四国の秘境の湯と駅に出会うべく高松駅を出発した。まず降りたのは八十場(やそば)駅。お目当ては230年以上の歴史を持つ「清水屋」の八十場ところてんだ。ズルッと啜ると、国産天草のほのかな磯の香りとコシが感じられ、思わず「夏にぴったり!」と唸ってしまった。
小走りで八十場駅に戻り予讃線に乗ると、琴平で土讃線の乗り換え。讃岐財田あたりから列車は山間部に入り、珍しいスイッチバック式の駅・坪尻を通る。山々に囲まれ、周りに民家も車道も見当たらない同駅は、まさに“秘境駅”という呼び名がふさわしい。
阿波池田で乗り継ぎ、山道を懸命に進む列車に揺られていると、眼下に小歩危(こぼけ)峡・大歩危(おおぼけ)峡が! V字に刻まれた渓谷の間を緑青色の川が流れていく様は圧巻だ。大歩危駅に着いたら「祖谷渓(いやけい)温泉ホテル 秘境の湯」へ向かい、露天風呂に浸かる。祖谷渓谷の原生林を眺めながら、じっくりと堪能する美肌の湯。まさに極楽である。
大歩危駅からは、再び南下して土佐山田駅で下車。物部川中流の河畔にある「夢の温泉」で投宿した。内湯の窓から、物部川と川辺の濃緑の木々を眺めながらの湯浴みがまたいい。
翌日は、土讃線を引き返し「阿波池田うだつの家・たばこ資料館」を見学。100年以上前のたばこ製造業者の住まいを利用した同館には見事な“うだつ”が上がっていた。
阿波池田駅に戻り佃駅へと移動したら、ここからは徳島線に突入。鴨島で降り鴨島温泉「鴨の湯」で四国山地一望の露天風呂を楽しんだら、夕暮れの徳島駅へ。LEDを使った光の絶景ポイント「光の八十八ヶ所めぐり」を楽しむためだ。その一つに認定された「新町川水際公園」などを訪ね、ロマンチックムードの中、秘境といで湯の旅は幕を閉じた。