『トレたび』は、交通新聞社が企画・制作・運営する鉄道・旅行情報満載のウェブマガジンです。
東京都出身。ドラマ化された『孤独のグルメ』(谷口ジローとの共著・扶桑社)、『花のズボラ飯』(水沢悦子との共著・秋田書店)ほか、漫画、エッセイ、音楽など多方面で創作活動を展開中。
東京から塩尻(塩尻市)を経て名古屋までの396.9㎞、112駅(岡谷~塩尻の支線のぞく)。
今回は山梨市(山梨市)から勝沼ぶどう郷(甲州市)まで、10㎞程度を歩いた。
車道歩きに飽きてジグザグと細い道に入っていくと、すぐに桃の果樹園があり、まだ実をつけているところもある。でももう桃の季節は終わりだ。線路と隣り合って歩ける細道に入り、東山梨駅に到着。12時35分。無人駅だった。手前の踏切で中央本線の普通列車と貨物列車がすれ違うのを目撃。写真に撮ったが、確認したら完全にピンボケだった。残念。駅のすぐ近くの派出所が民家みたいで面白かったので、腰を据えて撮影。
細い道を選んで歩いていく。ケイトウの花のえんじ色に目を奪われる。ブドウ畑もポツリポツリと現れた。目の前にもうすぐ穫り頃のブドウが棚から無防備にいっぱい下がっている。手を伸ばせばもぎ取れる。柵もなにもない。俄然嬉しくなってくる。
またしばらく歩くと、周囲を青い網で囲ったブドウ棚がある。覗くと、巨峰だろうか、ひと房ひと房白い紙が丁寧にかけられたブドウが下がっている。ああ、本当に大事に大事に心を込めて育てているんだなあと思う。それはおいしくもなろう。値段が高くもなろう。やむなし。早くもゴールしておいしいブドウを食べたくてたまらない自分になっている。よく「ブドウ狩り」とかあるが、こういうブドウ棚のブドウを見ると、ブドウ狩りなんかするより、こうして丹精込めて収穫されたおいしいブドウをひと房買ったほうが、効率も良く外れなくおいしいブドウにありつけるだろう、と思う。って、それを言っちゃおしまいだっちゅーの。
実は母親の郷里は山梨だ。だが山梨県の一番東京寄りの県境にある上野原市で、甲府盆地の外なので、ボク自身は子供の頃は、ほとんどこっちの方には来たことがない。でも山梨から、よくブドウが届いた。急に思い出す。赤くて小粒のデラウェアが多かった。母は「デラぶどう」と呼んでいた。