旅の始発に選んだのは岩手県側の北上駅。翌朝早い時間から行動しようと、前日の夜からここにやってきた。夕食はもちろん、二子さといもをベースに、名産のアスパラガスと県内産牛豚を使用した「北上コロッケ」だ。もっちり粘っこいので腹持ちはかなりいい。
翌日は朝6時過ぎの列車に乗るべく北上駅へ。土曜日のせいだろうか、駅に人影はほとんどない。案内に従い1番線に向かい、1両編成のワンマンカーに乗り込む。乗客は地元のお母ちゃんひとりだけ。やがて列車はジワジワと動き出し、柳原、江釣子(えづりこ)を経て、藤根ですれ違いのためしばし停車。実に静かな朝である。
藤根を過ぎると心なしか列車のスピードが上がり、立川目、横川目あたりから次第に山の風情が漂ってくる。岩沢からはトンネルが増え、いかにも山間の駅名らしい和賀仙人(わかせんにん)を過ぎると本格的な山の風景に変わってきた。
列車は次第に高度を上げ、朝もやの中を進んでいく。トンネルの切れ間から沢もチラチラ見えている。さらに進むと、突然視界が開けたような形で錦秋湖(きんしゅうこ)が姿を現す。周囲の山々が美しく彩られる秋は、絶好の紅葉スポットになる場所だ。
思わず車窓にかぶりついてみるが、またすぐにトンネルへと入り、やがて、ゆだ錦秋湖駅に到着。駅名に湖の名が付いていても、ホームからは見えない。湖と紅葉の競演は、次のほっとゆだ駅までの間に凝縮されているといってもいいだろう。
ゆだ錦秋湖を出た列車は右手に湖を見ながら進み、やがて赤い鉄橋を渡る。ここは鉄道マニアの間で絶好の撮影スポットで、シーズン中は様々な角度からレンズが狙っているという。
次の停車駅、ほっとゆだは駅前にタクシーも数台、近隣の湯本温泉や湯川温泉に行くバスも出ている。列車に揺られお腹も空いてきたので、そろそろ途中下車を楽しむこととしよう。と、その前に、駅構内にある温泉にザブンと入り気分転換。湯上がりは地元の湯田牛乳をグイッと飲む。よし、これで食欲も湧いてきた!
- ほっとゆだ駅内にある温泉施設「ほっとゆだ」。浴室の信号機が列車の接近を知らせてくれる
- ほっとゆだ駅の売店では地元の湯田牛乳が各種揃う。風呂上がりはこれで乾杯! 牛乳やカフェオレ、牛乳寒天などがある