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久住 昌之 Kusumi Masayuki (文・写真・画)

東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。焼肉、ラーメン、カレーライスなど、愛する26品目のメニューについて語ったエッセイ『食い意地クン』(新潮社)がついに文庫化。

佐世保線 させぼせん

肥前山口(佐賀県江北町)から佐世保(長崎県佐世保市)まで全14駅。48.8km。明治31(1898)年1月に全通している歴史ある路線。博多から佐世保行きの特急みどりが運行。特急ハウステンボスも佐世保線を経由する。

 

 ここから佐世保までは佐世保線と並んだ国道35号一本道で、ゆっくり坂を下っていく感じ。あたりの地形はデコボコで、小さな山の上や土手の下に家が立ち並び「坂の街・長崎」は佐世保についてもいえるのか?と思った。佐賀はフラットだった。地形が全然違う。ただ国道を歩いている、と思うとツマラナイが、時々横を佐世保線が通ったり、小さな橋や古いトンネルがあると、それだけでなんとなく嬉しい。なんだろう、この鉄道に対する親近感というか、愛着。このまま鉄チャンになってしまうのか、俺。

 コンクリートで固めたピラミッドのような小山の上に送電線の鉄塔が立っていて、ちょっと異様で、なんでこうなっているんだろうと思った。日宇(ひう)駅のあたりで国道を離れ、日宇川沿いを歩いたのもよかった。川には大きな鯉や緋鯉がたくさん泳いでいて、シラサギもいた。川沿いを歩くのは心に水が流れていくようで、清々する。その後、国道を淡々と歩いて午後3時半過ぎ、佐世保駅到着。すぐ駅の向こう側に海を見に行く。

 ちょうど最後の遊覧船が帰ってきたところだった。なにやら軍艦めいた船が泊まっているのが、緊張感のある佐世保を感じさせた。しばらく海を眺め、ホテルに行ってひと風呂浴び、下着類を着替えて駅前にちゃんぽんを食べに行った。これ本当においしかった。カキが入っている。スープも麺も具もウマい。


佐世保に向かう道はこのような切り通しが
すごく多かった

長崎市内の謎のピラミッドなコンクリートに覆われた鉄塔山

佐世保駅の裏はすぐ海。最後の遊覧船が帰ってきた。
軍艦めいた船のシルエット

ついに本場でちゃんぽんを食べたぞ!
カキ入りで滅茶ウマ!

 その後、小さな古そうな居酒屋に入る。みんながバレーボールの日本対ロシア戦を見ながら飲んでいる。当然全員長崎弁。「ようあんなボールひらうな」「さおりちゃん、かわいか」。ああ、長崎実感。「あの人も60になるっちゃろ」「まだ来年もあるっちゃけん」ガラガラ「こんばんはー、よかですか」。
 日本が強豪ロシアを下すと、客と共にボクも胸が熱くなり、芋焼酎がウマかでした。

※「旅の手帖」2014年1月号より掲載しました。

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