道に分かれるのだ。今日のつたい歩きは、いろいろ歴史がかっていて、短いのにいつもと違う味わいがある。
線路は右手の東海道側に沿っているので、そちらに行くとすぐに追分駅があった。駅間が短い。そこに「こにゅうどうくん」のイラストがついた方を前にした車両がやってきた。あらためて見ると車幅が狭い。フロントガラスは仕切りのない一枚ガラスで、運転士さんはまんなかに乗っている。ボクもますます乗るのが楽しみになる。